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やはり転売車続々…1700万円のトヨタ新型「ランクル」 なぜ「転売禁止のお願い」は法律で規制出来ないのか

くるまのニュース / 2022年5月13日 7時10分

購入時に転売を禁止する旨が記載された「誓約書」の提出を求められるトヨタ「ランドクルーザー」。しかし、実際には「転売ヤー」による転売を規制するという以外の目的が強いようです。

■「誓約書」に法的拘束力はない?

 2022年5月時点での納期が4年となっているトヨタの「ランドクルーザー300」ですが、販売時には「誓約書」の提出を求められるなどの異例の対応が話題となっています。
 
 しかし、実際には「転売ヤー」による転売を規制するという以外の目的が強いようです。

 この誓約書は、販売店によって多少その内容はことなりますが、基本的には一定期間内(6か月-1年程度)の転売を禁止する旨が記載されており、これに反した場合は、今後の取引をおこなわないといった内容も見られます。

 近年、ゲーム機器やキャラクターグッズなどを発売と同時に大量に買い占め、当初の価格を大幅に超える価格でフリマサイトやオークションサイトで販売する、いわゆる「転売ヤー」が問題となっています。

 各企業は、その商品を本当に求めるユーザーに適正な価格で届けるためにさまざまな工夫を凝らしており、ランドクルーザーの購入に誓約書が必要となったのも、そうした背景が理由と考えられています。

 しかし、一般的な法解釈では、この誓約書に法的拘束力はありません。つまり、誓約書にサインしたうえでランドクルーザーを購入し、即日転売したとしても法律上は罪に問えません。

 これは、消費者契約法第10条において「消費者の利益を一方的に害する条項の無効」が規定されていることと関係しています。

 例えば、ランドクルーザーを購入直後に不慮の事故でユーザーが死亡してしまい、残された家族は免許も持っておらず、また生活資金を確保するためにランドクルーザーを売却するというケースがあるとします。

 常識的に見れば、いわゆる悪質な転売とは考えられにくいケースですが、もし誓約書が法的拘束力を持ってしまえば、これも違法となってしまいます。つまり、悪質かどうかの線引きは非常に難しいというのが実情です。

 また、インターネット上では、悪質な転売を防止するために「定価以上での転売を規制すればよい」という意見も見られます。

 ただ、国や企業が小売価格を規制することは、公正で自由な競争を妨害することになり、資本主義経済を根本から否定することになりかねないため、独占禁止法の観点から公正取引委員会による処分の対象となります。

 仮に、定価以上での販売が禁止されるとしたら、ほとんどの企業は定価そのものを釣り上げることで、より多くの利益を追求するようになるでしょう。国が定価を決めるとすれば、それはもはや資本主義ではなくなってしまいます。

 ちなみに、音楽ライブなどのチケットについては、チケット不正転売禁止法によって定価以上での転売行為が規制されていますが、これらの興行活動を含む著作物は、例外的に公正取引委員会の規制の対象外となっているため、クルマやゲーム機器などとはそもそも事情が異なるという背景があります。

 また、商社に代表されるように、ほとんどの企業行為は転売活動によって成立していることから「企業以外の転売を規制すればよい」という意見も見られます。

 ただし、それをしてしまうと、既存の企業の既得権益が守られる一方で新規参入が著しく難しくなり、結果として自由競争をはばむこととなってしまいます。そのため、これも独占禁止法の観点からは難しいようです。

 このように、転売を禁止することはいまの資本主義経済そのものを否定することにつながってしまい、また、悪質かどうかの線引きも難しいことから、法的拘束力を持たせることはできないのが実情です。

※ ※ ※

 なお、ランドクルーザーでの日本価格は、ガソリン車の「GX(5人乗り)」510万円から「GR SPORT(7人乗り)」730万円、ディーゼル車の「ZX(5人乗り)」760万円から「GR SPORT(5人乗り)」800万円となっています。

 しかし、多くの受注を受けたことや昨今の部品不足などの関係などから前述の通り「納車まで4年待ち」という状況が続いており、中古車市場の相場も高騰しているのです。

 例えば、新車価格が760万円の「ZX(ディーゼル車)」や800万円の「GR SPORT(ディーゼル車)」は、中古車サイト上にて1588万円から1705万円という価格が付けられているようです。

■ランクルの「誓約書」の本当の目的とは?

 一方で、トヨタの販売店が実際に誓約書の提出を求めているのは事実です。法的拘束力がないにもかかわらず、なぜ誓約書の提出を求めるのでしょうか。

 あるトヨタ販売店関係者は次のように話します。

「この『誓約書』に、いわゆる『転売ヤー』による転売を防ぐ目的がないわけではありません。

 しかし、あくまでも『お願い』であり法的拘束力はありません。もちろん、悪質な転売を容認しているわけではありませんが、法律上は規制できないのが現状です。

 われわれが本当に懸念しているのは、国外への輸出で、より具体的にいえば、テロ組織などの手に車両が渡ってしまうことです。

 ランドクルーザーの持つ高い性能は、残念ながらそうした反社会的な人々にとっても魅力的なものです。

 ただ、当然のことながら、われわれはそうした人々がランドクルーザーを手に入れることを阻止しなければなりません。

 国際テロリストであることを知りながら車両を販売すれば、外為法違反となる可能性もあります。

 もちろん、人道上も大きな問題です。そのため、輸出の可能性に関してはかなり厳しくチェックをするようにしています」

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 誓約書の提出をお願いしている背景には、過酷な状況でも走破できる高い走行性能と信頼性を持つランドクルーザー特有の事情が大きく関わっているようです。

 ただし、販売店が悪質な「転売ヤー」に頭を悩ませているのも事実です。そのため、商談中に違和感を覚えたり、複数台の購入を相談された場合には、とくに注意するようです。

 その一方で、前述のようなやむを得ない事情であれば、誓約書の内容に反していてもとくにペナルティは課されないようです。

 前出の販売店関係者は「売却を検討せざるを得ない場合は、販売店が買い取ることができる可能性もあるので、まずは相談してほしい」と話します。

※ ※ ※

 悪質な「転売ヤー」には企業もユーザーも頭を悩ませていますが、転売そのものを規制するのは難しいのが現状です。

 とはいえ、社会的に悪影響が大きくなれば、なんらかの規制がおこなわれる可能性は否定できません。自由な経済活動を守るためにも、節度ある行動が求められます。

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