まだ荒削りながら魅力的なモデルが誕生! 性能的に過渡期だったけどイケてた車3選
くるまのニュース / 2021年9月21日 16時10分
世界的にもクルマの動力性能が一気に向上したのは1980年代です。ターボエンジンやDOHCエンジンの普及が後押ししたかたちで、日本車も例外ではありません。とくに性能向上が著しかったのは1980年代の終わり頃でしたが、その直前にも魅力的なモデルが登場。そこで、性能的には過渡期ながらイケてるクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
■性能的には過渡期ながらも魅力的だったクルマを振り返る
1970年代の終わりに市販乗用車に初めてターボエンジンが搭載されると、動力性能の向上が始まり、1980年代には世界的にも高性能化が一気に加速しました。
また、1980年代の日本においては、排出ガス規制で消えかかっていたDOHCエンジンも復活を遂げ、エンジンやドライブトレイン、車両部品の電子制御化も普及し始めます。
こうした進化の絶頂期は1980年代の終わりから1990年代初頭に迎えますが、その直前にも魅力的なクルマが数多く誕生。
そこで、まだ技術的には荒削りで性能的には過渡期だったものの、かなり秀逸だったモデルを3車種ピックアップして紹介します。
●日産「シルビア」
性能的にもスタイルでも大きな変化を果たした「S12型 シルビア」
日産のスポーツカー「シルビア」が大いに注目され、販売的にも歴代最高の大ヒットを記録したのは、1988年に登場した5代目にあたる「S13型」です。
一方、性能的に一気に向上を果たし、FRスポーツカーとしての基本性能を高めた存在だったのは、4代目の「S12型」でしょう。
1984年にデビューしたS12型は、先代の角型4灯ヘッドライトに対してスポーツカーとしては定番のリトラクタブルライトを採用した、ウェッジシェイプのボディに一新されました。
ボディタイプはクーペとハッチバックが継承され、販売チャネルの異なる兄弟車の「ガゼール」も引き続いてラインナップ。
搭載されたエンジンは新開発の1.8リッター直列4気筒SOHCのNAとターボ、高性能グレードには2リッター4気筒DOHCの「FJ20E型」に加え、ターボを装着した「FJ20ET型」を設定し、最高出力は190馬力(グロス、以下同様)を誇りました。
また、足まわりはフロントにストラット式、リアは先代のリジッドアクスルからセミトレーリングアーム式を採用したシリーズ初の4輪独立懸架となり、スポーツカーとしてのポテンシャル一気に向上。
その後、エンジンはFJ型が廃止となり、高性能モデルでは1.8リッターDOHCの「CA18DET型」へとスイッチしました。
S12型はヒット作になったとはいえませんが、エンジンラインナップや足まわりの進化など、S13型誕生への技術的な布石になったモデルです。
●スバル「アルシオーネ」
車体のデザインや技術的にはかなりの意欲作だった「アルシオーネ」
昭和の時代のスバル車というと、セダンとステーションワゴンをメインとした「レオーネ」が主力車種でしたが、1985年に同社初の本格的なスペシャリティカーである「アルシオーネ」が登場しました。
アルシオーネは、スタイリッシュな2ドアクーペの世界戦略車として開発され、外観は直線基調のシャープなウェッジシェイプのフォルムに、スバル車としては最初で最後となるリトラクタブルヘッドライトを採用していたのが特徴です。
また、アルシオーネは空力性能を重視した設計で、空気抵抗係数であるCd値は0.29と、日本車で初めて0.3を下回る数値を達成。
リトラクタブルヘッドライトは、この空気抵抗低減の手法のひとつであり、ほかにもフラッシュサーフェイス化された各ウインドウの接合箇所とドアノブ、空気の乱流を抑えるドアミラー形状、後端をわずかに跳ね上げたダックテール状のトランクリッドなどが採用されています。
パワートレインとドライブトレインはレオーネをベースに、駆動方式はFFとAWDが設定され、エンジンは当初1.8リッター水平対向4気筒SOHCターボのみでしたが、1987年には同社初の2.7リッター水平対向SOHC6気筒自然吸気エンジン車「アルシオーネ2.7VX」を追加ラインナップ。
同時に駆動方式もフルタイムAWDが設定され、オンロードでの4WDの有効性が重視されました。
ほかにも車速感応式パワーステアリングやエアサスペンション(グレード別に設定)が採用されるなど、アルシオーネはメカニズム的にも新技術が取り入れられた意欲作といえます。
1991年には「アルシオーネSVX」へバトンタッチされますが、アルシオーネで培った技術はさらに磨かれて、すべてが新しくなって1989年に誕生した初代「レガシィ」に受け継がれました。
●三菱「ギャランΣ」
FF化という大きな転機とともに一気に高性能化も果たした「ギャランΣ」
かつて三菱のミドルクラスセダンで主力だったのが「ギャラン」シリーズですが、大きな転機を迎えたのが1983年に登場した5代目の「ギャランΣ(シグマ)」です。
最大の変化は駆動方式で、4代目までのFRからFFへ変更。FF化の恩恵として室内の広さ、とくに後席スペースの拡大から居住性は大幅に向上しました。
また、ボディサイズはほぼ変わっていませんが、デザインを一新してより伸びやかでスタイリッシュなフォルムとなり、ロー&ワイドなスタンスが強調されてエレガントかつスポーティセダンといった印象です。
1984年にはよりラグジュアリー色を強めた4ドアハードトップの「ギャランΣ ハードトップ」が追加ラインナップされました。
搭載されたエンジンは1.8リッターと2リッターの直列4気筒で、トップグレードには「スタリオン GSR-V」にも搭載された2リッター直列4気筒SOHCターボの「シリウスダッシュ 3×2」を設定。
このシリウスダッシュ 3×2エンジンは吸気バルブに可変バルブ気筒が採用され、低回転域のトルクを犠牲にすることなく高出力を発揮。当時、クラストップに迫る最高出力200馬力を誇り、高性能FF車の先駆けとなりまいた。
さらに、サスペンション、パワーステアリング(EPS)、AT、アンチロックブレーキなど、高度な電子制御化も達成しています。
そして、1987年には6代目ギャランが登場し、より高性能化と高いスタビリティを誇った4WDの「VR-4」が誕生。後の「ランサーエボリューション」シリーズへの礎となりました。
※ ※ ※
1979年に、日産が国産乗用車初のターボエンジンを「430型 セドリック/グロリア」に搭載しました。2リッター直列6気筒SOHCターボの「L20ET型」で、最高出力は145馬力を発揮。
この値はグロスですから、現在のネットに換算すると130馬力程度だったと考えられます。
一方、同じ2リッターターボエンジンを搭載し、2017年にデビューしたホンダ「FK8型 シビックタイプR」では320馬力を発揮し、L20ET型の2.5倍ほどです。
これほどの出力向上は技術の進化そのものといえますが、排出ガス規制の強化やドライバビリティの向上も考慮すると、38年間の進化がいかに凄まじいことか、理解できるのではないでしょうか。
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