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社説:原発「60年超」 「延命」は安全性軽視だ

京都新聞 / 2021年7月20日 16時0分

 政府が原発運転の法定期間延長を検討していることが明らかになった。「原則40年、最長60年」のルールは、東京電力福島第1原発(福島県)の過酷事故を踏まえた規制の根幹だ。事故の教訓をないがしろにするものではないか。

 政府は2012年6月、原子炉等規制法を改正し、原発の運転期間を原則40年と定めた。例外として原子力規制委員会が審査して認めれば、1回だけ最長で20年延長できる。「40年ルール」導入で廃炉が決まった原発も多い。

 その再延長が浮上した理由の一つが、菅義偉政権が昨年、打ち出した50年の「脱炭素社会の実現」だ。目標達成には、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。

 近く閣議決定される新「エネルギー基本計画」は、太陽光など再生可能エネルギーを主力電源に据える一方、電源構成の原発比率は現行の「20~22%程度」を維持する方針とみられる。

 この発電量を賄うには約30基必要というが、国内の原発は建設中の3基を含め36基。全ての原発を例外的に最長20年延命させても順次、60年の寿命を迎え、50年に23基に、60年には8基だけになる。

 新増設や建て替えには世論の反発が強い。このため、政府は発電量の維持には既存原発を延命するしか道はないとして、来年にも法改正案をまとめる意向のようだ。

 最長で80年間の運転を認める米国など海外事例も参考に、運転期間を長期化したり、審査を経て認められる延長を複数回可能にしたりする案があるという。

 先月、運転開始から44年を超える関西電力美浜原発3号機(福井県)が再稼働したばかりだ。実質的に原則40年の空洞化が進み、一気に「60年超」へと議論が加速することに疑問を禁じ得ない。

 老朽原発の延命には原子炉の耐久性など未知数な点が多い。安全対策の根幹に関わり、原発の「安全神話」復活の兆しなら残念だ。

 今なお原発事故の深刻な影響が残り、原発の安全性に対する国民の不安は大きい。地球温暖化対策を口実にした安易なルール見直しは許されまい。

 原発の稼働延長には、巨額の安全対策費が要る。経済産業省による30年時点の発電コスト試算で、最も安いとされた原子力は費用が膨らみ、太陽光に「最安電力」の座を譲った。欧米では高コストの原発は既にビジネスとしての魅力を失っている。何より国民の多くが稼働延長を求めていない。

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