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トヨタ「水素エンジン車」初試乗! ガソリン車同等の「可能性」を秘めた実力とは

くるまのニュース / 2021年9月20日 8時0分

2021年9月18日・19日に「スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook 第5戦 SUZUKA S耐」が開催されました。現在、水素エンジンを搭載する「カローラ」で参戦していますが、今回は、それとは別に開発を進めているテストカー「GRヤリス」にメディア初試乗した様子を紹介します。

■水素エンジン搭載の「GRヤリス」 その可能性はいかに

 トヨタは、カーボンニュートラルを実現させるために「マルチソリューション」を掲げ、そのひとつとして「水素技術を活用して内燃機関の可能性を探る」という挑戦をおこなっています。
 
 その挑戦として、レースの現場に水素エンジン搭載の「カローラ」を実践投入していますが、スーパー耐久への参戦は3戦目を迎えます。
 
 今回、水素エンジンを搭載するテストカー「GRヤリス」をメディアとして世界初試乗した様子を紹介します。

 今回は、クルマの総合力が問われる三重県の鈴鹿サーキットでの5時間耐久レースになります。

 前回(オートポリス)から約1か月半、エンジニアはアジャイルかつスピーディにアップデートをおこなってきました。

 その結果、鈴鹿に持ち込まれた水素エンジンの実力は、ガソリン車並み(=272ps/370Nm)まで引き上げられたといいます。

 一方で、2021年9月18日、ちょうど予選がスタートした頃に広報スタッフに「(鈴鹿サーキット)交通教育センターに来てくれませんか?」というお声掛けが。

 別室で個別インタビューでもするのだろうと向かうと、そこには2台の「GRヤリス(左ハンドル)」がありました。

 ただ、良く見ると、車高はやや低く、さらにはリアウインドウには黒いパネルが装着と、ノーマルではないのは間違いないのですが、一体これは何物なのでしょうか。

 するとエンジニアが一言、「今回、水素エンジンの試乗をしていただきます」と。実は前回のオートポリスで「乗ってもらうのが一番解りやすい」という話から「どこかのタイミングで乗せてください!!」とお願いをしていましたが、まさかこんなに早いタイミングで実現するとは思わず、こんな所からも今のトヨタのスピード感が解るでしょう。

 この2台のGRヤリスは水素エンジンのテストカーで、このクルマで開発されたアイテムがカローラへと水平展開され実戦投入されています。余談ですが1台はナンバー取得済みで公道走行も可能だそうです。

 まずは見た目の違いをチェックです。エンジンルームはガソリンエンジン(G16E-GTS)と比べて間違い探しレベル。変更されているのは水素エンジン用のインジェクター/プラグ/燃料配管くらいです。

 インテリアはセンターモニターにタンク内圧力は航続距離といった表示の追加。

 さらにカローラのレーシングカーと同じく前席と後席の間にカーボン製の隔壁を装着しており、完全な2シーター仕様(リクライニングの隙間もなし)となっています。

 ノーマルでは後席があった場所に水素タンク(1kg×2)が搭載されおり、サイド/リアウインドウはブラックのパネルに交換されています。

 ちなみに給水素口はガソリン車の燃料給油口と同じ位置に装着されています。

 ちなみにナンバー付車両は外の水素ステーションで給水素をおこなうこともあるそうですが、事前に連絡しておかないと「お客さん、それは燃料違うよ」と断られてしまうことも。

 そんなトヨタの水素エンジンですが、メディア試乗は世界初となります。

 ちなみに筆者はGRヤリスのリアルオーナーですので、ガソリン車との違いをチェックするにはピッタリな人材といえます。

■トヨタの水素エンジン車、世界初試乗の感想は?

 すでにアイドリング状態でしたが、開発中のエンジンとは思えないくらい一定の回転数で安定。ギアを1速に入れて発進。僅かに「カリカリ」とノッキングのような音(実は高速燃焼による音とギアノイズ)がしますが、それ以外はガソリン車と何も変わらず。

 2速にシフトアップして2000rpmくらいからアクセルを踏み込んでいくと、ガソリン車に対して「レスポンスの良さ」、「ターボラグの少なさ」など、むしろガソリン車よりも洗練された印象です。

 ちなみに応答性は鋭くなっているのに、アクセル操作に対する反応はリニアと、何とも狐につまれたような不思議な感覚です。

 回転をさらに上げていくと、ガソリン車だと3000~4000rpm付近で僅かに感じていたトルクの谷間が消え、よりフラットな特性に。さらに回せば回すほど力強さが増していく感覚に加えて、全開時のパワー感もガソリン車とほぼ同じでした。

 ちなみに最高回転は6000rpmに抑えられていましたが、それを超えて回りそうな勢い。さらにこもり音が少なく雑味の少ない乾いたサウンドは、ガソリン車よりも心地よく感じました。

 ちなみに車両重量はガソリン車に対して水素タンク追加などで100kg以上重くなっているはずです。

 出力はガソリン車同等なので絶対的なパフォーマンスは落ちるはずですが、実際に走らせてみてそれほど力不足だと感じなかったのは、水素エンジンの強み。応答性やレスポンスの良さ、そしてよりフラットになった特性などが、そのように感じさせたのでしょう。

 ガソリンエンジンのG16E-GTSはいい意味で野性味を感じさせる武闘派エンジンですが、水素エンジンは力強さやトルク特性はそのままに、まるで高精度エンジンのような洗練されたフィーリングがプラスされているように感じました。個人的にはガソリン車もこのようにアップデートしてほしいくらいです。

見た目はガソリンエンジンに見えるが、実はこれが水素エンジン見た目はガソリンエンジンに見えるが、実はこれが水素エンジン

 正直いうと、乗る前は未知のエンジンらしいラフな特性や未完成な部分があると思っていましたが、実際に乗るとそのような兆候は一切なく、いわれなければガソリンエンジンだと勘違いするほど自然な仕上がりだと感じました。ズバリ「普通って凄いね」と。

「何だ、水素エンジンって結構簡単にできてしまうんですね」と思った人、それは大きな間違いです。

 短期間でここまで仕上がったのは、これまでの技術の積み重ね(直噴技術/インジェクター)とモータースポーツで鍛えることで実践的かつスピーディな開発がおこなえたこと、そして内燃機関の可能性を探り続けるエンジニアの情熱の三位一体によるものです。

 実は試乗後にLEXUS/GAZOO Racingの佐藤プレジデントやエンジニアに素直な印象を伝えましたが、ホッとした表情を浮かべたのと同時に、「まだ誰も満足していませんので、まだまだ進化は続きます」という力強い言葉をもらいました。

 つまり、ガソリンエンジン同等の性能を出すことは「進化の過程」に過ぎず、まだまだ上のレベルを目指すのでしょう。

 といっても、エンジンだけ良ければOKではなく、タンク容量(テストカーの航続距離は50kmくらい)やパッケージの問題など、“クルマとして”の課題はまだまだ山積みです。

 ただ、今のトヨタならばすべて克服すると思っています。そして、そんな時代に、今回の水素エンジン試乗の話をしてみたいものです。「あの時の挑戦が、今に繋がっているんだよ……」と。

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