元校長が名簿を無断使用し卒業生に「布教活動」…違法じゃないの?

シェアしたくなる法律相談所 / 2014年10月26日 12時7分

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宗教案内が昔の校長先生から郵送されてきた……。

10月の半ば、神奈川県にある中学校の元校長が学生の名簿を使用し、宗教家の本や新設される宗教系の大学の案内を元生徒に大量に送るということがありました。受け取った元生徒たちが、ツイッターなどに「変なのが送られてきた…」などと多数投稿したことにより発覚したようです。

元校長が学生の名簿を利用して宗教案内という行為について批判の声が殺到し、元校長は謝罪したようですが、これらの行為に法律上の問題はないのでしょうか。

■憲法上の問題

憲法は、政教分離原則を規定して国家の宗教的中立性を定めており、国及びその他の機関が宗教教育その他のいかなる宗教的活動もしてはならないとされています。

公立学校の現役の校長であれば、生徒や卒業生に宗教の勧誘行為を行うことは、憲法の政教分離原則に反するおそれがあります。

ただし、憲法自体は、政教分離原則違反の罰則を設けて犯罪としているわけではないので、仮に公立学校の現役校長が、公金で宗教本やパンフレットを郵送している場合でも、当該公金支出が無効となる効果が生じるのみであると考えられます。

他方、今回は退職した元校長ですので、宗教勧誘行為を憲法上の政教分離原則違反とみることはできないでしょう。

元校長もしくは宗教団体自身が費用を負担しており、公金支出がない以上は、なおさら、憲法上の問題はないと言わざるを得ません。

なお、私立学校では政教分離はありませんので、現役校長の費用支出があっても憲法違反とはなりません。

■勝手に宗教勧誘をした行為

日本ではあまり意識されていませんが、憲法が保障する信教の自由には、信仰しない自由(入信拒否)と布教する自由の双方が含まれています。

したがって、元校長の宗教勧誘・布教活動は、たとえそれに宗教団体の関与があったとしても、卒業生らに信仰を強制したり、住宅に侵入したりするものでない限り、基本的には適法です。

宗教勧誘を受けた側からすると気分が良くないと思いますが、過去の国家による宗教弾圧の歴史から、憲法では、他者の権利を害さない限り、布教活動を国家が禁止することはできません。

■卒業生名簿の無断使用

本来予定された目的外使用ですが、卒業アルバムを無断で学校から持ち出したわけでなく、それ自体犯罪にはならないでしょう。

ただし、道義的な問題とともに、宗教団体にも提供していれば、民事上プライバシー侵害となる可能性はあります。

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

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