社説:米最高裁判事 選挙に司法巻き込むな

京都新聞 / 2020年9月30日 16時0分

 米国社会の混乱に拍車がかからないか心配だ。

 トランプ米大統領が、今月死去した最高裁のリベラル派判事の後任に保守派の女性エイミー・バレット連邦高裁判事を指名すると発表した。

 トランプ氏はこれまで、最高裁判事に保守派2人を送り込んでおり、就任すれば保守派6人、リベラル派3人となり、保守色が一段と強まることになる。

 与党共和党が過半数を占める上院で承認される見通しだが、野党の民主党は大統領選で当選した候補が指名すべきだとして反発を強めている。

 最高裁判事は終身制のため長年にわたって影響を与え、その構成は米社会を二分するさまざまな問題を左右する。

 バレット氏は銃規制や人工妊娠中絶だけでなく、オバマ前政権が進めた医療保険制度(オバマケア)にも批判的とされ、民主党にとっては懸念材料だろう。

 今後の審理でオバマケアが法的に無効になれば、新型コロナウイルスの感染が収まらない中で無保険になる人が続出し、混乱は避けられない。

 トランプ氏が保守派判事を指名したのは、11月の大統領選に向けた支持基盤固めに加え、選挙結果に不服を申し立てる際の法廷闘争に備えるためだ。

 今回の大統領選では、新型コロナウイルス対策で郵便投票が増加している。民主党支持者が多く利用していることから、トランプ氏は自身が不利になるとみて郵便投票を「不正の温床」と主張している。

 選挙結果が劣勢になっても、最高裁の保守派判事を増やしておけば、提訴で自分が有利になると踏んでいるようだ。

 だが、そういうやり方で司法を自分の選挙に利用することは三権分立の理念に明らかに反する。

 そもそも投票日の1カ月以上も前からさしたる根拠もないのに相手候補側の「不正」を吹聴し、「最高裁まで争われる」と主張すること自体が尋常でない。

 大統領選では、バレット氏の指名を巡っても争点となるとみられるが、民主党内では、最高裁の保守派支配を薄めるため、対抗策として判事の定員拡大や任期見直しの声も出ているという。

 米国は、それでなくても格差拡大や人種差別で社会の分断が進んでいる。大統領選が司法を巻き込んで混乱すれば、亀裂がさらに深まる恐れが出てこよう。

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