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なぜ「100万円以下」の軽自動車減った? コンパクトカーとの立ち位置は逆転? 今後の軽規格はどうなるのか

くるまのニュース / 2022年6月29日 7時10分

この30年で軽自動車に対するイメージは激変しました。かつては「安いクルマ」の代名詞であった軽自動車ですが、最近では100万円以下で購入できるものはほとんどなくなり、むしろ200万円以上するものがめずらしくなくなってきました。今後さらにコンパクトカーとの差別化が難しくなっていく印象を受けますが、果たしてどうなっていくのでしょうか。

■日本独自の「軽自動車」と5ナンバー車「コンパクトカー」の立ち位置は入れ替わるときが来る?

 かつて軽自動車といえば、安全面では登録車と比べてやや見劣りし、同時に低コストなどによる「安いクルマ」の代名詞でした。
 
 最近では100万円以下で購入できる軽自動車はほとんどなくなり、むしろ200万円以上するものが珍しくなくなっており、コンパクトカー(5ナンバー車)との差別化も年々難しくなっています。
 
 そうした状況において、軽自動車とコンパクトカーの立ち位置に変化は無いのでしょうか。

 日本のモータリゼーションを促進するという、高度成長期における軽自動車の成り立ちを考えると、軽自動車が安価なのは当然といえば当然ですが、近年ではそうしたイメージが変わりつつあります。

 2021年、日本でもっとも売れた軽自動車はホンダ「N-BOX」ですが、エントリーグレードで144万8700円、最上級グレードで217万2500円です。

 同じく2021年に登録車でもっとも売れたトヨタ「ヤリス」のエントリーグレードは139万5000円、最上級グレード(ガソリン車)の価格は216万9000円となっており、わずかではありますが軽自動車であるN-BOXのほうが価格が高いことがわかります。

 また、100万円以下で新車購入できる軽自動車は、かつてはそれなりに選択肢があったものですが、商用車を除けば現在ではダイハツ「ミライース」とスズキ「アルト」、そしてそれらのOEM車というように数えるほどしかありません。

 なぜ、軽自動車は「上級志向」へと変化していったのでしょうか。また、今後100万円を下回るような軽自動車が登場する可能性はあるのでしょうか。

 一部のスポーツモデルなどを除けば、上級志向の軽自動車というトレンドを作ったのは、やはりN-BOXといえます。

 2011年に登場したN-BOXは、当時の人気を誇っていた軽スーパーハイトワゴンのダイハツ「タント」を直接のライバルとし企画されました。

 ホンダ「フィット」などで定評のあった「センタータンクレイアウト」を採用するなど、ライバルよりも室内空間が広いことなどを武器に、発売当初から爆発的な売れ行きを記録し、現在に至るまでホンダの主力モデルとしての地位をほしいままにしています。

 N-BOXの勝因のひとつに、既存の軽自動車の枠組みにとらわれない柔軟な発想がありました。

 登録車と同等の装備や機能に加え、新開発されたエンジンによりパワフルな走りを兼ね備えているにもかかわらず、税金などが登録車に比べて割安であったことから、コンパクトカーなどからの乗り換えが多かったといわれています。

 ただ、この背景には年々厳しくなる安全規制や環境規制へ対応するために、車両価格を上げざるを得ないという事情もありました。

 安全装備でいえば、衝突被害軽減ブレーキやオートヘッドライトは義務化されており、また、厳密には義務化されてはいないものの、エアバッグもほぼすべてのモデルに搭載されていることを考えると、搭載しないわけにはいかない装備のひとつです。

「1銭」という単位までコストにこだわるという軽自動車の開発では、こうした装備を新たに搭載することは、すなわち車両価格の上昇を意味します。

 さらに、ユーザーが軽自動車に求める重要な要素が低価格(低コスト)であるため、単純に車両価格が上がったように見せるのは得策ではありません。

 そこで、N-BOXではクルマそのものを上級志向へと転換させることで、クルマとしての魅力が上がったことを強調したというわけです。

 N-BOXの成功に引っ張られるように、その後多くのメーカーが上級志向の軽自動車を発売、現在もその傾向は続いています。

 実際にN-BOXを販売しているホンダ販売店のスタッフは次のように話しています。

「N-BOXは標準仕様とカスタム仕様それぞれで異なる需要に対応している点などにより、幅広いお客さまから支持されています。

 ラインナップとしてはN-BOXとフィットを比較されることも多く、普段の買い物車として使われる人であれば、軽自動車も登録車もあまり変わりないようです。

 その検討の末にN-BOXを契約される人もおり、軽自動車で十分と考えるお客さまからすれば、コンパクトカーを購入されるメリットはあまりないようです」

※ ※ ※

 このように、かつては安全面で不安視されるほか安いというイメージが定着していた軽自動車ですが、現在では先進安全機能も登録車並となり、質感でもコンパクトカーを凌駕するモデルも登場。

