フェラーリ最新「812コンペティツィオーネ」は6500万オーバー! 999台限定で受注スタート
くるまのニュース / 2021年5月7日 8時10分
フェラーリ「812」シリーズのリミテッドエディションの名前が発表された。その名も「812コンペティツィオーネ」。さらにオープンモデルの「812コンペティツィオーネA」も同時にワールドプレミアとなった。
■フェラーリとしては珍しい2台同時発表!
すでにオフィシャルの画像が公開されていた1台のニューモデルによるフィオラノ・サーキットでのホットラップから、今回のワールドプレミア・イベントは始まった。
フィオラノという地名からも分かるとおり、2021年5月5日(現地時間)ニューモデルを発表したのはフェラーリである。それは現行の12気筒モデル、「812スーパーファスト」をベースに開発されたものであることは、ボディのシルエットを見れば誰にも明らかであろう。
そして注目のネーミングは「812コンペティツィオーネ」であった。
だがさらに大きな驚きは、このフィオラノ・サーキットに隣接する開設されたばかりのGTスポーティング・アクティビティ部門のファシリティのなかにあった。
ここにはもう1台のニューモデルが、完全なサプライズで用意されていたのである。
その名は、「812コンペティツィオーネA」。すでに812コンペティツィオーネの姿は事前にオフィシャル写真が公開されていただけに、今回の発表ではその正式名だけが明らかになるのかと思われていたが、フェラーリは2台同時のワールドプレミアというサプライズを準備していたのだ。
ちなみに車名の「A」は、イタリア語で「アペルタ」を意味する。すなわち812コンペティツィオーネのオープン仕様ということになる。
フェラーリは、「この両車のステアリングを握れば、オンロードでもサーキットでも、ドライバーは車両との一体感を得ることができる」とコメントし、それは「どれほど複雑な動きを求めても、操作に対する瞬時のレスポンスと完全なコントロールが保証されているから実現できるのだ」と説明している。
さっそく812コンペティツィオーネ、812コンペティツィオーネAのメカニズムを探っていこう。
この両車に搭載されるエンジンは、6.5リッターV型12気筒自然吸気ユニットだ。排気量はこれまでの812スーパーファストと同様に6.5リッターだが、最高出力は830psと、さらに30psの強化が果たされることになった。
さらに注目すべきはそのレブリミットで、実に9500rpmに達する。これはコンロッドやピストン、クランクシャフト、バルブトレインなど、エンジンの主要コンポーネントを再設計した結果である。
もっとも大きな改良点はバルブトレインとシリンダーヘッドである。両車はいずれも完全な新設計バルブリフトのシステムを採用し、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングを施したスチール製のスライディング・フィンガーフォロワ―に変わったが、これはF1マシンから導入された新技術のひとつだ。
吸排気システムやECUも、もちろんコンペティツィオーネのための専用設計となる。排気システムにはGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)が採用されたが、それでも新設計のエグゾーストシステムは、中高回転域で魅力的なサウンドをV型12気筒エンジンのサウンドとともにカスタマーへと提供する。
組み合わせられるトランスミッションは、7速のデュアルクラッチ・ギアボックスだ。新たな制御プログラムを採用したこと、そしてV型12気筒エンジンのレブリミットが500rpm引き上げられたことで、変速時間はさらに5%短縮している。
もちろんその一方で、環境性能を引き上げるためのHELEシステムにもさらなる進化が施され、HELEモードを使用した際にはアイドリングストップ機能やエンジンマップが排気ガスの排出量をより低減させるよう機能する。
搭載エンジンの強化に伴って、冷却系も大きく見直された。812コンペティツィオーネ/812コンペティツィオーネAのフロントエアインテークは、フェラーリとしては初のシングルデザインで、それによってラジエーターに送られるエア量を最大化している。冷却液のサーキットもすべて改良され、冷却効率は812スーパーファスト比で10%の向上を果たしたという。
