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社説:発電コスト試算 崩れた原子力の優位性

京都新聞 / 2021年7月14日 16時0分

 原発推進にこだわる政府や電力会社が、その根拠としてきたコスト面での優位性が崩れた。

 経済産業省が、2030年時点の各電源の発電コストについて新たな試算を示した。従来、最も安いとされた原子力はコストが膨らみ、事業用の太陽光に「最安電力」の座を譲った。今後のエネルギー政策への影響は必至だ。

 経産省の試算によると、原子力の発電コストは、東京電力福島第1原発事故を踏まえた安全対策費などがかさみ、1キロワット時当たり11円台後半以上になる。前回15年の試算で10・3円以上だったが、1円超割高となる。二酸化炭素(CO2)排出量が液化天然ガス(LNG)火力の2倍に上る石炭火力も排出抑制対策を要し、13円台後半~22円台前半への上昇を見込む。

 一方、事業用太陽光は8円台前半~11円台後半と最安になる。脱炭素化に向け、世界的に普及が進むことでパネルなどの価格低下が進み、大幅なコスト削減を見込める。住宅向け太陽光も9円台後半~14円台前半に下がる見通しだ。

 各電源のコストを比べると、最も安く見込んだ場合、陸上風力やLNG火力なども原子力を下回った。以前から事故処理費を勘案すれば、原子力は割高との専門家の指摘もあったが、初めて経産省が認めた意味は大きい。

 原子力は廃炉や「核のごみ」の処理費など、さらなるコスト増が予想される。上振れの余地が残るのは、原子力だけ発電コストの上限を示さなかった点からも読み取れる。安全性への懸念と併せ、原発の新増設のハードルが一段と高まったのは間違いない。

 コスト面で太陽光が首位に躍り出たとはいえ、課題は多い。

 太陽光は天候や時間帯により発電量が変動し、減少時に備えた蓄電池の整備など対策コストは試算に入っていない。パネル設置に適した土地の確保が難しくなり、山間地では災害リスクもある。

 太陽光の普及には、全国各地に分散した発電所をつなぐ送電網の整備が必要だとされるが、電力は極力「地産地消」を目指すといった発想の転換が必要ではないか。

 政府の中長期的な政策指針「エネルギー基本計画」の策定作業が大詰めを迎えている。

 政府は50年の温室効果ガス排出ゼロに向け、太陽光など再生可能エネルギーを主力電源にする方針を掲げており、コスト面の優位性は追い風となる。再生エネの電源構成目標をどこまで高めるか、政府の本気度が試される。

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