なぜ猫はエンジンルームに入り込む? 乗車前にしておきたい「猫バンバン」ってナニ?
くるまのニュース / 2021年10月24日 9時30分
外気温が下がると、暖かい場所を好む猫がクルマのエンジンルームに入り込むことがあります。なぜ猫はクルマに隠れることがあるでしょうか。猫の習性や対処法など獣医師に聞いてみました。
■人目を避けたい野良猫にとってクルマ周辺は絶好の隠れ場所
秋から冬にかけて気温が下がってくると、駐車場にとめているクルマの周囲に猫が集まってくることがあります。
暖かさを求めて、ボンネットの上や車両の下、エンジンルーム内にまで侵入してくる猫もいたりしますが、クルマのボディに引っ掻き傷がついたり、糞尿被害にあったり、クルマの所有者にとっては頭の痛いトラブルのひとつでしょう。
なぜ猫はクルマ周辺に寄ってくるのでしょうか。
昨今は「猫ブーム」といえる状況となっており、猫を飼う人が増えています。
一方、昔はいたる所で見かけた「野良猫」は、ボランティアやNPO団体の尽力によって給餌活動だけでなく避妊去勢手術を受けさせたりすることで減少傾向だといいます。
ただし、自分の縄張りを自由に往来する野良猫に関してはかなり以前から問題視されており、東京都の福祉保健局の調べによると、アンケートの回答者の約63.5%が「野良猫に対して迷惑に感じたことがある」と回答しています。
とくに、駐車しているクルマ周辺には猫が寄ってくる傾向があり、実際エンジンルームに侵入した猫に気づかずエンジンを始動させてしまいJAFに出動要請したり、ディーラーや整備工場に持ち込まれるトラブルが少なからずあるのだそうです。
猫がクルマの下やエンジンルームに潜り込む理由について、都内で動物病院を開業している獣医のE先生に話を聞いてみました。
「猫はもともと単独で狩りをする生き物で、独立心が強く他者に合わせる社会性はあまり持っていません。また、本能的に自分の身を守るために狭い場所や薄暗い場所などを好む傾向があります。
なかでも野良猫は自由に生きているので警戒心も強く、駐車場に停まっているクルマは、そんな猫にとっては絶好の隠れ場所となります。
クルマの下やエンジンルームなどは人目につかず、雨風もしのげるのですから、自分だけのセーフティゾーンと認識してしまうのです。
そうなると、追い払ってもまたすぐ戻ってくるなど、なかなか出ていってくれないということもよくあります」
ちなみに猫は「薄明暮性(はくめいぼせい)」と呼ばれる活動様式。これは夜行性でもなく昼行性でもなく、明け方や夕方に活動が活発化する性質を持っているのだそうです。
「猫は体温調整が苦手といわれています。体温はだいたい38.0度ほどで人間以上に温度差を感じやすく、とくに屋外の夜などはグッと気温も下がるので、野良猫にとって暖かい場所を探すことは死活問題です。
そのため冬はエンジン熱で暖かくなったクルマの下やエンジンルームに入り込んでしまうのです」(獣医師 E先生)
ただし、この行動は冬に限った話ではなく、猫がクルマの下やエンジンルームなど暗所に侵入するケースは多く、JAFには年間を通じてトラブルの救援依頼があるといいます。
■日産も推奨する「猫バンバン」とは?
猫がクルマの下やエンジンルームに侵入するトラブルに対して、近年有効だとして推奨されるのが、「猫バンバン」と呼ばれる方法です。
猫バンバンとは、クルマのエンジンを始動させる前にボンネットなどを「バンバン」と叩いて大きな音を立て、潜んでいる猫に出ていってもらう方法のことです。
クルマの中に入り込んだ子猫
猫には驚かせて申し訳ないですが、知らずにエンジンを始動させてエンジンルーム内のベルトなどに巻き込まれるよりはよいでしょう。
実際、日産では「#猫バンバンプロジェクト」と題して、野良猫とドライバー双方にとって望まないトラブルを回避しようという活動を展開しています。
「100%有効とはいい切れませんが、効果はあると思います。驚いて逃げる猫はいいのですが、なかにはびっくりしすぎてさらに奥に逃げ込む子もいます。とくにエンジンルーム内に孤立した子猫などはその場でフリーズしてしまうことがあります。
耳を澄ませしてみて鳴き声がする場合はまだ猫が潜り込んでいますので、そのときは別の方法で出て行ってもらう策を考えるのがいいでしょう」(獣医師 E先生)
また警戒心が強い猫は、音だけでなく強力なライトやチカチカ点灯するものも苦手といわれていますが、実際は光だけで追い出すことは難しいようです。
「光だけでは逃げないこともあるみたいですが、音と振動や衝撃などと同時に光も活用しつつ、逃げ道(逃げる方向)を用意にしてあげればたいていの猫は逃げてくれます」(獣医師 E先生)
猫がエンジンルームなどに入り込むトラブルに関しては、シャッター付きガレージでもない限り完全に阻止することは難しいようです。
しかし、ハーブを原料とした忌避剤や超音波を発する装置など、市販されている猫よけグッズはある程度の効果が見込めるといいますし、タイヤまでクルマ全体をすっぽりと被せられるカバーをかけておくのも予防策になるそうです。
「地面とカバーに隙間があるとそこから入られてしまう可能性はありますが、カバーを外すときに猫が逃げてくれる可能性もあります。エンジンを始動させる前に、周囲に猫やほかの小動物がいないかを目視だけでなく聞き耳をたてて確認してみてください」(獣医師 E先生)
ちなみに、大きいペットボトルに水を入れて猫よけ代わりにする方法は、獣医のE先生によるとほとんど効果はないといいます。
そもそも猫が活発に活動するのは朝方や夕方の日が当たらない時間となり、ペットボトルがキラキラと光らないためです。
※ ※ ※
野良猫は地域によって差はあるものの、ゴミを漁ったり糞尿被害を出したりと、被害を受けている人にとっては大きな問題です。
また、自宅や所有している土地にクルマを停めているならともかく、賃貸の駐車場ではなかなか対策も講じにくいものです。
できる限り平和的に解決するためにも、試しに「猫バンバン」を試してみてはいかがでしょう。
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