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英国王女が愛したロールス・ロイスはたったの700万円 特注「シルバーレイスII」の仕様とは

くるまのニュース / 2021年7月17日 11時10分

英国御用達のクルマとして、エリザベス女王のベントレー「ステートリムジン」は有名だが、エリザベス女王の妹であるマーガレット王女が長く使っていたロールス・ロイスはあまり知られていない。そんなマーガレット王女が愛したロールス・ロイスを紹介しよう。

■英国王女に見初められたロールス・ロイスとは

 ながらく海外のクラシックカー/コレクターズカー市況を観察していると、あるオークションで一度落札されたばかりのクルマが、あまりタイムラグをおかずに別のオークションに出品されるという椿事を、まれに見かけることがある。

 英国のオークションハウス、シルバーストーン・オークション社が、2020年11月中旬に開催した「Classic & Competition Car」オークションに出品された、かつてマーガレット王女が使用していた「ロールス・ロイス・シルバーレイスII」もその一例といえよう。

 イギリス国民の人気を集めたプリンセスの元愛車が売りに出されるということで、世界的な話題を提供したことは記憶に新しいのだが、その時のロールス・ロイスが、2021年5月26日に開催された英国H & Hクラシック社「Imperial War Museum Duxford」オークションに再び姿を見せたというのだ。

●R-RシルバーレイスIIって、どんなクルマ?

 ロールス・ロイス・シルバーレイスIIというクルマについて語るには、まずはその起源である「シルバーシャドウ」について、説明せねばならないだろう。

 1965年にデビューしたシルバーシャドウは、シトロエンから特許を借り受けた「ハイドロニューマティック」を採用した、自動車高調節システムつきの独立懸架。ブレーキも旧来のイスパノ・スイザ式メカニカルサーボつき4輪ドラムから、一挙にハイドロニューマチックによる油圧作動の4輪ディスクとするなど、あまりに革新的なテクノロジーを大幅に導入。

 ロールス・ロイスの歴史上もっともドラスティックな進化を遂げたモデルとして知られている。

 しかし、革新的なメカニズムを持つがゆえに未完成な部分も多く、デビュー直後から数多くの改良が施されることになったことでも知られている。なかでも最大の進化を遂げたのが、1977年春におこなわれたマイナーチェンジ。新たに「シルバーシャドウII」として、実質的な再デビューを果たした。

 そしてこの際に、従来は特段分類されていなかったロングホイールベース版に、1946年から1955年に生産された超高級モデル「シルバーレイス」のネーミングが復活。「シルバーレイスII」と呼ばれることになる。

 シルバーシャドウII/シルバーレイスIIでは、ステアリングギアボックスが従来のボール循環式からラック&ピニオン式に変更されたことで、それまでやや心もとなかったステアリングフィールやハンドリングは、格段にシュアなものとなった。

 また、1975年デビューのR-R「カマルグ」に先行装備されていた上下分割冷房式のエアコンディショナーや、フロントのエアダムスカート、同じく1975年ごろからのシルバーシャドウに、北米仕様専用で装着されていた5マイルバンパーを標準装備するなど、ロールス・ロイス史上最大規模の進化が施された結果として、シルバーレイスIIは誕生することになった。

 そして2020年・2021年と2度にわたってオークションに出品された個体は、クルー本社工場で製作されたといわれる2145台のシルバーレイスIIのなかでも特別な1台、いわゆる「ロイヤルカー」だったのである。

■「ローマの休日」のアン王女のモデルになったロイヤルファミリーとは

 オークションに登場したシルバーレイスIIが特別な一台である理由は、ひとえに元オーナーにある。スノードン伯爵夫人ことマーガレット王女が、終生愛用した個体だったのだ。

現在、継続販売中のマーガレット王女の「シルバーレイスII」(C)H&H's auctions現在、継続販売中のマーガレット王女の「シルバーレイスII」(C)H&H's auctions

