車格に対して下剋上が勃発? ワンランク上を目指してみた車3選
くるまのニュース / 2021年7月23日 6時10分
クルマを分類するうえで、車格という分け方があります。車格は一般的にはボディサイズとエンジンの排気量によって決まり、車格が同じなら価格や装備、諸性能も概ね同じになります。一方で、車格をあえて打ち破ろうとしたモデルも存在。そこで、ワンランク上のモデルを目指したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
■車格に関係なく、上のランクを目指したクルマを振り返る
クルマには数多くの種類が存在しますが、ボディサイズやエンジンの排気量で分かれる「車格」という分け方もあります。
欧州で「Bセグメント」や「Cセグメント」といった全長で区分するのが一般的で、日本でもセグメントは使われますが、もっと抽象的に「コンパクトカー」や「大型セダン」などの分類方法もあります。
たとえばコンパクトカーというと明確な定義はありませんが、概ね全長が4m以下の5ドアハッチバックで、排気量は1.5リッター以下というのが通例です。
車格が同じクルマでは、性能や装備、価格も近くなりますが、その縛りをあえて打ち破ろうとしたクルマも存在。
そこで、ワンランク上のモデルを目指したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「ローレルスピリット」
「サニー」ベースながら上質な仕立てだった「ローレルスピリット」
かつて、日産のエントリーカーとして主力車種だった「サニー」は、1981年に登場した5代目からFF化され、さらにサニーをベースとしたモデルが次々と誕生しました。
そのなかの1台が、1982年に発売されたセダンの「ローレルスピリット」です。
ローレルスピリットという名のとおりミドルクラスセダンの「ローレル」をインスパイアしたモデルで、内外装の意匠はローレルに準じており、装備も充実していました。
しかし、初代ローレルスピリットはサニーの印象から抜けきれておらず、少なくとも高級感があったとはいえませんでした。
そこで、1986年に6代目サニーをベースとした2代目ローレルスピリットが登場。
外装は直線基調のフォルムと長方形のメッキグリルに横長のヘッドライトを配置したフロントフェイスとし、まさに5代目ローレルの後期型を彷彿とさせました。
内装もシートから内張り、フロア、天井までワインレッドに統一したカラーをメインとし、シート生地などにはビロードのような肌触りの布を使うことによって、高級感を演出。
エンジンは全グレード直列4気筒で、1.5リッターSOHCと1.6リッターDOHC、1.7リッターディーゼルを設定していたのはサニーと同じですが、サニーの廉価グレードにあった1.3リッター車は省略されました。
ローレルスピリットは小さな高級車を標榜したモデルとして一定の人気がありましたが、1990年に生産を終了。同様なコンセプトで同じくサニーベースだった「ラングラー」があり、こちらはスカイラインをイメージしていました。
●ホンダ「コンチェルト」
小さな「レジェンド」を目指して開発された「コンチェルト」
前出のローレルスピリットよりも、さらに本格的に上級車種をイメージして開発されたのが、1988年に発売されたホンダ「コンチェルト」です。
1980年代にホンダと英国のローバーグループは業務提携をおこない、日本と欧州で販売するそれぞれのモデルの共同開発をおこない、そうした背景から誕生した1台がコンチェルトでした。
主要なコンポーネンツは4代目「シビック」がベースで、ボディタイプは4ドアセダンと5ドアハッチバックをラインナップ。
外観は6ライトウインドウを採用した直線基調のヨーロピアンスタイルで、フロントフェイスは小さな「レジェンド」をイメージさせました。
エンジンは、1.5リッター直列4気筒SOHCと、ツインキャブとインジェクションの2種類の1.6リッターSOHCを設定。トランスミッションは5速MTと4速ATが全グレードで選べました。
また、高剛性化したシャシや、外装のフラッシュサーフェス化により、走行時におけるロードノイズや風切り音が抑えられ、快適な乗り心地を実現。
さらに、高品位な塗装や、内装では本革シートが設定され、上級グレードには同クラス初のパワーシートを装備してフルオートエアコンも設定されるなど、まさに装備はレジェンド並といえました。
コンチェルトはヨーロッパの伝統とホンダの技術力を融合し、プレミアムコンパクトカーの先駆け的存在でしたが販売的には成功したとはいえず、1992年に生産を終了。同時にローバーグループとの提携も解消されました。
●ダイハツ「ソニカ」
ロングツーリングに適した軽自動車を具現化した「ソニカ」
2006年に発売されたダイハツ「ソニカ」は、プレミアムな軽スペシャリティカーとして開発されたモデルです。
コンセプトは「爽快ツアラー」で、本来、軽自動車では不得手なロングドライブを快適に走行できることを目指していました。
ボディスタイルは、軽自動車市場ではハイト系ワゴンが主流になりつつあるなか、あえて1470mmという低めの全高によってスタイリッシュな2BOXのフォルムを採用。
ボディ各所に風切り音やロードノイズを低減する技術を取り入れ静粛性を高めていました。
また、低い全高による低重心化とロングホイールベースにより、優れた走行安定性と乗り心地の良い快適な走りを両立しています。
搭載されたエンジンは全グレードとも最高出力64馬力を発揮する660cc直列3気筒DOHCターボで、トランスミッションはCVTが組み合わされ、余裕あるクルージング性能を実現。
さらにキーフリーシステムや花粉除去モード付きのオートエアコン、セキュリティアラームが設定されるなど、軽自動車という枠にとらわれない充実した装備が奢られました。
発売当時、ソニカのコンセプトと内容は高く評価されましたが、市場にはソニカのようなモデルのニーズがなく販売は低迷。
そして2009年に、発売からわずか3年という軽自動車では異例の短期間で生産を終了しました。
※ ※ ※
現在、マツダの主力車種となっているSUVの「CXシリーズ」は、共通のコンセプトのままに車格を分けて成功した稀有な例ではないでしょうか。
こうした考え方はメルセデス・ベンツやBMWが古くから採用しており、廉価なモデルだから安っぽくても良いというクルマづくりはおこなっていません。
ほかにもマツダのブランド戦略では、MT車を積極的にラインナップするなど他社には無いユニークさがありますが、ニッチなところで勝負する優れた戦略なのかもしれません。
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