東京「日本橋」の上にかかる首都高高架がなくなる? 始まった「首都高地下化プロジェクト」とは
くるまのニュース / 2021年8月21日 10時10分
2021年5月に首都高の呉服橋出入口、江戸橋出入口が廃止されました。これは大規模プロジェクトといえる「首都高速道路日本橋区間地下化事業」にともなってのもので、2040年には日本橋の上にかかる首都高の高架が地下トンネル化され、広い空を見上げることが可能になるといいます。あらためてどのような計画なのかまとめてみました。
■首都高でフタをされたような形の現在の日本橋に青空が戻る!?
この夏に開催された「東京2020オリンピック競技大会」に向け、国立競技場建設など、過去数年にわたり都内各地で大規模な建設プロジェクトが進められました。
そしてオリンピックを終えたいま、別の大規模プロジェクトが本格始動しています。それは「首都高速道路日本橋区間地下化事業」です。
日本橋は、江戸幕府を開いた徳川家康が「五街道(東海道・日光街道・中山道・奥州街道・甲州街道)」の起点として定めた地点です。さらに明治政府も1885年に国道の起点と決め、その役割を継承しました。
現在の橋は1911年に竣工した石造りのアーチ橋で、橋柱の「日本橋」の揮毫は江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜によるものです。
しかし東京オリンピックを翌年に控えた1963年、時間のかかる用地買収を避けるため、首都高が日本橋川上空を利用し建設されたことで、以降60年以上にわたり日本橋は首都高にフタをされる形となってしまいます。
今回の首都高速道路日本橋区間地下化事業は、日本橋川のさらに下に延長1.2kmのトンネルを掘り、老朽化が進み更新が必要な首都高の高架部分を移設し、失われていたかつての景観を取り戻すというものです。また周辺の街路整備や再開発など、新たな街作りも同時におこなわれます。
首都高環状線が開通したのは1963年。以来60年以上にわたり日本橋は首都高にフタをされる形となっている
さて、具体的な工事はどのように進められるのでしょうか。
まず最初におこなわれるのが、工事の支障となる地下埋設物および既存の橋脚の一部の撤去です。すでに2021年5月に、橋脚撤去にともない、呉服橋出入口、江戸橋出入口が廃止されています。
続いてトンネルの工事です。トンネルは地上との接続部が開削工法(地上から垂直に地面を掘る工法)で、中央部分はシールド工法(大型の穴掘り機で横に掘り進む工法)を採用します。また既存の橋脚の基礎がトンネルと重なる部分では、別の位置に橋脚を新たに作り、既存の橋脚は橋桁を受け渡した後に撤去し、工事を進めます。
一連のトンネル工事が終了したら、道路を現在の高架からトンネルへ切り替え、その後、高架を撤去して事業は完了となります。
■完成すると道幅も広くなり、さらにクルマの通行方法が変わる予定
では、完成後の道路の状況はどうなるのでしょうか。
2040年には、首都高はこの日本橋川の下に地下化される
現在、この区間は内回り、外回りとも道路幅が7.5mで、それぞれ幅員3.25mの2車線が引かれ、路肩の幅は内側、外側とも0.5mです。
新たに開通するトンネルでは道路幅が1m広い8.5mで、広い路肩を確保することが容易になるため、これまでよりもゆとりをもった走行空間が実現するはずです。
そしてさらに大きく変化するのが、完成後のクルマの通行方法です。
これまでこの区間は都心環状線の一部を形成し、東側の江戸橋JCTで銀座方向に進む本線と6号向島線とが分岐・接続していました。しかし工事完了後、新たな地下ルートは直接6号向島線と連絡することになり、環状線の一部としての役割を終えることとなります。
そして環状方向の交通については、工事区間の西側の神田橋JCTで分岐・接続する八重洲線が担います。
現在も八重洲線西銀座JCTと都心環状線汐留JCTを結ぶKK線(東京高速道路/無料)を使うルートで環状走行ができますが、KK線は構造上大型車の通行に適さないこと、また工事などで対応するには高架下の店舗の長期間の休業が避けられないことなどから、新たな環状ルートとして八重洲線西銀座JCT付近と都心環状線京橋JCT付近を地下のトンネルで接続する「新京橋連結路(地下)」を新設する方向で検討が進められています。
さらにこの新たな連絡路が完成すれば、KK線の役割が大きく変化することから、東京都ではKK線を歩行者中心の公共的空間へと転換し、整備することを目指しています。
では、工事が完成し、日本橋から広い空を見上げることができるのはいつになるのでしょうか。
首都高速道路が2020年10月に発表したスケジュールでは、地下ルートの完成予定を2035年、完成予定(高架橋撤去)を2040年としています。
2040年には首都高は地下化され、日本橋の上空には高架がないようになる
すでに上下水道やケーブル類の収容スペース、ビルの地下や基礎部分などさまざまな利用がなされている都心部の地下を掘ることから、今後も多くの調整が必要であるため、工期の長期化は避けられないところなのでしょう。
そして完成時には、首都高を走るクルマの顔ぶれも、現在とは大きく様変わりしているはずです。これから15年、20年というとずいぶん先のように思えますが、その日を楽しみに待ちたいですね。
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