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ロールス・ロイスのBEV「スペクター」誕生! 400年分の250万キロ極限走行テストとは

くるまのニュース / 2021年9月30日 19時10分

ロールス・ロイスから、ついに市販BEVに関するアナウンスが発表されました。その名も「スペクター」と名付けられた、真にラグジュアリーなBEVが生まれてきた背景をレポートします。

■ついに登場!? ロールス・ロイス初のEVの名は「スペクター」

 自動車用パワーユニットの電動化への対処が否応なしに進められている現在においては、世界最高級車ブランドであるロールス・ロイスとて、例外とはなりえないようだ。

 2021年9月29日の英国夏時間午後1時(日本時間の同日午後9時)、ロールス・ロイス・モーター・カーズ社は、トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOが自らプレゼンテーションをおこなう動画を世界に向けて公開。そのなかで、正式な市販モデルとなることが決定しているBEV「スペクター(Spectre)」のテスト車両を発表した。

 スーパーカーやハイパーカーの分野では、すでに数多くのEVが現れているかたわらで、超高級プレステージカーの世界では盟主として君臨するロールス・ロイスがいかなるEV戦略を構築するのか。今回は、その第一報をお届けしよう。

●試作車ではなく、シリーズ生産を想定した完成車

 ロールス・ロイスはかねてから、2020年から2030年までの10年間のうちにオール・エレクトリック(完全電動)の車両を導入すること、その自動車はハイブリッド車ではなく、純粋な(バッテリー駆動の電気自動車=ピュアEV)になる予定であること、そして時期が来て、技術面、審美面、性能面のあらゆる要素がロールス・ロイスの基準を満たしたときにのみ発売することを言明していた。

 ロールス・ロイス・モーターカーズ社のCEO、トルステン・ミュラー-エトヴェシュ氏は、今回のスペクターを発表するプレスリリースで、以下のように切り出した。

「本日は、1904年5月4日以来、ロールス・ロイス・モーター・カーズにとってもっとも重要な日となります。かつてのこの日は、当社の創業者であるチャールズ・ロールスとヘンリー・ロイス卿が初めて出会い、『世界最高のクルマ』を作ることに合意した日でした。

 このふたりの先駆者は、当時、卓越した技術者として最先端技術を駆使し、交通手段としてまだ発展途上にあり、騒音や不快感を伴っていた初期の内燃機関搭載の自動車を、まったく新しい、それまでとは異なる基準を設定してその性能を引き上げました。

 彼らが作り上げた自動車は、世界中に真のラグジュアリーたる体験を提供し、ロールス・ロイスに究極の頂点という地位をもたらしました。ロールス・ロイスはその後1世紀以上にわたり、最高峰の内燃式エンジンを定義し続けています。

 それから117年を経た今日(こんにち)、ロールス・ロイスは世界的な電気自動車への変革をあと押しするために、この種の製品としては初めての、もっとも洗練された超高級車を生み出しました。この優れた新製品の公道走行試験プログラム開始をお伝えできることを誇りに思います。このクルマは試作車ではなく、完成車です。このクルマを丸裸になるまでテストし、2023年の第4四半期にはお客様に最初の車両をお届けする予定です」

 ご記憶の方も多いかと思われるが、2011年にロールス・ロイスは「102EX」のコードネームでも知られる試作車「ファントム・エクスペリメンタル・エレクトリック(ファントムEE)」を発表している。この試作車は当時のR-R最上級モデル「ファントムVII」をベースとするもので、完全に運行可能で公道走行もできるバッテリー駆動の電気自動車(BEV)だった。

 また2016年には、BMWグループ全体で自動車の100年後を予測した「ヴィジョン・ネクスト100」のために、完全自動走行を想定した試作車「103EX」を開発・発表した。このコンセプトカーは、ラグジュアリー・モビリティに対するロールス・ロイスの長期的ビジョンを明確化したものだが、もちろんこちらも電動パワーユニットを想定していた。

 そしてこのほど、カムフラージュを施された状態で初公開された「スペクター」は、「ファントムEE」のようなロールス・ロイスEVの可能性を実験する試作車ではなく、「103EX」のごとく遠い未来のR-R像を想起させるコンセプトカーでもない。

 あくまで、ごく近い将来に生産モデルとして正式デリバリーされるクルマの走行テスト車両というのだ。

■2023年第4四半期の正式デビューを目指し、これから400年分のテストを敢行予定

 ロールス・ロイスのひとつ目の「R」、チャールズ・ロールス卿は1900年4月に「コロンビア」と名付けられた初期の電気自動車を体験し、電気駆動こそが理想であると公言していたという。

 加えてもう一人の「R」、ヘンリー・ロイスも、自動車の電動化には浅からぬゆかりがあった。もともと電気工学のエンジニアとして、19世紀末には自身の興した電気設備メーカー「F.H.ロイス」社を成功させていた彼は、自動車の原動機としてガソリンエンジンが定着する以前、複数が勃興していた電動車メーカーのひとつに、モーターを供給していたこともあったと伝えられている。

