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「マツダ地獄」は過去の話?なぜ「残価率3年55%」の一律に? マツダが残価率にこだわるワケ

くるまのニュース / 2021年7月2日 7時10分

クルマの購入方法として定着しつつある残価設定ローン。基本的には中古車市場での需要を見て車種毎に「残価率」が設定されています。しかし、マツダでは残価率を一律で固定していますが、そこにどんな背景があるのでしょうか。

■マツダの乗用車は「3年55%」で残価率を固定

 かつて現金一括、もしくは割賦払い(いわゆる通常のローン)が主流だった新車の購入方法ですが、近年では「残価設定ローン」という少し特殊なローンがひとつの選択肢として定着してきました。
 
 ほとんどのメーカーでは、残価設定ローンの基準となる「残価率」を中古車市場での需要を見て車種毎に設定していますが、マツダでは残価率を基本的に一律で固定しています。そこにどんな背景があるのでしょうか。

 残価設定ローンは、基本的にメーカー(販売店)がそのクルマの将来の買取額を保証するというもので、ユーザーは新車価格からその買取保証額(残価)を引いた金額と、金利分を支払う仕組みです。

 このときの新車価格に対する残価の割合を残価率と呼びます。

 ユーザーとしては、新車価格の全額ではなく、実際に所有している期間分の価格を支払うことになるため、手持ち現金が少なくても新車を購入することができるようになります。

 また、それは、より上級車種を購入することができるということでもあります。

 残価設定ローンは、走行距離や使用状況に制限があるうえに、金利は新車価格全体に対して生じるなど注意すべき点もありますが、このローンが登場した2010年代以降の新車販売を押し上げる原動力となったのは確かです。

 残価設定ローンのキモとなる残価率は、基本的には車種ごとに個別に設定されます。

 大きく影響を受けるのは中古車市場での需要であり、中古車として再販が見込める車種ほど高めに設定されます。

 そのため、残価設定ローンを利用するかどうかにかかわらず、残価率を把握することは、将来の下取り額を把握することにもつながるため、新車購入をするユーザーにとって大きなメリットがあります。

 しかし、マツダの場合ではOEM提供を受けている一部の軽自動車などをのぞいて、ほぼすべての車種で残価率が固定されています。

 残価率は基本的にメーカー側が設定するため、固定されていること自体には何も問題はありません。

 しかし、他メーカーでは比較的残価率が高めに設定されることの多いSUVや、反対に低めに設定されることの多いセダンやスポーツカーであっても、マツダでは基本的に乗用車は「3年55%/4年43%/5年35%」、軽自動車は「3年50%/4年38%/5年30%」と一律に設定しています。

 このような一律の残価率についてマツダの販売店では、「基本的な残価率を一律とすることで、お客さまのライフスタイルに合わせたクルマに乗り換えやすくなります。それにより、長くマツダ車とお付き合いいただけるという部分では一律の残価率は効果があるといえます」と話しています。

※ ※ ※

 また、2021年1月に発売した電気自動車(EV)の「MX-30 EV MODEL」でも「3年55%/4年43%/5年35%」としており、マツダは「お客さまにEVを選択肢のひとつとしてご検討いただけるように、従来のエンジン車同等の残価率を設定した」と説明しています。

■「マツダ地獄」は二度と起こさないという強い意志

 クルマは、購入時に値引き交渉が起こり得るという点で、多くの日用品とは少々異なっています。

 当然、ユーザーとしては安く買えるに越したことはないため、値引きの大きい車種には目を惹かれます。

 一方、販売店側としても、商品やブランドの力だけでは販売力が弱い場合、「最後の手段」として値引き販売をおこなうことがあります。

 値引きをしなければ売れない車種はそもそも不人気車種であるため、リセールバリュー、つまり下取り額も安くなります。

 そうなると次のクルマの購入資金も少なくなるため、また、値引き販売されるような不人気車種を選ばざるを得なくなってしまいます。

 そして、この「負のスパイラル」が続くと、ユーザーはもちろん、メーカーにとっても利益の低下やブランド価値の低下という大きな問題へと繋がるのです。

ブランド力向上でかつての「マツダ地獄」はもう過去の話? ブランド力向上でかつての「マツダ地獄」はもう過去の話?

 かつてマツダはこの状態に陥り、ユーザーからは「マツダ地獄」と呼ばれました。

 それによるブランド価値の低下に危機感を持ったマツダは、クリーンディーゼルエンジンの早期導入や、欧州プレミアムブランドのようなイメージを強調したマーケティングをおこなうなどにより、ブランドイメージの向上を図りました。

 それと同時に、2012年に登場した「CX-5」以降はそれまでのような大幅な値引き販売をおこなわないという販売戦略をとっており、リセールバリューの向上にも努めました。

 また、前述の残価率を一定以上の水準で固定することで、ユーザーに対してリセールバリューの高さを保証したのです。

 実際には車種ごとにリセールバリューの高低があると思われますが、そこで生じる差はマツダが「飲み込んだ」といえるでしょう。

 つまり、マツダが残価率を固定しているのは、かつての「マツダ地獄」から脱却を図り、リセールバリューの高さを保証するための施策であると考えられます。

 また、2019年11月におこなわれた決算説明会にて、マツダは「ブランド価値向上の取り組みや販売刷新などにより、マツダ地獄はなくなった」と説明しています。

※ ※ ※

 残価率は一定期間ごとに見直されるものであるため、これを注視しておくことはユーザーが「地獄」に陥らないための最善の方法であるのかもしれません。

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