空のパイロットではない!? 陸を駆け抜ける「ハイウェイパイロット」なぜ誕生? バスの「運転手不足」改善なるか 年収600万円まで引き上げも
くるまのニュース / 2024年11月10日 12時10分
現在、バス業界では人手不足が深刻な問題となっています。人手が足りないことによりバスの本数が減らされたり、路線が廃止になったりと、影響を及ぼします。そんななか、高速バスで知られるWILLER EXPRESSは、運転手の名称を「ハイウェイパイロット」に変更すると発表しました。なぜ運転手の名称を変更したのでしょうか。
■運転手ではなく「ハイウェイパイロット」 憧れの職業のなることを目指す
高速バスで知られるWILLER EXPRESSは、2024年4月から、バス運転手の名称を「ハイウェイパイロット」と呼称することを発表しました。
なぜ運転手の名称を変更したのでしょうか。
現在、バス業界では人手不足が深刻な問題となっています。人手が足りないことによりバスの本数が減らされたり、路線が廃止になったりと、日常生活にも影響を及ぼします。
さらに、「2024年問題」が状況の悪化に拍車をかけてしまっています。
2019年より施行された労働基準法の改正により、バス運転手の拘束時間の上限が見直されました。
これはバス運転手の長時間労働を防ぎ、心身の健康を守るための改正ですが、現状人手不足のバス業界では、時間外労働の制限によりさらなる悪影響が懸念されています。
そのため、改正後もバス業界含め一部の職種では2024年4月まで適応を猶予されていました。
しかし、ついにその猶予期間も終わり、バス業界は対応が求められています。
「ハイウェイパイロット」もまた、こうした問題への取り組みのひとつです。
あえて名称を変更させた理由について、WILLER EXPRESSの担当者は次のように話しています。
「弊社のハイウェイパイロットは、安全とおもてなしを両立する乗務員です。
彼らが自信を持って働けるように、また飛行機のパイロットのような憧れの的になるように。
ひいては自らもハイウェイパイロットとして働きたいと思うような人が増えるように、との考えからこの呼称に変更しました」
新たに運転手から「ハイウェイパイロット」に呼称が変わったことにより、現場の人たちからはまだ少し恥ずかしいという声もあるようですが、「運転手のイメージが良いものに変わっていくかもしれない」という意見もでているとのことでした。
また、WILLERが社内のハイウェイパイロットにアンケートを実施したところ、「接客に対して意識が高まった」との回答が54%に上り、「運転技術を高める意識が高まった」という答えた者も65%に達したとのことです。
さらに、WILLERは名称だけでなく、「採用」「教育」「サービス」の面でも、人手不足改善に向けて取り組みを行っています。
「サービス」の面では、利用客に安全・安心・快適な移動を提供するために、ハイウェイパイロットの健康管理を進めています。
主な取り組みとしては、居眠り運転防止のための眠気探知機「FEELythm(フィーリズム」の導入や、睡眠時無呼吸症候群スクリーニング検査、BNP心不全検査などの健康検査、産業医と連帯した健康指導などがあります。
また、「採用」や「教育」の面では、ハイウェイパイロットの専門研修施設を開設し、集中的に接客や安全のための運転スキルの知識を指導。
他業界からの人材を積極的に採用し、未経験者の育成に力を入れています。
■「安全と接客の両立」を実践するハイウェイパイロットの育成
専門施設によるハイウェイパイロット育成プログラムを「WILLER LABO」と呼び、2024年5月より始動しています。
これまでは各営業所で研修を行っていましたが、一箇所で実施することにより研修の効率化が期待されています。
研修期間は12週間。最初の2週間は接客の知識や英会話、非常時対応などの座学を受けた後、車両点検やクラッチ操作など基本的な内容の確認から昼間・夜間の走行訓練といった実技研修を行います。
また、WILLER LABOは業務員の定着率を上げるための取り組みの一つでもあります。
研修期間は、集団での生活を送ります。この集団生活を通じてLABO生同士の仲間意識を醸成することによって定着率につながると考えられています。
前出の担当者は次のように話しています。
「高速バスの運転手という仕事は、非常に孤独だと感じており、時にワンマン乗務もあり安全も求められるため大 変苦労の多い仕事です。
そんな中で心の支えになるのが、苦楽を共にしてきた仲間の存在となります。
壁に ぶつかった時も仲間と助け合いながら乗り越えてもらいたいという想いがあります」
「ハイウェイパイロット」による職業ブランド化がどのような成果をもたらすのか期待される
また、実際に研修を受けたLABO生たちからは「教習所とは異なり、一人一人に細かく教官に指導してもらえる点がとても良い」、「自分自身の運転技術のク セや弱みについても教えてもらえるので、凄く学びになった」、「また乗りたいと思ってもらえるようなハイウェイパ イロットを目指したい」といった声が寄せられており、教育内容に満足している人が多いようです。
WILLER LABOの今後の目標としては、指導者のスキル標準化があります。
指導マニュアルの作成や研修の実施で標準化を図っていく予定とのことでした。
※ ※ ※
人手不足による業務への悪影響が影響されている今だからこそ、運転手への待遇を改善し、新たな人材を呼び込む必要があります。
WILLERでは、平均給与の引き上げを社内に告知しており、2024年から3年かけて平均年収を600万円まで段階的に引き上げていく予定です。
「ハイウェイパイロット」による職業ブランド化がどのような成果をもたらすのか期待されます。
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