【運転注意!】トンネルでは事故が発生しやすい? 様々な要因が重なる「不思議な現象」とは
くるまのニュース / 2021年10月20日 9時10分
トンネルでは事故が起きやすいというイメージを持つ人もいるかもしれません。果たして本当にトンネルでは事故が発生しやすいのでしょうか。
■トンネルでは事故が起きやすい!?
全国に点在するトンネル。一般道路から高速道路、山間部や都市部などさまざまな場所に設けられています。
最近ではトンネルで事故が起きるというニュースを見かけることもありますが、トンネルは通常の道路と比べて事故が多いのでしょうか。
トンネルの定義は「2地点間の交通と物資の輸送あるいは貯留などを目的とし、建設される地下の空間」を指し、一般社団法人日本トンネル技術協会では、広い意味には立杭、斜杭、地下発電所などの人工空間も含むとされています。
国土交通省の「道路統計年報2019 トンネルの現況」の資料によると、高速道路のトンネルは全国で1107件あると公表されています。
通常の道路に比べると、トンネルは暗いことから、走行しにくいと感じている人もいるかもしれません。
最近では、2021年8月21日未明首都高速都心環状線C1外回りの霞が関トンネル内で10台以上のクルマが絡む多重事故が発生し、ネット上で話題となっていました。
この事故では、クルマのほか、数台のオートバイ、トラックも巻き込む大規模な事故となり、復旧に多くの時間を要したため、一時的に霞が関トンネルが封鎖されたほどです。
では、トンネルのほうが通常の道路より事故が多いという事実はあるのでしょうか。
首都高速道路株式会社(首都高)の広報担当者は以下のように話します。
「トンネル内の事故が、明かり部の事故よりも多く発生するという認識はありません。
これまでの分析などにより、事故発生の要因は、主に交通状況と道路構造(分合流、急カーブなど)に分類されます」
また、トンネル内での事故について、前出の担当者は以下のように話します。
「首都高のホームページでは事故多発地点マップを掲載しており、このマップに掲載されているトンネル区間の事故多発箇所はいずれも渋滞多発箇所(主に追突多発)、分合流区間(主に車両接触多発)、急カーブ区間(主に施設接触多発)に分類できます。これは、明かり部でも同様の傾向です」
首都高の担当者の話にもあるように、トンネルの区間だからといって特別事故が多いというわけではなく、交通状況や道路構造によって事故が発生するということが分かりました。
一方で、トンネルは渋滞の要因のひとつとされており、NEXCO西日本では交通集中による渋滞が発生しやすいポイントのなかで、トンネル入り口部を要因のひとつに挙げています。
これは、トンネルにさしかかった際にトンネルの入り口部の暗がりや圧迫感により、気づかないうちに速度が低下してしまうクルマがいて、車間距離が縮まることから後続のクルマがブレーキを踏み渋滞に繋がるとされています。トンネル入り口部での渋滞は、交通渋滞の約20%を占めているようです。
また、広島県警察のホームページではトンネルでの運転について、「トンネルのなかは必ずしも平坦ではなく、数パーセントの上り勾配トンネルもあり、こうした場所は知らずしらずのうちに速度が落ちて、自然渋滞になることがあります。また、トンネル内では幾度となく多重事故が発生しています」と説明しています。
このように、トンネル自体で事故が起きやすいとはいわれていないものの、トンネルが通常の路面に比べて薄暗く、急カーブや気づかないうちに上り坂になっているトンネルもあるため、渋滞が起こりやすい場所であることが分かります。
そのため、トンネルに差し掛かる部分やトンネル内では車間距離を十分にとることが必要といえます。
■トンネルで起こる不思議な現象が色々とスゴかった
JAFのホームページでは「とんねるで起こる不思議な現象とは?」という内容を掲載しています。
これは、前述のトンネル入り口部でのクルマのスピード低下のほかにもさまざまなトンネルでの現象について触れられています。
例えば、暗い場所での走行中に自分のクルマと対向車のヘッドライトの光との間にいる歩行者の姿が見えなくなってしまう「蒸発現象」は、とくに路面の濡れている雨の日だとライトの光の乱反射により、余計に起こりやすくなるため、注意を呼びかけています。
トンネルを出た瞬間に太陽の明るい光に照らされた前方の白色系のクルマが見えにくくなってしまうのも蒸発現象のひとつです。
また、JAFはトンネル入口付近では黒色系のクルマが周囲の暗さに同化してしまう「溶け込み現象」や、山間部のトンネル出口付近では夕暮れ時の強く差し込む太陽光で視界が悪化する「逆光現象」が起きる可能性を指摘しています。
どの現象も前方のクルマが見えづらくなり、最悪の場合、追突事故を引き起こしてしまう可能性もあるといえるでしょう。
このようなトンネル入口・出口付近の急激な明るさの変化が引き起こす現象による追突事故の対策として、JAFはトンネルを出た後もテールランプをしばらく点灯しておくこと、車間距離を十分にとることなどを呼びかけています。
都市部で見かけるアンダーパスや高架下でも、トンネルと同様な現象が起こる可能性も
これらの現象以外にトンネルで事故を誘発しうる現象としてJAFが危惧するのが、左右車線のクルマがほぼ同時にトンネルに入った時に起こる「視覚吸引効果」です。
これは同時にトンネルに入った2台のクルマが互いに内壁との接触を避けるために調整して運転した結果、互いに相手が急に幅寄せをしてきたように感じ、そのまま注視した結果、両者が余計に近づいてしまう現象であり、接触事故を引き起こす危険性があるといわれています。
JAFが提唱する対策としては、トンネルに入る際に併走を避けること、視界の前方にある白線に意識を向けることなどが挙げられます。
また、JAFによるとトンネル内では周囲の景色が流れていく「流体刺激」が弱まるため、しばらく同じ速度で走っていると、まるで自分のクルマと前のクルマとが止まっているような錯覚に陥る「追従静止視界」と呼ばれる現象にも注意が必要であるということです。
※ ※ ※
トンネルという場所に限って事故が多いというわけではありませんが、トンネルの入り口では速度が遅くなったりと、ドライバーによる無意識的な行動から渋滞に発生する可能性や、最悪の場合事故が起きてしまうという状況も考えられます。
トンネル付近では、いつも以上に気を引き締めて安全運転を心がける必要があります。
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