社説:トランプ氏無罪 「扇動」の責任免れない
京都新聞 / 2021年2月18日 16時0分
再び「有罪」から逃げ切った。
米連邦議会議事堂の襲撃事件で支持者を扇動した責任を問われたトランプ前大統領の弾劾裁判で、上院は無罪評決を言い渡した。昨年のウクライナ疑惑を巡る弾劾に続く「無罪」にもかかわらず、トランプ氏は「汚名」をそそげたわけではない。
有罪には定数100の上院で出席議員の3分の2(67人)以上の賛成が必要だ。だが評決の結果、民主党全員に、造反して賛成票を投じた共和党の7人を加えた57人にとどまった。与野党が拮抗(きっこう)する上院の議員構成をみれば、有罪のハードルは高く、想定通りの結果と言えよう。
事件直後は共和党内からもトランプ氏の責任を問う声が強まっていた。しかし多くの共和党議員は評決に際し、来年秋の中間選挙なども見据え、共和党支持者の間で強い人気を保っているトランプ氏の影響力を考慮したとみられる。さらに既に大統領を退任しているトランプ氏の「罷免」を問うことへの疑問もあったのだろう。
襲撃事件は、大統領選の結果を確定させる上下両院の合同会議が開かれていた先月6日に起きた。下院の弾劾訴追決議によると、トランプ氏は首都ワシントンの集会で支持者に「死ぬ気で戦わなければ国を失う」などと演説し、議事堂襲撃を意図的に扇動した。
弾劾はわずか5日で終わった。審理が尽くされたとは言い難い。
とはいえ弾劾裁判を通じ、「トランプのために戦う」として暴徒化した支持者らの無軌道ぶりが浮き彫りになった。暴動を扇動したとされるトランプ氏の言動も明らかにされた。
無罪票を投じた共和党議員からもトランプ氏に対する「道義的責任」を指摘する意見が出ている。「有罪にはならなかったが、罪の内容に争いはない」(バイデン大統領)とみるのが妥当であろう。
無罪評決をトランプ氏の「免罪符」にしてはなるまい。下院に事件の独立調査委員会設置の動きがある。責任糾明を期待したい。
裁判終結によって、分断と対立を深めた4年間にわたる「トランプ政治」に一区切りが付いた。私人となったトランプ氏は刑事訴追のリスクを抱え、一族が経営する企業の財務問題など多くの疑惑が取り沙汰されている。
それでもトランプ氏は無罪評決を受け、再起を期す考えを表明した。米政界に影響力が残ることは間違いなく、「国民の結束」を掲げるバイデン氏が分断解消を果たすのは容易ではない。
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