2021年9月29日の英国夏時間午後1時、ロールス・ロイス・モーター・カーズ社は、トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOが自ら「スペクター」のプレゼンテーションをおこなう動画を公開(C)ROLLS-ROYCE MOTOR CARS2021年9月29日の英国夏時間午後1時、ロールス・ロイス・モーター・カーズ社は、トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOが自ら「スペクター」のプレゼンテーションをおこなう動画を公開(C)ROLLS-ROYCE MOTOR CARS

 その後ロイスは、病気療養のため一時的に休業した際に、自ら理想の自動車を作ろうと決意。自身の得意分野である電気工学を生かした電気自動車の可能性も模索したといわれているが、当時はバッテリーの性能が現代とは比べようもないほどに低く、また充電体制も整っていなかったことから時期尚早と判断。航続距離などで明らかに優れていたガソリン自動車に焦点を絞り、現在に至るロールス・ロイスの技術的フィロソフィを構築した。

 また、ロールスとロイスの間を結ぶ「ハイフン」と呼ばれたクロード・ジョンソンや、ロイスの片腕としてながらくR-R社の経営実務を担当したアーネスト・クレアモントも、電気自動車の可能性には一定の理解を示すなど、創成期のロールス・ロイスを支えたレジェンドたちは先見の明をもってEVの未来を予期していたことになる。

 トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOは、スペクターのプロトタイプ発表に先立つこと数日前のプレスリリース内で、以下のように語っていた。

「この画期的な試みのなか、わたしたちは業界でも例のないほど優れた遺産を受け継いでいます。ロールス・ロイスの創業者や創成期にともに働いた人々は、電気の力に関する重要な先駆者であると同時に、その時代の自動車工学における第一人者でもありました。

 ロールス・ロイスの新たな電動化の未来の到来を告げるにあたり、これまで一度も語られることのなかった先駆者たちの感動的な物語を共有し、当社が操業を始めた時代に新鮮かつ魅力的な光を当てることができることを、わたくしは誇りに思い、また謙虚に受け止めたいと思います」

●キーワードは、「浮遊感」

 ロールス・ロイス スペクターの開発はこれまで秘密裏に、そして迅速に進められてきたが、そのプロセスを可能とするテクノロジーはすでに実用化されていた。2017年に登場した現行「ファントム」で初採用され、そののち「カリナン」や2代目「ゴースト」でも採用されたロールス・ロイス独自のアルミニウム・アーキテクチャー「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」である。

 このアーキテクチャーは、もとより拡張性と柔軟性を持たせたスペースフレーム構造で、ファントム以降に発売されるすべてのロールス・ロイスに適用可能とされる。そしてこの独自のテクノロジーは、ロールス・ロイスによってロールス・ロイスのために開発されたもので、ロールス・ロイスだけが使用できるとのこと。

 そして、現在のカリナンやゴーストのような内燃機関搭載モデルだけでなく、まったく異なるパワートレインを搭載したモデルのベースとしても使えるように開発されていたのである。

 一方、今回のリリースでは、バッテリーやモーターなどの電動システムの内容、あるいはスペックについての解説はなされてはいなかったのだが、その代わりに以下のような一説があった。

「ロールス・ロイス・モーター・カーズにとって電気駆動は、唯一かつ完璧な手段となります。それはほかのどの自動車ブランドよりも明らかです。静かで、洗練されており、ほとんど瞬時に最大トルクを発生させ、その後も途方もないパワーを生み続けます。これをロールス・ロイスでは『ワフタビリティ(浮遊感)』と呼んでいます」

 それは、かつてのロールス・ロイスの出力表示にまつわる伝統「必要にして充分」の現代版とも受けとれるだろう。

 そして、2023年第4四半期という正式発売を目指した走行テストについて、トルステン・ミュラー-エトヴェシュCEOは、以下のようなコメントを発している。

「当社のパワートレイン・テクノロジーを根本的に変えるためには、世界でもっとも厳しい目を持つお客さま、すなわちロールス・ロイスのお客さまに提供するに先立って、製品のあらゆる側面の能力を試す必要があります。

 そのために、わたしたちはロールス・ロイスの歴史上でもっとも厳しいテスト・プログラムを用意しました。わたしたちは250万kmもの距離を走行する予定です。この距離は、ロールス・ロイスを400年以上使用することを想定した数値であり、世界のあらゆる場所におもむき、この新しいクルマを極限まで追い込みます。

 世界中の道路で、試験に臨むこれらの車両が、まさに丸裸にされているところを目にすることになるでしょう。数百万kmにもおよぶ旅のあいだ、あらゆる状況、あらゆる地形でテストがおこなわれ、文字どおりロールス・ロイスを未来へと加速させていくのです」

* * *

「The Best Car in the World」の称号を自他ともに認めてきたロールス・ロイスは、来るべき電動化時代を見据えて、2030年までにすべての製品を完全に電動化するという目標を、今回初めて表明したことになる。

 そして、その第一弾となるスペクターがこれからどんな仕上がりをみせるかは、世界最高級車ブランドの行く末をも占うのは間違いのないところであろう。

 VAGUEでは今後のロールス・ロイスとスペクターの動静に、注視してゆきたい。

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