日本のジャーナリズム界に危機。読売新聞の幹部が漏らした弱音とは?

まぐまぐニュース! / 2015年10月14日 11時0分

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軍事アナリストの小川和久さんが配信するメルマガ『NEWSを疑え!』に、読売新聞の幹部が漏らした弱音が紹介されています。曰く、軍事問題に精通したたった1人の記者が定年を待たずに退職してしまったとのこと。他の新聞社を見回しても一定水準に達している軍事記者は不在で、これを小川さんは「日本のジャーナリズムの危機」と記しています。

軍事記者がいない!

さきごろ、読売新聞の幹部が漏らした弱音を聞かされて、考え込まされることがありました。

なんと、世界最大の発行部数(これには議論が分かれますが)を誇る「大読売新聞」には軍事問題全体に目配りできる専門記者が1人しかおらず、そのたった1人の記者が定年を待たずに退職してしまった、というのです。

前号の編集後記にも書きましたように、私は「民主主義機能させ、成熟させる中心はジャーナリズム」という立場です。1日のマスコミ倫理懇談会全国大会の講演でも、それを強調してきました。

特に安全保障問題を判断するには専門知識経験に基づく知見不可欠で、そのためにも毎年1人ずつの軍事記者要員を確保し、育てるほどの取り組みが求められるわけですが、読売新聞にして1人しか軍事記者がいなかったうえ、その虎の子の記者もいなくなったというのですから、愕然とせざるをえません。

惜しまれつつ退職したのは、読売新聞で解説部長などを歴任した調査研究本部主任研究員の勝股秀通氏。勝股氏は防衛大学校の大学院の「卒業生」でもあります。

それというのも、作道光夫氏(防衛大学校11期生、のちの西部方面総監)が陸上幕僚監部の広報室長の時、強い自衛隊実現するには、たとえ敵に回ろうとも強力ジャーナリスト存在不可欠という考えのもと、防衛省担当記者経験者を防衛大学校研究科大学院)に2年間、学んでもらう取り組みを始め、勝股氏はそのトップランナーだったからです。同じ時、朝日新聞からは谷田邦一氏、産経新聞からは中静敬一郎氏が小原台(防衛大学校)で机を並べました。

勝股氏は、請われて日本大学新設する危機管理学部教授に就任、企業広報などを担当するということですが、優秀な人材を得た日本大学にとってはこのうえない喜びであっても、読売新聞、いや、日本のジャーナリズム全体から見て残念な出来事であるのは否定できない事実です。

読売新聞を含めて、勝股氏らに続いて防衛大学校の研究科に学んだ新聞記者がいないわけではありませんが、どの新聞社を見ても、一定の水準に達していると思われる記者皆無といってよいほどです。せいぜいが、流れてくる情報を大きな誤りなく記事にするのがせいぜいで、防衛省・自衛隊に突っ込んだ質問を浴びせたり、国際的な軍事情報を検証することなどを考えると、ほど遠い状態にあるのです。

大げさかもしれませんが、この日本のジャーナリズムの危機を克服するには、一体どうしたらよいものでしょうか。

いちばん手っ取り早いのは、軍事問題研究会常設することではないかと思います。防衛省の担当でも、遊軍や編集委員、論説委員でも構いません。そこで学んだ記者が、軍事記者として独り立ちできる環境を整えるのです。

例えば、朝日新聞が社内に設けているジャーナリスト学校でもよいでしょう。あるいは、新聞と放送各社の「有志連合」が、会社として経費面などを支え、研究会を継続していく形でもよいかも知れません。そういう取り組みをすれば、もともとが優秀な人材ばかりですから、1年もしないうちに見違えるほどの識見を備えるのは間違いありません。

そこから、民主主義を健全に機能させるためのジャーナリズムの能力が備わり、磨かれていくのではないでしょうか。

各社の上層部にお願いしたいのは、軍事問題に関心を持つ記者をオタク扱いし、ラインから遠ざけるような人事は改めてほしいということです。そうしなければ、バランス感覚を備えた優秀な人材が軍事を担当することは実現せず、悪循環を断ち切ることはできないと思います。どうか、ご一考を。

image by: Shutterstock

 

『NEWSを疑え!』第434号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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