マセラティ第2のSUV「グレカーレ」最速試乗! 2022年登場予定デビュー予定の新型の走りとは
くるまのニュース / 2021年12月1日 18時10分
マセラティの新型ミドルサイズSUVが「グレカーレ」です。2021年の11月に世界初公開される予定でしたが、最近の半導体不足の影響もあり2022年春に延期されました。その開発は順調で、完成車に近いプロトタイプの試乗がイタリアでおこなわれました。モータージャーナリスト大谷達也氏のレポートです。
■レヴァンテ好評を受けて登場する全長4.5mのミドルサイズSUV
来年2022年春の発表が予定されている新しいSUV、マセラティ「グレカーレ」のプロトタイプにイタリアで試乗してきました。
マセラティは100年以上の歴史を持つイタリアの高級車メーカーです。
スーパーカー世代の人であれば、「ボーラ」や「メラク」といったミッドシップスポーツカーを覚えているかもしれません。
さらに時代を遡った1950年代や1960年代には、F1やルマン24時間にも挑戦するほど積極的にモータースポーツ活動に打ち込んでいましたが、同じ北イタリア生まれのフェラーリやランボルギーニとは微妙に立ち位置が異なっています。
というのも、純粋にスポーツ性能を追求していったライバル2社とは異なり、マセラティの製品は同じ高性能でもどこか落ち着きが感じられたり、洗練された優雅さのようなものを常に漂わせているからです。ピュアスポーツと位置づけられるフェラーリやランボルギーニに対して、マセラティは高速での長距離ドライブを得意とするグランツーリスモに分類されることが多いのは、このためです。
このことを端的に反映しているのが商品展開で、「グラントゥーリズモ」や「グランカブリオ」といった2ドアモデルを手がけるいっぽうで、高性能サルーンを2モデル(「クワトロポルテ」と「ギブリ」)リリースし、SUVの「レヴァンテ」をいち早く発売するなど、いわゆるスポーツカーメーカーとは一線を画すモデルラインナップを揃えてきました。
そのレヴァンテが好評だったことを受けて、2番目のSUVとして企画されたのがニューモデルのグレカーレです。
グレカーレは、全長約5mと大きなレヴァンテに対して、全長4.5mほどと扱いやすいサイズを実現。ただし、ホイールベースをおよそ2.9mと長く設定することで、レヴァンテ並みの室内スペースを確保したといいます。
今回、私が試乗したのは 2リッター4気筒ターボエンジンを搭載したモデル。しかも、このパワートレインには48Vのマイルドハイブリッドシステムが搭載されていてエンジンの働きを補助するほか、吸入気を圧縮するコンプレッサーを電気モーターで駆動するeブーストと呼ばれる機能も装備。ターボチャージャーが威力を発揮にしにくい低回転域では、このeブーストを代わりに用いることで、どんな車速域でも小気味いいエンジンレスポンスを実現したとマセラティは主張しています。
このグレカーレ、もともとは2021年11月に発表される予定でしたが、昨今の半導体不足の影響を受け、発表は来春に延期されました。
ただし、「それでも開発は順調に進んでいる」ことを世に知らしめるため、今回のプロトタイプ試乗会を実施したようです。
いずれにしても、現時点では未発表モデルのため、試乗できたのはテストコースの内部だけで、外観はご覧のとおりの擬装付き。インテリアにも厳重にカバーがかけられていましたが、それでも、一般道とよく似たワインディングロードで、何の制約もなくテストドライブすることを許されました。これはごく異例のことといえます。
■ソリッドな足まわりなのに快適な乗り心地
走り始めてすぐに感じたのは、乗り心地がとても快適なこと。
もっとも、マセラティが作るSUVですから、足まわりがフワフワするということはありません。むしろ、車体をフラットな姿勢に保つソリッドなサスペンションなのですが、不思議なことに荒れた路面を走ってもゴツゴツした印象が感じられないのです。
マセラティの新SUV「グレカーレ」プロトタイプを運転する筆者の大谷達也氏。インテリアには厳重にもカバーが掛けられている
これは、試乗車がエアサスペンションを装着していた影響もあるでしょうが、それだけでなく、足まわりのセッティングを丁寧におこなった成果といえるでしょう。
結果として、足まわりがソリッドなグレカーレは、コーナーでも思いのままに操れるハンドリングに仕上がっていました。
真っ直ぐ走っている状態から少しハンドルを切っただけでも、自分が思い描いていたとおりにスッと遅れなく曲がってくれる……そんなハンドリングなのです。
しかも、一部のスポーツカーのように、ステアリングの切り始めを極端に敏感にすることなく、あくまでも自然な反応の範囲に留めていないので、ドライバーに緊張を強いることもありません。これも好ましい特性だと思いました。
グレカーレのように「ソリッドな足まわりなのに乗り心地は快適」というクルマを作るには、実はボディ剛性が非常に重要な役割を演じます。
ボディが頑丈であれば、多少硬くても足まわりからの衝撃をしっかりと受け止めることができるので、不快な振動が残らず、「硬いけれど快適」な足まわりを実現できるのです。反対に、剛性の低いボディの場合、乗り心地を諦めて機敏なハンドリングを追求するか、それとも機敏なハンドリングを諦めて快適性重視にするかのどちらかになります。
マセラティの新SUV「グレカーレ」プロトタイプの走り
グレカーレのボディ剛性が高いのは、「ジョルジオ・プラットフォーム」のおかげといえます。
マセラティが属するFCAグループ(現在はPSAと合併してストランティスと名乗ります)で開発されたジョルジオ・プラットフォームは、アルファロメオ「ジュリア」に採用されてデビュー。その後、同じアルファロメオのSUV「ステルヴィオ」にも使われたので、グレカーレが3モデル目となります。
ただしグレカーレへの採用に際して、マセラティはジョルジオ・プラットフォームを大改良。さらにホイールベースを大きく延長したと言明しています。このあたりは、マセラティのプライドといってもいいかもしれません。
300psを生み出す2リッターエンジンもレスポンスが小気味よく、グレカーレのハンドリングとよくマッチしていました。しかも、4気筒らしさを残しつつ、抜けのいい快音を生み出しているところも魅力的です。
マセラティは先ごろミッドシップスポーツ「MC20」を発表したほか、全モデルで電動化を推し進めるなど、ブランドとして大きく変革しようとしています。グレカーレも、これまでのマセラティとはひと味異なる完成度に仕上げられているように思いました。
来春の正式デビューがいまから楽しみで仕方ありません。
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