 実際に日産が発表した軽EV「サクラ」では軽自動車を超える質感や先進安全機能を採用しており、コンパクトカー以上のステータス性さえ持っています。

■100万円以下の軽自動車はもう不可能?可能性があるとすれば…

 では、今後はかつてのように、100万円以下の軽自動車が多く登場するようなことはないのでしょうか。

 物価の高騰やインフレといったマクロ経済的な要因は無視したとしても、やはり年を追うごとに厳格化される安全規制や環境規制に対応するには、さまざまな装備や機能を追加する必要があり、その価格は車両価格に反映することになります。

 安全性能や環境性能に関係しない快適装備を可能な限り取り払えば可能かもしれませんが、そうしたクルマを購入する人はごく少数派でしょう。

 また、大量生産をすることでコストを下げるという戦略も考えられますが、軽自動車は日本独自の規格であるうえ、日本の人口は減少傾向にあることを考えると、それも現実的ではありません。

 一方、可能性があるとすれば、軽自動車規格のまったく新しいマイクロモビリティが登場する場合です。

 あくまで近距離・少人数移動を前提としたマイクロモビリティで、電気自動車(EV)のようにこれまでの軽自動車の枠組みにとらわれない製品であれば、「100万円以下」というのは決して夢ではないかもしれません。

 実際、中国ではおよそ50万円という低価格の小型EVである五菱(ウーリン)の「宏光mini EV」が2021年の中国新車販売台数で2位にランクインしています。

 もちろん、既存の軽自動車と同等にとらえることはできませんが、あくまで「100万円以下で買える軽自動車規格のクルマ」という点では、宏光mini EVは多くの示唆を含んでいるといえます。

トヨタは「超小型モビリティ」に区分される電気自動車「C+pod(シーボット)」をリース販売しているトヨタは「超小型モビリティ」に区分される電気自動車「C+pod(シーボット)」をリース販売している

 そうしたなかで、トヨタでは軽自動車の一種となる「超小型モビリティ」に区分される電気自動車「C+pod(シーボット)」をリース販売していますが、実際の反響についてトヨタの販売店は次のように説明しています。

「シーボットはリース専用車として取り扱いをしており、主な用途としては身近な移動を目的としたもので、現状では軽自動車同様の車検/税金となっています。

 すでに契約されたお客さまからは、『小さく扱いやすい』『近距離移動がメインだから充電は週末だけの1回で済むので楽』という声を頂いており、新しい物好きな人からは注目されています。

 一方で車両価格が165万円からとなっていることもあり、軽自動車やコンパクトカーのリース契約と比較されるとまだまだ普及するには難しいようです」

※ ※ ※

 軽自動車という枠組みができておよそ70年、これまでも法制度の見直しがおこなわれてきましたが、その根本的な部分は1998年に「全長・全幅の拡大」が改正されて以降、長らく変わっていません。

 現在の枠組みは「排気量660cc以下、長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下の三輪および四輪自動車」と定められています。

 電動化が進むことが予想されるこれからの時代、軽自動車という枠組みそのものを見直す必要があるといえますが、かつての取材時に全軽自協は次のように説明していました。

「過去に改正された1998年では安全面の観点から規格が変更されていますが、20年以上経った現在でも現行の規格が安全上で問題になったという話は聞いていないため、当面の間では規格の見直しはおこなわれないと思われます。

 また、これまでの間に、自動車メーカーや関係各所から『規格の見直し』に関する要望などは聞いておりません」

 こうしたこともあり、当面の間は軽自動車の枠組みは変わらなそうですが、同時に小型車(5ナンバー車)との差別化も議論していかなければならないでしょう。

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