【分析】フェラーリ「296GTB」を予約するなら「アセット・コルサ」を選んで正解
くるまのニュース / 2021年7月21日 8時10分
フェラーリの最新モデルである「296GTB」のフィオラーノ・ラップタイムは、「SF90ストラダーレ」、「ラ・フェラーリ」に次いで歴代公道モデル3位。V6エンジン搭載のピッコラ・フェラーリかと思いきや、実は相当ポテンシャルの高いフェラーリであることが判明した。そこで、スーパーカー超王山崎元裕氏に、296GTBを多角的に分析してもらった。
■普段使いどころか、サーキットでも楽しめそうな「296GTB」
フェラーリは2021年6月24日、ニューモデルとなる「296GTB」をオンラインで世界初公開した。一見、これまでの8気筒シリーズの後継車に相当するモデルとも考えられる296GTBだが、フェラーリによれば、ステアリングを握るという概念を根本から書き換え、限界でのダイナミクスを楽しむよりもむしろ日常的な走行でも純粋な走りの感動を味わえるモデルであることが、開発コンセプトの主軸に掲げられたという。
現在判明しているスペックや情報から、269GTBがどのようなピッコロフェラーリなのか、分析してみよう。
●V6でもディーノではなくフェラーリを名乗っていいのか
296GTBというモデルの名称は、フェラーリの伝統に則った、フェラーリファンとしては久々にシンプルな印象を感じるものだろう。
2.9リッターのV型6気筒エンジンを搭載するGT=グランツーリスモ、B=ベルリネッタ(クーペ)がその名の由来だ。
フェラーリはこれまで、ディーノのブランド下でのみV型6気筒エンジンを使用してきたと思われがちだが、1961年のF1マシン「156F1」では、120度のV型6気筒ターボという、296TBに搭載されたアーキテクチャーと同様のエンジンを搭載して、フィル・ヒルなどの活躍によって、マニファクチャラーズ・チャンピオンシップを獲得した歴史がある。
つまりフェラーリにとって、120度のV型6気筒ターボエンジンは、なにも特別なものではなかったのである。彼らはさらに2014年代以降のF1GPにおいて、ハイブリッド技術における数多くのノウハウを得ている。フェラーリにとって120度V型6気筒ターボエンジン、そしてハブリッド化は、未知の世界ではなかったのだ。
このエンジンに、プラグインの電気モーターを組み合わせたのは、たしかに大きな話題だ。296GTBのエンジンは、そのために白紙から設計されたもので、ペダル・レスポンスをゼロにまで短縮するほか、エレクトリック・モーターの駆動力のみで走行するeDriveモードでは、25kmの航続距離が可能。そのためには優れたエアロダイアミクスなど、さまざまなパートでのストイックなまでの性能向上が必要だったに違いない。
【スーパーカー超王の見解】
ディーノではなく、フェラーリを名乗るのにまったく問題ない。それはフィオラーノのラップタイムを見ただけでも明らかだ。
●サイズでの優位性はあるのか?
搭載されるV型6気筒ターボエンジンの出力は663ps。これだけでも全長4565mm×全幅1958mm×全高1187mm、車重は乾燥重量で1470kgというコンパクトなボディには十分なスペックといえる。
さらにフェラーリは、最高出力で167psを発揮するエレクトリック・モーターをエンジンとミッションの間に搭載し、エンジンと同様に後輪を駆動するために使用し、トータル830psの最高出力を実現した。
ちなみに搭載されるモーターは、「SF90ストラダーレ」と共通のものだが、バッテリーは同様の比較でセルが4個少ない80個となる。
【スーパーカー超王の見解】
296GTBの優位な点は、2600mmとされた短いホイールベースだ。前後重量配分は40.5:59.5。さらにエンジンはこれまでの8気筒モデルより84mm短く2600mmに設計されているので、ハントリング特性などは確実に向上していることが予想される。
●フェラーリの味付けとは
フェラーリでは、車両のハンドリング特性とドライバーへのフィードバックを、以下の5種類の指標で図っているという。
1/横方向:ステアリング・ホイールによるインプットに対する反応、ステアリング・インプットへのリア・アクスルの即時の応答。苦もなく操れるハンドリング。
2/縦方向:アクセルペダルに対する迅速でスムーズな反応。
3/ギアチェンジ:変速時間、それぞれのギアチェンジで生じる明確な変化の感覚。
4/ブレーキング:ブレーキペダルのストロークや反応といったフィール。
5/サウンド:キャビン内の音量や音質、エンジンスピードの上昇に伴う音の変化。
これらパフォーマンスの引き出し方の容易さ、そして活用のしやすさも、296GTBのドライビングにおける非常に重要な要素になるという。
このために主要なコンポーネントをできる限りコンパクトにするとともに、エンジンフローのマネージメントを図り、それをビークルダイナミクス制御と統合した新コンポーネントが、自動車業界では初となる6ウェイのシャシ・ダイナミック・センサー(6w-CDS)だ。
新ブレーキ・バイ・ワイヤー・ユニットによる電動トラクション・コントロールとエネルギー回生では、ABSを含む作動する全モードで油圧と電気による調整が組み合わされる。ブレーキ・バイ・ワイヤのおかげで、ペダルストロークが最小限にまで抑えられたため、スポーティな感覚がさらに強まっている。
さらにトラクションの制御・分配ソリューションとして296GTBで初採用される「ABS evo」が注目だ。このABS evoの制御モジュールは6w-CDSセンサーと統合されており、リアタイヤのグリップ限界をさらに押あげ、制動距離の再現性を高めるので、結果的にターンインする際のパフォーマンスが向上している。
