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開放感は要らない? キャンバストップやガラスルーフなぜ廃れたのか? 理由は流行以外にも

くるまのニュース / 2021年5月11日 10時10分

ドライブ時に開放的な気分を味わえるクルマのキャンバストップやガラスルーフは、かつてほど見られなくなり、設定される車種も減少。背景には流行の移り変わりをはじめ、多様な要素があるようです。

■オープンな気分になれるキャンバストップやガラスルーフ

 コロナ禍で自宅にいる時間が長引くと、外出が貴重なひとときに思えてきます。クルマを使った移動なら、他人と接触する機会を大幅に減らせるため、安心感も高まります。

 そして貴重な外出であれば、開放感も満喫したくなります。オープン感覚で運転できるクルマであれば、外出する楽しさもさらに際立つでしょう。

 オープン感覚を味わえるクルマとして、最も分かりやすいのはコンバーチブルです。キャンバストップの形状などに応じて、カブリオレ、ロードスター、スパイダーといった名称もあります。近年では電動開閉式のハードトップも登場しています。このほかガラスルーフもあり、開放感のあるクルマも多様化しています。

 しかし最近の傾向として、オープンドライブを楽しめる車種が減ってきました。特に日本車で絶滅したのはキャンバストップです。

 かつてはマツダの「フェスティバ」や「デミオ」、日産の「Be-1」や「パオ」、スズキ「アルトラパン」、トヨタ「WiLL Vi」、三菱「ミニカ」など、比較的コンパクトな車種を中心にキャンバストップが数多く採用されていました。

 ボディ側面のピラー(柱)やウインドーはハッチバックボディと同じ形状ですが、ルーフの部分は幌製で、電動や手動で開閉できます。居住性や積載性といった実用性を損なわずに、オープンドライブの爽快感を味わえることが魅力でした。

 キャンパストップは価格も割安でした。例えばフェスティバの場合、約10万円の価格アップでキャンバストップが装着できました。日産のZ34型6代目「フェアレディZ」のコンバーチブルは、クローズドボディに比べて約60万円高かったため、キャンバストップは軽自動車やコンパクトカーで幅広く普及しました。

 またガラスルーフも、かつては採用車種が豊富でした。例えば1986(昭和61)年に発売されたワンボックスワゴンの2代目三菱「デリカスターワゴン」には、ガラスルーフのクリスタルライトルーフが装着されています。この後もホンダ「エアウェイブ」、日産「ラフェスタ」、トヨタ「プリウスα」などが採用しました。遮音性は通常のスチールルーフと同等なので、開放感と快適性を両立させました。

 それが今では、ダイハツ「タフト」のスカイフィールトップ、トヨタ「ハリアー」の調光パノラマルーフ、トヨタ「RAV4」のパノラマムーンルーフ程度になっています。

 以上のようにオープンモデルやガラスルーフが減った理由をトヨタの販売店に尋ねると、次のように返答されました。

「以前はプリウスαなどのガラスルーフ、あるいは幅広い車種に設定されるサンルーフを希望するお客さまが多かったのですが、最近は減っています。クルマの装備にも流行があり、今はお客さまの関心が安全装備や運転支援機能に移っているのでしょう。

 また以前は喫煙するお客さまが、換気しやすいチルト機能付きの電動サンルーフを好みましたが、最近は喫煙者自体減っているのもニーズが減少した一因でしょう」

■減った理由は「流行」以外にも

 クルマの価格が全般的に高まった影響もあるでしょう。安全装備や運転支援機能が充実した結果、15年ほど前に比べると、クルマの価格は1.2倍から1.4倍に上昇しています。その一方で平均給与所得はこの25年間で概ね下がり続けています。

 その結果、クルマの値上げとのバランスを取るため、小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えました。この状況ではガラスルーフを装着する予算も確保しにくいといえるでしょう。RAV4のパノラマムーンルーフは14万3000円、ハリアーの調光パノラマルーフは19万8000円なので、割安な装備ではありません。

 ガラスルーフを装着するクルマのユーザーからは「夏に車内が熱くなる」という話も聞かれます。価格の高いガラスルーフを装着したものの、開放感を味わえる喜びよりも車内が熱くなる不満が大きいと、次に買う時は普通のスチールルーフを選ぶでしょう。

トヨタ「RAV4」トヨタ「RAV4」

 このほかガラスルーフを装着すると、車両重量が増えて、燃費性能が悪化する欠点も生じます。ガラスは意外に重く、ガラスルーフの装着に伴うボディ補強も必要になるからです。

 例えばRAV4の場合、パノラマムーンルーフを装着すると、車両重量が20kg増えます。カタログデータのWLTCモード燃費に変化は生じませんが、実用燃費は下がります。今後、燃費規制が厳しくなることも考えると、ガラスルーフはメーカーとしても積極的には採用しにくい装備になります。

 一方、キャンバストップについては、老朽化した時の雨漏りが指摘されます。キャンバストップを閉めた時、ボディとの境目付近から雨漏りが生じるのです。開発段階では、豪雨を想定した雨漏りのテストも行って十分な耐久性を持たせていますが、屋根のない駐車場で10年前後を経過すると隙間も生じます。幌の手入れも必要になります。

 またコンパクトカーの場合、キャンバストップの幌も薄手なので、外の音が車内に入りやすくなります。雨の日に鉄道の高架橋の下などで信号待ちのため停車すると、雨どいから漏れた大量の水がキャンバストップに降り注ぎ、ボタボタと安っぽい音を立てます。こういう場面でも、愛車が可愛いと思えるユーザーでないと、キャンバストップには耐えられないかもしれません。

 以上のようにガラスルーフやキャンバストップは、複数の理由で採用車種を減らしました。特に大きな影響を与えたのは、開放感という情緒的な価値に対するニーズの変化です。

 以前はクルマに開放感という楽しさを求めるユーザーが多く、ガラスルーフやキャンバストップの需要も高かったですが、最近は運転支援機能などの実用装備が注目されています。情緒的な価値観の変化という意味では、スポーツカーの人気が下がったことと、本質は同じかもしれません。

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