大衆車なのにハイスペックなのがステキ! 昭和に誕生したスポーツセダン3選
くるまのニュース / 2021年11月21日 6時30分
日本車が一気に高性能化したのは1980年代ですが、それよりも以前の1960年代の終わりから1970年代初頭にかけても、高性能化の波がありました。そこで、昭和の時代に誕生した高性能な大衆セダンを、3車種ピックアップして紹介します。
■1960年代の終わりから1970年代初頭に誕生した高性能セダンを振り返る
自動車の進化は日進月歩で続いていますが、とくに著しく走行性能が向上したのは1980年代です。さらに、1960年代の終わりから1970年代初頭にも、高性能化が進みました。
この1970年前後はマイカーもかなり普及し、高速道路も開通したこともあり、いわゆる高速時代に突入していました。
さらに、自動車メーカー各社も自社の製品をアピールする目的で、モータースポーツにも積極的に参加していた頃です。
これらの理由から必然的に市販車の性能の向上し、なかでもエンジンのパワーアップは目覚ましいものがあり、スポーツカーだけでなくセダンにも高性能化が波及しました。
そこで、この時代に誕生した高性能な大衆セダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「サニー 1200 GX5」
ツインキャブの「A12型」OHVエンジンと5速MTを搭載した「サニー 1200 GX5」
1966年に、後に日産を代表することになる大衆車のダットサン「サニー」を誕生しました。サニーはまさにマイカー時代の到来に合せて開発されたモデルで、やや遅れて登場したトヨタ「カローラ」とともにヒット作となりました。
その後、1970年には2代目サニーが登場。搭載されたエンジンは初代から受け継いだ「A型」直列4気筒OHVで、排気量は初代の1リッターから1.2リッターへと拡大されました。
ボディタイプは2ドア/4ドアセダンと2ドアクーペ、3ドア/5ドアバン、ピックアップトラックをラインナップし、大衆車としてあらゆるニーズに対応。
そして、発売からすぐに、SUツインキャブを備え最高出力は83馬力(グロス、以下同様)を発揮する高性能エンジンを搭載したセダンとクーペ「サニー 1200 GX」が登場しました。
さらに1972年には、GXをベースに「サニー 1200 GX5」が追加され、その名のとおり5速MTを搭載。
この5速MTは5速のギア比が1.0(直結5速)とされたクロスレシオで、シフトパターンも1速が左下にあるレーシングパターンとされるなど、レースで培ったノウハウが応用されました。
1200 GX5はパワフルなエンジンと軽量な車体によって、大衆車ながらスポーティなモデルとして若者から高く支持され、ツーリングカーレースでもサニーは高いポテンシャルを発揮。
レース用にチューンナップされたA型エンジンは1.3リッターから最高出力130馬力以上を誇り、OHVながら許容回転数は1万rpmに達したといいます。
●マツダ「ファミリア ロータリーSS」
地味めな見た目ながらハイパワーなロータリーエンジンを搭載した「ファミリア ロータリーSS」
かつてマツダの主力車種だった「ファミリア」は、初代が1963年に発売されました。車名のとおり大衆車として開発されたモデルでしたが、外観はイタリアのデザイン工房であるベルトーネによるデザインで、欧州車を思わせるスタイリッシュかつモダンなスタイリングが特徴でした。
その後、1967年には2代目ファミリアが登場し、1968年には「コスモスポーツ」に次ぐロータリーエンジン搭載車として「ファミリア ロータリークーペ」が発売されました。
さらに、1969年にはファミリア セダンにロータリーエンジンを搭載した「ファミリア ロータリーSS」を追加。
エンジンは491cc×2ローターの「10A型」ロータリーエンジンで、最高出力は100馬力(グロス、以下同様)を発揮しました。
同クラスのモデルのエンジンが50馬力から70馬力程度が時代ですから、ファミリア ロータリーSSがいかに高性能車だったかがうかがえます。
外観は比較的オーソドックスなフォルムの小型セダンですが、専用のメッシュタイプのフロントグリルに三角形のローターを模した「おむすび型」エンブレムが装着され、テールライトは丸形4灯式の専用デザインを採用。
このエンブレムと丸テールは、後に初代「カペラ」や初代「サバンナ」にも受け継がれています。
ファミリアの登場によってロータリーエンジン搭載車の普及が一気に加速しましたが、1973年に3代目が登場すると全車レシプロエンジンにスイッチされ、ロータリーエンジンを搭載したファミリアは歴代でも2代目だけでした。
●ホンダ「1300 77/99 セダン」
ユニークかつ高性能なエンジンを搭載した先進的なセダンのホンダ「1300」
ホンダはオートバイメーカーとして創立され、4輪自動車の製造では後発のメーカーでした。しかし、オートバイの開発で培ったノウハウを生かし、数多くの高性能を輩出。
そのなかの1台が1969年に、同社初となる4ドアセダンとして登場した「1300」です。なお、1970年には2ドアクーペも加わっています。
1300のエンジンは非常にユニークで、1.3リッター直列4気筒は「一体式二重空冷(DDAC)」と呼称された特殊な空冷エンジンで、潤滑方式もレーシングカーでは一般的だったオイルタンクをエンジンと別に搭載するドライサンプを採用。
ラインナップはエンジンの仕様で大きくふたつに分けられ、シングルキャブで最高出力100馬力/7200rpmのスタンダード仕様「77 セダン」と、4連キャブを装着して最高出力115馬力/7500rpmの「99 セダン」で、どちらも当時の水準ではかなりの高回転・高出力なエンジンです。
外観ではボディ全体は比較的オーソドックスな小型セダンでしたが、逆スラントノーズのシャープなフロントフェイスが力強さを表現。
1300はユニークで高性能なエンジンに、駆動方式は室内空間を広くできるFFを採用するなど、かなり先進的なモデルでした。
しかし、空冷エンジンのメリットである軽量シンプルな構造とは真逆の複雑な構造で重いエンジンは、操縦性にも悪影響をもたらしてしまい、さらに環境性能への対応も困難なことから1972年に車名を「145」に改め、水冷エンジンに換装して再デビューとなりました。
そして、同年には新世代の小型大衆車として初代「シビック」が登場し、ホンダの主力車種となり、145は1974年に生産を終了しました。
※ ※ ※
今回、紹介した3車種が登場したすぐ後に「昭和48年排出ガス規制」が実施され、国内の自動車市場では高性能車が次々と消えてしまいました。
しかし、1970年代の終わり頃から再び高性能化が始まり、前述のとおり1980年代には一気に性能が向上しました。
現在、クルマの排出ガスは非常にクリーンで、出力もかつてとは比べられないほど飛躍的に向上しているなど、技術の進歩は目覚ましいものがあります。
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