マツダが2桁車名の「CXシリーズ」を大幅拡充! 日本は「60・80」導入へ! SUV強化の狙いとは
くるまのニュース / 2021年10月11日 14時10分
マツダは2021年10月7日、同社のSUV「CXシリーズ」のラインナップをグローバルで拡大すると発表しました。今後、日本へは「CX-60」と「CX-80」が導入されることになりますが、どのような狙いがあるのでしょうか。
■日本では「CX-60」と「CX-80」を新規導入へ
マツダは2022年以降、クロスオーバーSUVを一気に拡大すると2021年10月7日に発表しました。
「CX-50」「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」と、新作のCXシリーズが目白押しです。
発表によると、CX-50は北米市場を意識したモデルで、トヨタと共同でアラバマ州ハンツビルに建設した新工場での生産に集約します。
日本国内では、2列シートのCX-60と3列シートのCX-80を、またアメリカ向けではミドルサイズSUVクラス向けとして、ワイドボディの2列シートのCX-70と3列シートのCX-90を導入します。
一方で既存の「CX-5」については、「今後も継続的な商品改良を続ける」としてモデル存続が確定しました。
多くの自動車メディアは「CX-5を生産中止してCX-50としてモデル刷新する」と予想していましたが、マツダの新しい商品戦略はそれを覆す、大胆なCXシリーズ拡大シフトだといえます。
マツダの商品戦略を整理すると、2019年以降に導入したマルチソル―ションアーキテクシャーと呼ぶ骨格では、FF(前輪駆動車)の中小型車を「スモール商品群」とし、2022年以降に市場導入が始まるFR(後輪駆動車)の中型車以上を「ラージ商品群」として位置付けています。
今回の発表では、CX-50をスモール商品群としており、CX-30の基本骨格を継承して、北米市場で拡大傾向が続くコンパクトSUVのモデル拡充することがわかります。
また、製造拠点をアメリカとすることで、日本からの輸出コストの低減と販売店に対する納期短縮を実現する狙いがあると思われます。
一方で、日本市場では、トヨタが「ランドクルーザー」「ランドクルーザープラド」「RAV4」「ハリアー」「C-HR」「カローラクロス」「ヤリスクロス」「ライズ」といったSUVフルラインナップ体制を強化。
また今後は、日産「エクストレイル e-POWER」と三菱「アウトランダーPHEV」の登場により、SUVやクロスオーバー市場は激戦の様相を呈してきます。
そうしたなかでマツダとしては、2019年以前に商品設定した「CX-3」「CX-5」「CX-8」の商品改良を進めながら、国内ではCX-60とCX-80を導入するというフルラインナップ戦略に出ることになったのです。
さらに、EVとロータリーエンジンを発電機として使うマルチ電動化技術を搭載したモデルでは「MX-30」が継続します。
とはいえ、モデル名称の「CXひと桁」と「CXふた桁」が混在することが、ユーザーにとって商品の差別化がわかりづらい印象も否めません。
そのため、マツダは販売店を通じて、ユーザーに対して丁寧に商品説明をする必要があると感じます。
■なぜここまで一気にCXシリーズを強化するのか?
CXシリーズ大幅拡大の理由については、前述したように、マツダが事業拡大を狙う北米市場での対応、さらに日本を含めて中国や欧州でもセダンからのSUVシフトが顕著になっているなかで、それぞれの市場要望にベストマッチするモデルを仕立てる必要があるからです。
これは、ボディサイズやボディデザインのみならず、当然ながらパワートレインについても必然です。
マツダ欧州法人がSNSで公開した新型「CX-60」(画像:マツダの欧州公式ツイッターより)
欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が事実上、「2035年までに欧州域内で新車100%をEVまたはFCV化」を決めており、欧州ではメルセデス・ベンツを筆頭に急激なEVシフトが始まっています。
また、中国やアメリカ、そして日本でも、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車を含めた電動化に向けた政策が本格的に動き出している段階です。
そうした状況のなか、マツダの丸本明社長は決算報告などの場面において、「電動化については、国や地域の社会情勢や社会状況に応じて適宜対応する」という基本姿勢を貫いてきました。
そのためパワートレインは、スモール商品群でガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」、ディーゼルエンジンの「SKYACITV-D」、マツダ独自技術の次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」、さらにマイルドハイブリッドの「e-SKYACTIV G」を横置きFFとして設定。
また、ラージ商品群では、欧州では直列4気筒のプラグインハイブリッド車のほか、SKYACTIV-XとSKYACITV-Dを直接6気筒化して48Vマイルドハイブリッドとすることで、欧州の電動化シフトに向けた第一弾として対応します。
アメリカでは、直列6気筒ターボとプラグインハイブリッド車、そして日本では直列6気筒のSKYACTIV-Dの48Vマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッド車を設定します。
まさに、丸本社長がいうように「適材適所」でのモデルとエンジンの組み合わせです。
とくにエンジンについては、マツダと同程度の販売台数や売上げがあるほかのメーカーと比べると、新規設定のエンジンの種類がかなり多い印象があります。
SKYACITVの生みの親で、現在はシニアイノベーションフェローの人見光夫氏もそうした認識があり、そのうえでマツダが提唱してきたMBD(モデルベース開発)が多様な車種とエンジン・モーター開発に必要不可欠であるとの考えを示しています。
そもそも、マツダは限られた生産設備のなかで多様なモデルを作り分けるモデルの混流を、製造ラインでのさまざまな“からくり”を用いて実現してきた実績があります。
一方で、バブル期には多チャンネル化での多ブランド・多モデル化を推し進めたことが、後にマツダ地獄とも称されるリセールバリュー(下取り価格)の低下を引き起こしました。
今回発表された、CXシリーズの大幅拡大は、過去の経験を踏またうえで、マツダがいま直面している“100年に一度の自動車大変革期”を生き抜くためのベストソリューションなのだと思います。
そのうえで繰り返しますが、マツダとマツダ販売店は、国内でのCXシリーズ新転換についてユーザー対して丁寧な説明が必要だと感じます。
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