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なぜ「ジュニアシート」使用で死亡事故起きた? 軽乗用車の助手席で5歳男児が被害にあった背景とは

くるまのニュース / 2021年9月20日 7時30分

母親が運転する軽乗用車の助手席でジュニアシートに座っていた5歳男児が腹部圧迫による内臓損傷により死亡しました。なぜ子供用のイスであるジュニアシートを使用していたのに死亡事故が発生したのでしょうか。

■福岡県で起こった男児死亡事故とは

 2021年8月31日の朝、福岡県田川郡福智町伊方の片側2車線道路で母親が運転する軽乗用車が右折待ちの乗用車に追突、助手席でジュニアシートに座っていた5歳男児が腹部圧迫による内臓損傷により死亡しました。

 事故は直線道路で母親が運転するクルマが追突した状況で、横転や高いところからの転落など激しい衝撃はありませんでした。

 運転者の母親は命に別状はなく、また追突された乗用車のドライバーにも大きなけがはなかったと報道されていますが、ジュニアシートを使用していた男児だけが死亡という痛ましい事故になってしまいました。

 この事故に対して、次のようなコメントが多数寄せられていました。

「やっぱり助手席は危険」
「なぜ? ジュニアシートに座っていたのに死亡?」
「運転していた母親も追突された乗用車のドライバーも命に別状はないのにどういうこと?」
「エアバッグが作動して圧迫されたとしか考えられない」
「5歳で座面だけのジュニアシートはまだ早いのでは?」

 では、実際の事故はどのようなものだったのでしょうか。事故処理を担当した福岡県田川警察署に聞いてみました。

――受傷部位はどちらでしょうか?

 外傷はなく腹部の内出血がありました。腹部が圧迫されたというより、内臓が傷ついて出血したと報告されています。

――エアバッグによる影響は?

 エアバッグは運転席、助手席ともに開いていましたが、男児の顔などにもエアバッグが当たった跡などがないため、エアバッグによる受傷はないと考えられます。

 お子さんの場合、助手席でエアバッグが展開して衝撃を受けると顔などにけがをすることが多いのですがそれもありませんでした。

――使っていたジュニアシートはどのようなタイプでしょうか?

(座面だけで背もたれのない)ブースタータイプのジュニアシートです。

 着座状況やシートスライドの位置などは分かっていません。ブースターシートの銘柄は非公表です。

※ ※ ※

 さらに、男児を救急搬送した田川地区消防本部にも事故後の様子を聞いてみたところ、次の回答がありました。

「救急車が到着したときにはすでに男児は周囲の人々によってクルマから出されて歩道にいました。

 そのときは心肺停止状態ではありませんでしたが、救急車に乗って搬送途中に意識レベルが急激に低下し、事故から2時間後病院にて死亡が確認されました」

 多くの人々が「助手席は危険! 助手席のエアバッグで体を圧迫されたのだろう」というコメントを寄せていましたが、この度の事故ではエアバッグ展開の影響はなく、ジュニアシートの使い方、ベルトの掛け方に問題があったと考えられます。

 今回、取材した田川地区消防本部は、シートベルトの使用方法について、次のように説明しています。

「ジュニアシートの場合、車両シートベルトを使って体を固定します。腰ベルトがお腹に食い込む装着ではなく、腰骨にあたるように座らせてあげてください」

■腰ベルトがお腹に食い込んで内臓破裂となった理由は何?

 ジュニアシート(学童用)について改めて説明しておきます。

 チャイルドシートには乳児用(ベビーシート)、幼児用(チャイルドシート)、学童用(ジュニアシート)の3種類があり、それぞれ子どもの体格によって使い分けます。

 そして、4歳から12歳前後の子どもに向けたジュニアシートにはお尻部分だけの「ブースタータイプ」と背もたれや頭周りのサポートがついている「ハイバックタイプ」の2種類があります。

 いずれも、クルマのシートベルトが安全に使える身長145cmから150cmまで、シートベルトを子どもの体の適正な位置に補正し、シートベルトを正しく機能されることを目的にしています。

 最新の安全基準(ECE R44/04 S11またはECE R129)においては、以下の体格で使うことが義務付けられています。

 ●座面だけのブースター
 身長125cm以上、体重22kg以上 
 ※旧安全基準では「3歳&15kg」から使えると明記されたブースター(ベルト調節タイプ含む)もありますが、確実に子どもを守るため125cm&22kg以上で使って下さい

 ●背もたれが付いたハイバックジュニア
 身長100cm-150cm前後、体重15kg以上

ジュニアシート使用時の事故でもっとも多い受傷部位は腹部(写真提供:GMPインターナショナル)ジュニアシート使用時の事故でもっとも多い受傷部位は腹部(写真提供:GMPインターナショナル)

 また、ジュニアシートは本体と子どもの体を1本のシートベルトで同時に固定して使用します。(ISO-FIXタイプのジュニアシートでは本体を車両シートにISO FIX固定、子どもの体だけをシートベルトで固定)

 今回の事故で亡くなった男児は警察の調べなどによって「座面だけのブースタータイプ」を使用していたことがわかっています。

 詳しい着座状況や助手席シート(スライド)の位置などは不明ですが、本来は腰骨をわたるように装着すべき「腰ベルト」がお腹に掛かっていた可能性が高いとみています。

 メルセデス・ベンツやVWワーゲン、ボルボなど世界のトップメーカーが純正品として採用するブリタックスレーマー輸入元であり、日本で唯一のチャイルドシート専門店「チャイルドシートラボ」を運営するGMPインターナショナル、チャイルドシートアドバイザーの僧都氏に話を聞きました。ブリタックスレーマーのチャイルドシートには子どもの姿勢が崩れても常に安全な位置に腰ベルトをキープする「セキュアガード」が付いた製品があります。

「欧州の研究機関(CASPER(Child Advanced Safety Project)によると、正面衝突時にジュニアシートを使用した状況でもっとも障害リスクが高い部位は頭部(20%)でも、胸・胸椎(17%)でもなく、腹部(31%)であることが示されています。

 骨盤と肋骨の間のちょうど骨が無いところにベルトが食い込むと内臓破裂の可能性がありとても危険です。大人子供に関わらず、正しい位置にベルトが掛かっていないとシートベルトの意味がありません。

 また、車両シートをリクライニング(背もたれを倒した)した状態で乗られる人がいますが、この姿勢で強い衝撃を受けると、シートから体が滑り落ちてフロアに潜り込んでしまう『サブマリン現象』が起こりお腹にベルトが食い込む可能性があるので、走行中はシートリクライニングを起こすことが重要です」

※ ※ ※

 また、筆者が過去に取材した死亡事故では肩ベルトが首や顔にかかる状態で使用して衝突事故に遭い、肩ベルトによって頸動脈が切断された例もあります。

 肩ベルトは首に掛からず、腰ベルトはお腹に掛けないように使うことがとても重要です。

 命を守るために絶大な効果があるシートベルトですが、ベルトを掛ける位置を間違えると凶器にもなることを十分知っておくべきでしょう。

 これは大人でも子どもでも妊婦でも同じで、肩ベルトは鎖骨の間、腰ベルトは両腰骨の間を通すように掛けます。肩・左腰骨・右腰骨の3点で衝撃を受け止めるため、「3点式シートベルト」という呼び名がついています。

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