音楽や動画だけでなくタイヤまで! 流行りつつある新しい買い方「サブスク」を改めて考える
くるまのニュース / 2021年5月27日 19時10分
商品ごとに購入するのではなく、一定期間の利用に対して定期的に料金を払うことを、「サブスクリプション方式」、略して「サブスク」といわれる。動画配信サービスのNetflixやamazonプライム、音楽ストリーミングサービスのSpotifyやAppleミュージックなど、エンタメ系で流行しているが、クルマでもトヨタの「KINTO」やボルボの「SMAVO」など、サービスが続々と登場している。そしてここに来てブリヂストンが「Mobox(モボックス)」というタイヤのサブスクサービスを始めた。どういったものなのだろうか。
■トヨタ「KINTO」やボルボ「SMAVO」はクルマのサブスク
昨今、サブスクリプション・サービスが確実に広がっている。
サブスクリプション・サービスとは、モノを一括で買い取るのではなく、一定期間の利用に対して月々に支払うというスタイルを指す。日本では、月々一定額を支払うことで音楽聞き放題といった、エンターテイメント系から普及している。ネットフリックスやamazonプライム、スポティファイなどがそれだ。
そうしたサブスクリプション・サービスを略して「サブスク」などと呼ぶ。
しかし、欧米などでは、さらに一歩進んだモノに対するサブスクも広がっている。
たとえばフィリップスは、ヘルスケア製品や照明機器を売り切りするのではなく、定額で利用するサブスク方式とすることで売り上げをアップしている。また、サブスクにすることで買い取りだと廃棄されてしまう製品を回収しやすくしてリサイクル率を高めるという、サーキュラ・エコノミー(循環型経済)という考えもある。
持続可能な社会の実現に有用な手法という意味でもサブスクへの注目が高まっているのだ。
そうした欧米発の流れは自動車業界にも影響を与えており、クルマを売り切りではなくサブスクにしようという動きが広がっている。
その一例が、トヨタが日本だけでなく世界各国で展開しようというサブスクの「KINTO(キント)」であるし、ボルボの「SMAVO(スマボ)」といったものだ。
どちらも頭金なしの月々定額払いでクルマに乗ることができ、2年や3年などでの乗り換えサービスが用意されている。月々一定額のため、支払いの計画が立てやすいだけでなく、クルマにまつわる幅広いサービスや支払いがワンストップで済むという簡便さも大きな魅力となる。
そうしたなか、今度はタイヤのサブスクも誕生した。それが2021年4月1日にスタートしたブリヂストンの「Mobox(モボックス)」だ。
■今後タイヤは買うものではなく、サブスクを利用するものになっていく!?
ブリヂストンがおこなうサブスク、Moboxは、タイヤとメンテナンスを月額一定払いで提供するというものだ。
スタンダードプランならば、タイヤ交換取り付けやローテーション、安全点検や窒素ガス充填、そしてパンク補償のサービスが受けられる(契約店舗に限る)
プランは2年契約を基本に、サービス内容の異なる「スタンダード」と「ライト」の2種。スタンダードは「初回タイヤ取り付け時の脱着・組み替え・センターフィット」「パンク補償」「窒素ガス充填」「ローテーション・センターフィット(2回)」「安全点検」「メンテナンス通知」が提供される。
ライトは、このうちの「窒素ガス充填」と「ローテーション・センターフィット」が省かれる。サービス対応は全国353店のコクピット/タイヤ館(2021年4月時点)となる。
具体的な価格は、ブリヂストンの公式サイトを見ると最低価格が月額957円からとある。
同サイトでトヨタ「プリウス」のサイズでシミュレーションしてみると、サマータイヤ「DYTON DT30」の195/65R15サイズが、ライトプランで月額1529円(消費税込、以下同)、スタンダードプランが月額2024円となる。
WEB申し込みできるサブスク商品は、サマータイヤ「DYTON DT30」のほか、このオールシーズンタイヤ「WEATHERGRIP」の2種類になる。店頭限定商品は「ECOPIA」「Playz」「REGNO」の3商品から選ぶことが可能だ
2年では、総額がライトプランで3万6696円、スタンダードで4万8576円だ。初期費用を抑えてタイヤを新調できるだけでなく、プロショップによるサービスを気軽に受けられるという安心感も大きな魅力となるだろう。
ちなみにWEB申し込みでは2種類のタイヤからしか選べないが、店頭申込みだとエコピアからプレイズ、レグノといった人気の銘柄も選ぶことができる。
* * *
では、なぜブリヂストンがこのようなサービスを実施することになったのか。
その経緯をブリヂストンの広報部にたずねてみた。すると「自動車業界は大変革の時代を迎え、MaaSやCASE化の波が加速、お客様の生活スタイルや消費スタイルも変化しているなかで、“タイヤに安心感と気軽さを”というコンセプトで、お客様のニーズに応えるタイヤとメンテナンスのサブスクリプション・サービスの提供を開始しました」という。
また、「環境への配慮の視点では、現時点でMoboxは、タイヤを適切なタイミングでメンテナンスしていただき、長くご利用いただくことで、資源生産性の向上に貢献するとともに、適正空気圧を保つことで燃費悪化を抑制しCO2排出量の削減に貢献するものと考えております」とコメントする。
ちなみにブリヂストンによる「Mobox」の導入は、日本が初ではない。
「欧州では、2017年にフランスでサービスを開始し、2021年現在ではドイツ、スペイン、イタリアなど欧州の主要国で販売を展開しております。欧州ではお客様に、タイヤとメンテナンスの新しい買い方として受け入れられております」
日本でも2020年の暮れにトライアルとして少数の店舗でサービスを実施しており、そこでも手ごたえがあったようだ。そのため「今後、Moboxを通じてご利用いただけるタイヤのラインナップ拡大、およびメンテナンスサービスの追加、ご利用いただける店舗の拡大を計画しております」とか。
使うほどに消耗してしまう製品は、サブスクとの相性が良いと言える。とくにタイヤはゴム製品のため、走らなくても経年劣化で一定期間がくれば交換しなければならない。サブスクにぴったりな商品なのだ。
ブリヂストンのサービスが定着すれば、ライバルの参入も十分にあり得る話。10年後、タイヤは買うものではなく、サブスクで利用するモノになっている可能性も十分にあるのだ。
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