【スーパーカー超王の見解】
296GTBの開発コンセプトは、限界でのダイナミクスよりも日常的な走行でも純粋な走りの感動を味わえるモデルということなのだが、リリースを読む限り、サーキット走行でも相当なレベルに仕上がっていることが想像できる。日常レベルでの楽しみ方でも、「ローマ」と296GTBでは、また違うステージということだろう。
■フェラーリ「296GTB」予約するなら、アセット・コルサを選んで間違いない
●ドライブモード
296GTBに設定されるドライブモードは、次の4つだ。
1/「eDrive」:純粋にエレクトリック・モーターのみで走行する。
2/「Hybrid」:始動時のデフォルトモードとなり、パワーフローは効率を最大化するように制御される。
3/「Performance」:V型6気筒エンジンを常時稼働してバッテリーの効率を維持し、いつでもフルパワーが発揮できる状態のモード。
4/「Qualify」:バッテリーの再充電を抑えて、最大のパフォーマンスを発揮させるモード。
さらにサイド・スリップ・コントロール・システムのグリップ・エスティメーターはEPSからの情報を得て、限界域での走行ではない時でも、すべてのステアリング操作に対して、その間のグリップを推定。6w-CDSからの情報を使い、さらに正確に制動力を配分する。
ちなみに296GTBのブレーキは、「F8トリブート」との比較で、200-0km/hの制動距離を8.8%短縮、200km/hからの繰り返しブレーキングをおこなった際の制動効率は24%も向上しているという。
【スーパーカー超王の見解】
296GTBのオーナーにならんとする人が、きっと一番注目しているモードは、「eDrive」だろう。これで、早朝や深夜など、近隣住民に気兼ねすることなくガレージから出し入れ出来るのだから。
120度V型6気筒ターボエンジンの排気量は2992cc、最高出力は663ps
●内外装のスタイリング
フェラーリは296GTBのスタイリングを、ミッドリアエンジン・2シーター・ベルリネッタのアイデンティティを再定義したものと説明している。
確かに過去10年間にマラネロから生み出されたフェラーリのなかでは最小のサイズとなる296GTBのボディは、ひとつの塊から生み出されたかのような、シャープで力強い造形でまとめられている。
フェラーリの歴史に詳しい人ならば、ボリューム感たっぷりのリアフェンダーやエンジンルームまわりのデザインから、「250LM」の存在を思い出すだろうし、また現代的な視線で見れば数々の最新技術が空力的効率を高めるために使用されているのが分かる。ダウンフォース量は250km/h時で369kgだ。
たとえばリアエンドのスタイリングを印象づけるカムテールなどはその美しさと機能の両立における典型的な例といっていい。ほぼ垂直に切り落とされたテールはボディのコンパクトさを強調し、さらにテール上部には水平なエレメントがあり、テールライトと格納型スポイラーが組み込まれている。
テールライトは両端に2本の光の線が現れるが、これがフェラーリ伝統の丸型2灯式ランプの最新解釈ということなのだろう。中央のエグゾーストパイプを1本出しとしたのも斬新な印象だ。
キャビン、フルデジタルインターフェイスという新たなコンセプトが採用された。8速F1 DCTのゲートは、「SF90ストラダーレ」などと同様にかつてのフェラーリが特徴としていたゲート式を採用している。
【スーパーカー超王の見解】
エクステリアのデザイン、そしてそれが最新のフェラーリであることを考えれば、新しいインテリアのデザインコンセプトととのマッチングは悪くないといえる。
●気になるサウンドは?
見逃してはならないのが、スチールとニッケルからなるインコネル製のエグゾーストシステムだ。フェラーリは一般的には好みではないという者が多いターボモデルのエグゾーストサウンドを、低速域でも魅力的なサウンドにするために、排出ガス処理システムの前にホットチューブと呼ばれる特許取得済みのシステムを搭載。キャビンには常に魅力的なサウンドが満ち溢れることになった。
【スーパーカー超王の見解】
イタリアで試乗した際の印象では、自然吸気エンジンの「458」とターボモデルとなった「488」とでは、明らかにサウンドが異なっていた。ターボ特有のタービン回転やブローオフバルブ、ウェイストゲートバルブのサウンドが混じっていたのだが、296GTBではフェラーリらしいサウンドに洗練されているということだろう。
●デリバリー時期は?
296GTBのセールスは、まずヨーロッパ各国の市場から開始される予定だ。設定されているモデルは、スタンダードな296GTBと、さらにスポーツ性を高めた「296GTBアセット・コルサ」の2モデル。
後者には顧客レース部門のコルサ・クリエンティによる専用のサスペンションなどが装備される。
注目の価格は299GTBが26万6000ユーロ(邦貨換算約3480万円)、296GTBアセット・コルサは30万2000ユーロ(邦貨換算約3950万円)と発表されている。
【スーパーカー超王の見解】
ついにフェラーリから発表された6気筒モデル。それはピッコラ・フェラーリ(小さなフェラーリ)などという言葉で済まされるほど、シンプルなニューモデルではなかったようだ。
リセールを考慮するならば、アセット・コルサを選んでおいた方が間違いないだろう。
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