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「セルフ式ガソリンスタンド」なぜ自分で給油可能? 給油方法だけじゃない、フルサービス式との意外な違い

くるまのニュース / 2022年4月26日 9時10分

ガソリンスタンドの形態は、おもにユーザー自らが給油をおこなうセルフ式と、スタッフが給油やそのほかのサービスをおこなうフルサービス式があります。セルフ式とフルサービス式はルールや規制が異なるようですが、給油方法以外にどのような違いがあるのでしょうか。

■全国的に減少傾向のGSでもセルフ式が増えている

 ガソリン車やディーゼル車に乗っている人が燃料を給油するのに不可欠なガソリンスタンドですが、じつは、我々があまり知らないルールや規制があるようです。

 そのガソリンスタンドですが、1994年をピークに全国的に減少傾向が続いています。

 これにはさまざまな理由が考えられますが、1990年代の石油製品輸入の自由化による価格競争の激化で中小の販売業者が経営するガソリンスタンドが淘汰されたことに加え、経営者の高齢化や後継者不足、就労者不足などが理由といわれています。

 さらに、自動車保有台数の減少やハイブリッド車およびプラグインハイブリッド車などの普及によるガソリン需要自体の減少、そして地球温暖化対策税が設立され収益が悪化したことも原因といわれていますが、もっとも大きな影響を与えたのが2011年6月の「危険物の規制に関する規則」の改正とされています。

 この改正は「ガソリンスタンドの地下貯蔵タンクの腐食防止対策義務化」などが定められ、しかも2013年1月末までに必要な対策を施さないと、消防法による認可の取り消し処分対象になるという厳しいもの。

 タンクの改修には3000万円から4000万円の費用がかかることから、事業継続を断念するガソリンスタンドが続出しました。

 新型コロナの影響がまだない2019年には全国に2万9637軒あったガソリンスタンドが、2020年度末には2万9005軒と632軒も減少。単純試算でも1県で13.4軒も廃業していることになります。

 一方、1984年の消防法改正によって、危険物取扱の資格を持ったスタッフではなくとも給油できることになり、人件費を抑制できるセルフ式に切り替えるガソリンスタンドも増えており、生き残り競争の真っ只中となっています。

 しかし給油作業に慣れない人にとっては、セルフ式より、スタッフが誘導し給油してくれるフルサービス式のほうが楽な場合が多いのは事実です。

 ちなみに地域ごとの格差はあるものの、フルサービス式とセルフ式のガソリン価格差はだいたい1リットルで5円前後。40リットルの給油で差額は200円程度となり、これで窓拭きや車内のゴミの回収などもしてくれるのですから、手間を考えたらフルサービス式も決して高いというわけではないでしょう。

 では、セルフ式とフルサービス式にはどんな違いがあるのでしょうか。

 都内で複数店舗を展開しているガソリンスタンドのH店長に話を聞いてみました。

「フルサービス式とセルフ式の違いは、『危険物取扱者甲種』または『危険物取扱者乙類4種』の資格を所持するスタッフが給油するか、またはお客さまが自分でクルマやバイクに給油するかの違いがありますが、それ以外にも細かいルールが違います」

 セルフ式はスタッフの姿が見えないことが多いですが、実際は危険物取扱者の資格を持った「危険物取扱者」が保安を監督。監視カメラを通じてモニタリングしているスタッフ(ガソリンスタンドの従業員)が、給油口にノズルが差し込まれたことを確認してから給油スイッチを操作し、その後レバーを握るとガソリンまたは軽油が給油できるようになっています。

 そのため、セルフ式ではレバーを握ってすぐに給油が始まらず、ワンテンポ遅れて給油開始となることが多いのは、安全のため有人操作をおこなっているからなのです。

 ほかにもセルフ式とフルサービス式との違いとして、給油に関しての制限の違いがあります。同じガソリンスタンドのように見えて給油量も違うようです。

「セルフ式は、ガソリンは1回の給油で100リットル以内、軽油なら200リットル以内、さらに給油時間は4分以内と消防法で定められています。

 一方でフルサービス式は給油時間の制限はなく、給油量もセルフ式の毎分30リットルから35リットルに比べて、毎分45リットルの給油が可能となっています。実際はセルフ式のほうが給油時間が長くかかっているんです」(ガソリンスタンド H店長)

ガソリンスタンドガソリンスタンド

 またセルフ式ではガソリン携行缶への給油は基本的にNGとなっています。これは数年前のアニメスタジオ放火事件後に購入する場合は免許証などで本人確認が必要になったことから、非対人のセルフ式では不可ということになりました。

 しかし、地域によっては農機具用の発電機などでガソリンを使用するときに、近所にセルフ式しかない場合はどうするのかなどが難しい問題となっています。

 また、セルフ式では原則として給油作業は1名でおこないます。これは複数名が作業すると、ノズルのホースに足を引っ掛けたり、静電気が発生して引火したりするため、その恐れを抑制するための措置だとされています。

 給油中はほかの乗員は、トイレや飲み物を買うなどの用がない場合、車内で待っていないと給油が始まらない(スタッフが給油ボタンを押さない)という決まりになっているそうです。

※ ※ ※

 ほかにも、ガソリンスタンドには意外と知られていない仕組みがあるといいます。まずは、ガソリンスタンドの敷地には緩く傾斜が付いているということです。

「ガソリンスタンドは傾斜を付けるように消防法で定められており、床はガソリンや灯油が浸透しにくい素材で舗装し、傾斜を付けた上に給油エリアの周囲に排水溝を設ける必要があります。

 これは万が一溢れてしまったガソリンや灯油をすぐに洗い流して火災を防ぐためです。

 我々スタッフが給油しても、車種によってはうまくストッパーが作動せず、吹きこぼすことがあります。こぼれた燃料を滞留させないためにも傾斜と排水溝は必要なのです」(ガソリンスタンド H店長)

 なお、敷地内は火気厳禁となっており、セルフ式でもフルサービス式でも給油中はエンジンを切るのが鉄則です。ハイブリッド車でEV走行状態だとしても、給油中はパワーユニットのスイッチはOFFにする習慣を身に付けておきましょう。

 また、スタッフのユニフォームと帽子も気になる点です。ユニフォームは全員着用しているけれど、帽子はまちまち。必ず帽子をかぶる必要はないのでしょうか。

「就業中に着用しているユニフォームは、『静電気防止機能』を持たせた特殊な素材でできています。帽子も『帯電防止機能』が盛り込まれているのですが、ユニフォームだけでも静電気をかなり抑制できることから、スタッフの任意で判断して良いことになっています。

 ただ作業は屋外なので髪型が風などで乱れないように、原則として着用を推奨しています」(ガソリンスタンド H店長)

 夏場などは帽子のなかが蒸れることもあるので、義務ではないとH店長はいいます。

 ただし乱れた服装は客への印象も悪いため、清潔感と笑顔だけは厳しく指導しているそうです。

 セルフ式には「危険物取扱者」の資格がない一般の人でも安全に給油できるように細かいルールが定められていました。

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