なぜ警察は取締りに消極的? 無法地帯の「電動キックボード」 警察が違反見逃す理由とは
くるまのニュース / 2021年10月15日 9時10分
電動キックボードを街中で見る機会が増えていますが、それに伴い道路交通法を無視した走行も増えているようです。そうしたなかで、目の前で違反行為を見過ごす警察も存在するといいますが、なぜ電動キックボードの違反行為の取締りに消極的なのでしょうか。
■警視庁初? 都内の交通情報板に電動キックボード登場!
2021年9月下旬、東京都内の警視庁が管理する交通情報板に初めて電動キックボード利用者に向けた注意喚起がおこなわれました。
掲示された文言は「電動キックボードは車道を通行」、「電動キックボードは免許が必要」という2種類です。
2021年に入ってから、渋谷区、港区、目黒区などでナンバーなし、歩道走行、ヘルメットなし、40km/h以上の猛スピードで逆走などの違法電動キックボードを見かける機会が増えました。ナンバープレートがついた正しい車体を正しく乗るのを探すほうが難しい状態です。
では、電動キックボードに関わる規則とはどのようなものなのでしょうか。
定格出力0.6KW以下の電動キックボードは、原付(一種)と同様の扱いになります(カッコ内は特定地域でヘルメットを着用せずに公道を走行できるなどの実証実験に参加している認可シェア事業者の特例電動キックボード)。
・原付以上の免許が必要 (小型特殊免許が必要 原付だけの免許はNG)
・ヘルメット着用(ヘルメット任意)
・時速30km以下(時速15km以下)
・ナンバープレート、自賠責保険への加入、軽自動車税が義務(同)
・車体に乗ったままで歩道や横断歩道の走行禁止(同)
警視庁によると都内における電動キックボードが絡む事故は2020年(7月から12月)はわずか2件でした。
2021年に入ってから急増し同年9月末までに45件(人身事故12件、物損事故33件)の事故が発生しているとのことです。
しかし、違反も事故も急増するなか、警察は電動キックボードに起因する重大な事故がない限り、違法車体、違法走行に対する取り締まりに消極的のようです。
警察官の目の前をヘルメットもナンバーもない電動キックボードが走っていても、注意もしないし追いかけもしない。見て見ぬふりの警察官が少なくありません。
その理由は何なのでしょうか。違法電動キックボードが多数走っている、渋谷区や港区内の警察署や現場の警察官に聞いてみました。
●電動キックボードの取り締まりを積極的におこなわない理由(⇒は筆者の補足)
1.実証実験参加のシェア電動キックボード利用者は特例としてヘルメットが任意だが、ヘルメット無しの車体を見ても特例なのかそれ以外か分りづらい。
⇒これは、都内の認可事業者はLUUPのみ。グリーンのステッカーは比較的見分けやすいがいずれも遠目では難しいといえる。
2.海外製の電動キックボードは定格出力が分かりづらい(ナンバーもついていない)ので、取締りがしにくい。
⇒定格出力で区別する以前に、そもそもナンバーがないことが違法だといえる。
3.追いかけようと思っても速くて自転車では追いつけない
⇒違法電動キックボードはパワーもあり40km/h-60km/h以上出るものも存在する。
4.いきなり取締りをするのではなく正しい乗り方を普及させることが重要。新しい乗り物だから「今は取締りより指導」だと考えている。
⇒警察庁交通局は2002年11月に「いわゆる『電動キックボード』及び『電動スクーター』について」という題名で原付と同じ扱いになることなどを公表している。増えてきたのは最近だが「新しい乗り物」だから取締りをしないというのは疑問。
■「公道=車道」と思っているユーザーもいる?
電動キックボードは、さまざまな種類があり通販や量販店などでも手軽に入手できます。
「公道走行可能」として保安部品を取り付けた正しい車体も数多く販売されている一方で、ナンバープレートや免許、自賠責保険などの義務が周知されていない5万円以下の安価で公道走行不可な車体も数多く販売されています。また、「公道」の意味を正しく理解していないオーナーも少なからず存在するといいます。
違法車体の注意書きには申し訳程度に「公道での走行はできません」と記されているケースもありますが、事実として「公道」の意味を正しく理解していないユーザーも少なからず存在するといいます。
理解していないという部分に関して、電動キックボードも扱う自転車販売店の店主は次のように話しています。
「公道=車道だと思っている人が意外に多いですね。
つまり、『歩道は公道じゃないからナンバーがない電動キックボードを走らせてもいい。ナンバーがないから歩道しか走れないし、歩道を走るのに免許は不要』という勝手で危険な解釈をしているようです」
また、ナンバーのない違法車体で歩道を走行している際、警察官に注意された経験を持つ20代の女性もカン違いをしていた1人で、その女性は次のように話しています。
「免許は持っていませんがナンバーのない電動キックボードで歩道を走るなら問題ないと思っていました。自転車と同じ感覚でした。公道を走れないとは書いてありましたがその意味がよく分かっていませんでした」
少なくとも自動車や原付の免許を持っていればさすがにこんな思い込みはしないと思いますが、原付免許すら持たない人にとっては、公道の意味を勘違いしているケースもあるのかもしれません。
警視庁の電光掲示板では電動キックボードユーザーに対する呼びかけがおこなわれている(撮影:加藤博人)
10月12日に警視庁は実証実験に参画する認可シェア事業者株式会社Luupに対して事故防止策の強化を求めました。Luupの車体は保安基準に適合したもので、特例でヘルメットの着用は任意、免許は小型特殊が必要とされています。
しかしこのような手続きを経てシェア利用が許可された場合でも、実際は横断歩道を乗ったまま走行したり、歩道を2台並んで走行したりという光景は日常的に見られます。
ナンバープレートを折り返したままの走行や、3車線の中央車線を走行(一番左側を走行するのが決まり)するなど数多くの違反が報告されています。
Luupではこのような違反行為に対して以下の対応をおこなっています。
「映像を添えた通報など合理的な理由に基づき違反行為に該当すると判断された場合は、電動キックボードの実証実験に関するアカウントの停止措置を取らせていただく可能性がございます。道路交通法違反と疑われる行為が報告された場合は、当社から警察に届け出る場合がございます」
※ ※ ※
全体から見れば特例シェア電動キックボードはわずかな台数で、違法行為をおこなうほとんどは個人所有の電動キックボードです。
警察は違法行為に対する正しい知識を持って道路運送車両法や道路交通法に反する走行や車体を見逃すことなく、指導と取締りを同時にきっちりお願いしたいものです。
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