運転中はラジオ派必読! カーラジオはいつから始まりこの先も存続するのか?
くるまのニュース / 2021年7月1日 11時10分
メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」のインフォテイメントシステムが革新的すぎると話題だが、いかに進化しても必ず備わっている機能がラジオだ。そのルーツは、1920年代初頭から搭載されはじめたカーラジオにまで遡るといっていいだろう。そこで、メルセデス・ベンツのカーラジオの歴史を紹介しよう。
■ドライブにラジオは必要不可欠だった
クルマを運転している際にラジオで音楽を聴くという人は多いだろう。昔話になるが、まだ音楽ソースがラジオかカセットテープしかなかった頃、ドライブデートに行くときには、エアチェックでお気に入りの曲をカセットテープに録音して、いわばオリジナルアルバムをつくったりしたものだった。これとてもともとはラジオから流れる音楽を録音しているのだから、ラジオというメディアは非常に身近だったわけである。
カセットテープではせいぜい90分、120分だった録音時間も、いまやサブスクでエンドレスにいろいろな音楽を聴くことができるようになり、MP3などのデジタル保存でさえ丸一日だって聴き続けられるようになった。
このようにオーディオソースは変化しても、ラジオや音楽がドライブのお供としての位置づけは変わっていない。そこで車内のオーディオソースの歴史を、ラジオを軸に紐解いてみよう。
●クルマのあらゆる歴史が分かるミュージアム
ドイツ・シュツットガルトにあるメルセデス・ベンツ・ミュージアムには、クルマが誕生してから今日までの、さまざまなモデルが展示・保存されている。常設展示されているものだけでも、クルマは約160台、自動車関連部品は約1500点というから、その規模は世界トップクラスといっていい。
そのなかには、クルマのオーディオソースも含まれている。歴史的にいうと、最初のカーオーディオはカーラジオで、いまから約100年前の1920年代初頭にアメリカで現れた。
当時のカーラジオは専用品ではなく、愛好家がホーム用のラジオを改造し、クルマに搭載するというものだった。しかしこの、いわばワンオフのカーラジオは、ヨーロッパでも注目を浴び、技術的な困難をクリアしつつ、個人的に搭載する人が増えていった。
その人気に注目したのが、ボッシュ社だった。子会社であるIdeal-Werke社がヨーロッパ向けのカーラジオ『Autosuper5(AS5)』を開発し発表したのは、1932年に開催されたベルリン・ラジオ・ショーでのこと。
このラジオは重さ15kg、価格は465マルクだったそうだ。当時のドイツの通貨であったライヒスマルクはインフレが激しかったこともあって、465マルクがいまの貨幣価値で考えたときにいかほどのものなのか、ハッキリわからないのだが、高価であったことは間違いないだろう。
そのころのカーラジオは、レシーバーやアンプをトランクなどにセットし、インストルメントパネルに取り付けられていたのはコントロールユニットのみ、という構成となっていた。しかしAS5は、コンパクトさを特長としていて、インストルメントパネル下にユニットを丸ごとセットできるようになっていた。
●メルセデスの市販車に装備されたラジオとは
こうしたコンパクト化の流れは、第二次世界大戦後に大きく進化し、インストルメントパネルに完全に組み込めるようになった。メルセデス・ベンツの戦後初の高級車、W136型「170S」には、1949年に発表されたベッカー社のAS49というラジオが、オプションとして設定されている。
さらに1950年代になると、FM放送のスタートや、ラジオのボタン選局機構、選局スキャン機構などといった革新的な機能のレベルアップがあり、さらにはトランジスタ技術の応用によるさらなる小型化や、ステレオサウンド、カセットテープスロットの採用などといった、現代のカーオーディオにつながる機能が登場している。
その後、カーオーディオの世界はデジタル化、デジタルメディアとの機能統合が進むことになる。1980年代のCDプレーヤーの搭載、1990年代のGPSナビゲーションシステムとの統合を経て、いまではメルセデス・ベンツでいうところのMBUX(Mercedes-Benz User Experience)インフォテインメントシステムの一部として、カーラジオは存在をしている。
しかし、いかに技術が進歩しようとも、ドライブのお供にラジオで自分のお気に入りの音楽を聴く、最新の情報を得る、自分だけの空間を楽しむ、という魅力は変わってはいない。
カーラジオからはじまった、移動しながらプライベートな空間を味わうという楽しさは、この先クルマがどのように変わっていこうとも、色あせないものなのだ。いや、自動運転が進化すればするほど、楽しみかたは無限に広がるはず。100年前そのことに気付いた先達の先見の明は、大いに評価されるべきだろう。
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