●マーガレット王女とその愛車とは

 マーガレット王女は、現在の英国女王であるエリザベス2世の妹。1953年に公開され、世界的な大ヒットを博した映画「ローマの休日」にて、オードリー・ヘプバーン演ずるアン王女のモデルになったともいわれる、美貌のプリンセスである。

 16歳年上で離婚歴のある侍従武官との初恋を、王室と時の政府によって断念させられたのち、英国一といわれた人気写真家と結婚。さらに離婚後には、ミック・ジャガーやピーター・セラーズとの熱愛が噂されたという奔放な私生活までも含めて、イギリス国民から熱烈に愛された人物だった。

 そして王女の愛車だったシルバーレイスIIは、彼女のフルオーダーによって設えられた、完全なビスポーク車両となっている。

 ボディは、日本では「溜色(ためいろ)」と呼ばれる濃赤色で、ルーフはブラックのレザートップを組み合わせ、フラッグポールとロイヤルクレスト(紋章)が取り付けられる。インテリアも完全なオーダーメイドで、多くの英国ロイヤルカーと同じくシートは緑色のベロア張りと、派手好みと思われがちなマーガレット王女のオーダーとしては、かなり控えめな仕立てとされた。

 一方、後席ドアの上には小さなふたつのスポットライトを設置。公務の際には、観衆が明るく照らされたプリンセスを見られるよう設えられていた。

 また、スタンダードのシルバーシャドウII/シルバーレイスIIでは艶やかな鏡面仕上げのウォールナットとされるはずのダッシュボードは、パパラッチたちが点灯するストロボの点滅でプリンセスが気を散らさないよう、マット仕上げのローズウッドに変更。ドアキャッピングも同じ理由でウッドパネルを廃し、代わりに黒いレザーで覆われている。

 この特注シルバーレイスIIをマーガレット王女は終生大切に愛用し、2002年2月15日に彼女が没した時にも、ウィンザー城セントジョージ礼拝堂でおこなわれた葬儀において家族を乗せて「最後のお勤め」を果たした。

 そして長男のリンリー子爵(現在の第二代スノードン伯爵)に受け継がれたのち、その年の後半に、今なおロールス・ロイス社と密接なかかわりを持つスペシャルショップ「P&Aウッド」を介して、リンリー子爵の友人でもあるオールライト氏が入手。

 さらに2016年3月には、高級クラシックカー専門店「JD Classics」社(2018年に破綻)を介して、シルバーストーン・オークションに出品した旧オーナーの保有する重要なプライベートコレクションに加えられることになった。

●正真正銘のロイヤルカーのお値段は

「ロイヤルカー」と呼ばれるクルマの多くは、メーカーから王室メンバーにリースされることが多く、5年以上保持される事例は決して多くない。さらにロイヤルファミリー自身が注文し、個人的に所有してきたオーダーメイド車両が市場に出る機会は皆無に等しい。

 そんな事情もあって、2020年11月の「Classic & Competition Car 2020」オークションにて、このマーガレット王女のR-RシルバーレイスIIは日本円に換算して約700万円という、このモデルとしてはかなり高価な価格で落札されるに至った。

 ところが、それからわずか約半年後となる2021年5月26日、H & Hクラシック社がケンブリッジ近郊ダックスフォードの「英国戦争博物館」を会場として開催した「Imperial War Museum Duxford」オークションに再出品されたというニュースは、業界内でかなりの話題となった。クルマの知名度や歴史的な重要さ、そしてわずか半年をおかない出品ということもあれば、それは当然ともいえるだろう。

 この「ロイヤルカー」シルバーレイスIIにH & Hクラシック社が設定したエスティメート(推定落札価格)は4万5000-5万5000ポンド、つまり約700万-約860万円と、前回のシルバーストーン・オークション社の落札価格を反映したものとなった。

 しかし、今回は残念ながら既定の最低落札価格には届かないまま「No Sale(流札)」であった。現在ではH & Hクラシック社営業部門による継続販売となっているようだ。

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