「延期を乗り越えることもレガシーに」 東京五輪まで1年、橋本五輪相に聞く

京都新聞 / 2020年7月26日 18時4分

1年後の大会に向け、心境を語る橋本五輪担当相(東京都千代田区)

 橋本聖子氏は1984年のサラエボ冬季五輪から夏・冬計7大会に出場したオリンピアンだ。日本オリンピック委員会(JOC)強化本部長や日本スケート連盟、日本自転車連盟の会長など競技団体役員も歴任し、昨秋から五輪・パラリンピック担当相を務める。新型コロナウイルスで揺れた現役選手に対する思いや、政治とスポーツの関係性などについて語った。

 -延期された東京大会まで1年。心境は。

 「私は競技者や現場の近くで仕事をしてきたので、アスリートがどうなる、今年の夏にできるのかなと心配していた。早く決めないと(現場は)相当メンタル的にきついと思っていたところ、早い段階でIOCから判断が下された。ほっとしたのが正直なところ」

 「最近頼もしいと思うのは、コロナ禍で自分自身を見つめ、世界や全体の状況をしっかりと見ることができるアスリートが多くなってきたこと。それが競技力やキャリア向上の新しい力になっている。1年延期を不安じゃなく、プラスに変えていこうとしている」

 -競技ができない中でも内面の成長につなげられていると。

 「そうですね。大会延期という誰もが未経験のことを乗り越えることも大会全体のレガシー(遺産)になる。アスリートにとっては、想定外の事態に対応できた経験はその後の財産になっていく」

 -スポーツと政治について。安倍首相がIOCのバッハ会長に延期を提案した際、橋本五輪相も同席していた。都市開催の五輪で首相が前面に出て交渉するのは腑(ふ)に落ちない。

 「あくまでも決定権はIOC。これは五輪憲章にも記されている。ただIOCだけで開催はできない。IOCの命を受けて東京都やスポンサー、JOCなどが出資して組織委が立ち上がり、運営を担当している。一方で感染症や暑さ対策、輸送、サイバーセキュリティーと国がやらなければいけないことがたくさんある。今回は特にコロナがあり、世界が結束して打ち勝っていかないといけない。それには国のリードが必要。間違いない決定をしてもらうためには国として提案しないといけない」

 -モスクワ五輪のボイコットもあり、スポーツ界が政治と距離を取り、自立することは大事とされる。線引きをどう考えるか。

 「私が最後に出場した五輪は政治家になってからの(1996年の)アトランタ大会。『前代未聞』と言われ、(周囲から)叩かれもした。アスリートとして政治とスポーツは切り離していくものだと思うが、寄り添わなければとても(大会を)実現できるものではない、と肌で感じてきていた。永遠のテーマかもしれないが、どちらもなければ成立はしない」

 「大会成功には、陰においても政治や国が果たすべき役割は相当大きなもの。それを理解していただいた上で寄り添っていく形をどう取るか。出過ぎても駄目だし、出なくても駄目。相手側がどれだけ求めてくるかによってスタンスを変える。国はIOC、東京都、組織委の3者の関係をより強固にする接着剤であり、何かあれば助けるのが役割」

 「私は今までJOCや(理事として)組織委の方にいた。いまは内閣の一員として立場が変わったところにいる。1年延期でアスリート側としては強化や準備で国にやってもらわないといけないところがたくさんある。自身の経験を利用しながらサポートしたい」

 -追加経費の問題もあり、コロナ対策を優先すべきとの声がある。大会の中止論も出ていることについて。

 「バッハ会長が中止はない、できる限り無観客ではしたくないと発言した通り。それを実現できるように国がサポートしていく。ただ、アスリート側からして衝撃的だったのは、先日の東京都知事選の出口調査で五輪について尋ねた結果。今までは大変な支持率、五輪の開催に向けての期待感もあった。今回は相当低く、世論の状況が変わってしまった。(コロナ禍で)夢と希望を求め、早くスポーツを見たいと言っている人たちが、一方で、五輪はできないのではと思っていることのギャップというのは、選手にとって相当なショックだったはず」

 「大会開催に向けた不安をどう取り除いていくか。6月10日のIOC理事会では安全・安心の環境を整え、開催に向けた理解を得るために追加経費を最小化し、大会を簡素化することで一致した。シンプルにしすぎてもという思いもあるが、まずはコロナ対策をしっかりした上で世界のアスリートが安心して選手村で過ごし、最高のパフォーマンスを出せるように努めたい」

 ―京滋で相手国と交流するホストタウンは10件が登録。聖火リレーも巡る。コロナでしぼんだ機運を盛り上げていく方策は。

 「五輪の初期は競技に文化と芸術も入っている。開催国の文化や芸術を発信するのも現代の五輪・パラリンピックの姿。東京大会に向け、国としては多様性や国際性に配慮した文化プログラム『beyond(ビヨンド)2020』や『日本博』を展開している。京都・滋賀は日本の歴史の礎。大会がオールジャパンの芸術文化を発信するチャンスと考えれば、素晴らしい財産を持つ京都の力をお借りしなければ成功には導けない」

 「食文化では京野菜やふなずしもある。琵琶湖を自転車で1周する『ビワイチ』も魅力的。東京大会には『アフターコロナ』を見据えた社会にする役割もある。地域の魅力発信にも力を入れたい」

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