■クーペは999台、オープンは549台限定販売
次にビークル・ダイナミクスに話を進めよう。フェラーリがこの分野で開発の重要なテーマとして掲げたのは、全体的なパフォーマンスレベルの引き上げと、横方向ダイナミクスにおけるドライビング・プレジャーの向上、そしてコンペティツィオーネを名乗るスペシャルモデルとしてのハンドリング特性にあった。
独立4輪ステアリングの初採用、SSC(サイド・スリップ・コントロール)システムの第7世代への進化、そして専用のミシュラン・カップ2Rタイヤの開発などは、その代表的な例だろう。
「812コンペティツィオーネA」の発表は、フェラーリが用意したサプライズであった
このなかでもっとも興味深いのは、独立型となったリアステアリング機構だ。新世代の電子マネージメント・システムによって、左右の後輪を同調制御するのではなく、左右個別に作動させるシステムになった。これにより、各々のアクチュエーターが担うポジション制御の性能は大幅に向上し、また反応時間も短縮している。
第7世代SSCは、電子制御デファレンシャルやトラクションコントロール、磁性流体サスペンションコントロール、電動式前輪ステアリングと独立後輪ステアリング等々、すべての制御を統合する役割を持ち、それが結果として魅力的なドライビング・プレジャーを生み出してくれるのだ。
また、軽量化にも大きな注意が払われている。812コンペティツィオーネの総重量は812スーパーファストより38kgも軽く、前後のバンパーやリアスポイラー、エアインテークなどに軽量なCFRP素材を使用したことが、この軽量化には大きく貢献している。
ちなみにカスタマーは、フェラーリのV12モデルとしては初となるオール・カーボンファイバー製のホイールもチョイスできるとのことだ。
参考までにホイールサイズは20インチ。タイヤはフロントに275/35ZR20、リアに315/35ZR20を組み合わせる。ホイールの内側に見えるブレーキは、「SF90ストラダーレ」でデビューした、最新世代の「エアロ」キャリパーで鋳造キャリパーの内部にエアインテークが組み込まれているのが大きな特徴となっている。
812コンペティツィオーネ、812コンペティツィオーネAには、それぞれにベースとなった812シリーズとは異なるエクステリアのディテールが与えられている。それらはもちろんエアロダイナミクスをさらに向上させるための策であるのだが、見た目にも非常に魅力的で美しい造形に仕上がっている。
例えばボンネットには、左右に横断するくぼみのなかにCFRP製のブレードが装着されており、これはエンジンルームからの排気口を隠す独特の手法である。
これによりボンネットはさらに美しく彫刻的な造形となった。あるいは熱狂的なフェラリスタにとっては、往年の「250GTO」などのレーシングカーのカラーを想像させる処理ともいえるだろうか。
クーペのコンペティツィオーネでは、リアスクリーンが1枚のアルミニウム製パネルに変化していることも見逃せない。もちろんこれもフロントエンドに始まるエアロダイナミクスへの取り組みの一環で、同時により力強いファストバック・スタイルが楽しめる。
ボディ下面やこのリアスクリーンには、ボルテックス・ジェネレーターが多く装備され、それによってエアが整流される仕組みだ。リアタイヤの後方には3本の細いスロットが設けられているが、これもまたコンペティツィオーネのスタイリングでは大きな特徴であり、また使用されるボルテックス・ジェネレーターの存在を想起させるものといえるのだろう。
* * *
812コンペティツィオーネは999台限定ですでに受注をスタートしており、欧州での発売時期は2022年第1四半期からとなる。欧州での車両価格は49万9000ユーロ(邦貨換算約6550万円)だ。
812コンペティツィオーネAは549台限定で、2022年第4四半期から販売される予定だ。こちらの車両価格は57万8500ユーロ(邦貨換算約7600万円)となる。
最後の自然吸気V12モデルになるかもしれないとフェラリスタの間では話題になっているこの限定車だが、プレスコンファレンスでは、伝統のV12エンジンにはどのような姿であるにせよ、まだその将来はあるとのコメントがあった。それはそれで、大いに楽しみなことではないか。
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