「おねしょ」は病気。現役小児科医に聞くメカニズムと治療法

まぐまぐニュース! / 2015年8月30日 0時0分

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誰にも相談できない子どもの悩みの1つにあげられるのが、「おねしょ」。まわりの同じ年頃の子どもはどんどんオムツとサヨナラしているのに、なぜうちの子だけ…。と思いつめる前に、まずは医療機関で原因を診てもらうことが大事なようです。メルマガ『何でも相談こどもクリニック~新たなスタイル~』の著者で小児科医の宮田大揮先生に、おねしょのメカニズムと最新の治療法を併せて教えていただきましょう!

おねしょを科学する!意外と知られていない5つの原因

おねしょは、両親を悩ませるのはもちろんのこと、こどもの自尊心も傷つけていることが多く、実は根深い問題と言えます。

夜尿症(おねしょ)は、女の子に比べて男の子に多く、男児では7歳で11%、10歳で5%、女児では7歳で7%、10歳で3%に認められていると言われています。それほど頻度の高い病気であるにもかかわらず、日本では80%の人が医療機関を受診していないと言われており、ヨーロッパなどで治療を受けている子どもとは雲泥の差があります。

その理由には、

「おねしょで病院にかかるのは恥ずかしい。」

「どこに受診したらよいか分からない」

などが挙げられ、病院を受診しようという気持ちが芽生えてもそれを達成させることができないようです。さらに、勇気を出して受診しても、小児科などで「少し様子を見ましょう」と言われてしまったりして、治療が伸び伸びになってしまうことがあるため結果的に継続的なフォローを受けられないということもあります。

今回、夜尿症(おねしょ)について今一度考えてみて、最新治療について長所と短所をまとめてみたいと思います。

夜尿症は、単一症候性夜尿症非単一症候性夜尿症の2つがあります。難しく書くとこのように書けるのですが、わかりやすく言えば、夜寝ている間にお漏らしをしてしまうだけのものなのか、昼にも漏らしたり、我慢が効かないというタイプなのかという違いになると言われています。やはり、昼にも漏らしてしまうタイプのほうが治りにくいと考えられており、純粋な夜尿症だけではなくそれ以外の病気が隠れていることがあるとも言われています。

では、何故夜尿症というものが起こるのでしょうか?実は複雑な因子が多数関与しているため、単一であることは少ないのですが以下の様な原因が存在すると考えられています。

①夜間の尿量が多い(必要なホルモンの不足)

②夜間の膀胱容量が小さい(尿を貯めておくことができない)

③睡眠障害

④心理的ストレス

⑤膀胱や腎臓の器質的な異常

① 夜間の尿量が多い(必要なホルモンの不足)

夕方以降の水分摂取量が多いと、夜間の尿量が多くなります。しかし、夕方以降の水分摂取量が適当でも、夜間の尿量が多い子どもがいます。夜間の尿量をコントロールするのに重要なのが、抗利尿ホルモンです。これは、脳から分泌されるホルモンで、昼間少なく、夜になると多く出ます。そのため、夜につくられる尿量は昼間につくられる尿量よりも少なくなります。抗利尿ホルモンの分泌のリズムは、通常、成長とともに整ってきますが、夜尿症の子どもの中には、昼間は普通の子どもと同じなのに、夜だけ抗利尿ホルモンの出方が悪いため、夜間の尿量が多くなっていることがあります。

② 夜間の膀胱容量が小さい(尿をためておくことができない)

夜間の膀胱機能は子どもの成長とともに発達していき、夜間は昼間の1回の尿量の1.5~2.0倍はためられるようになり、4~5歳になると夜間トイレに一度も行かなくてもよい位のおしっこをためられるようになります。しかし、夜尿症の子どもの中には、膀胱の機能が未発達で、膀胱のためが小さいことがあります。また、寝る前に排尿しても全部出せずに残尿が残る場合もあります。

③ 睡眠障害

尿意を感じると、夜間に目覚めてトイレで排尿する子どもがいますが、目覚めない子どももいます。子どもが尿意を感じて覚醒できないのは子どもの睡眠が深いためであり正常です。夜間尿量の減少、夜間膀胱容量の増加は睡眠の質に影響されているのではとの考えもありますが、まだ充分に解明されていません。

④ 心理的ストレス

6ヶ月から1年以上の間なくなっていた夜尿が、突然始まる場合は、ストレスが原因となることがあります。下垂体のすぐ上に視床下部というところがあります。視床下部は情緒や感情をコントロールしているところでもあり、自律神経と深くかかわっているため、強いストレスがかかると、自律神経の働きが不調となり、これが夜尿の原因につながることがあります。

⑤ 膀胱や腎臓の器質的な異常

頻度は多くないですが、夜尿症の中には、膀胱や腎臓に器質的な異常が原因であることがあります。昼間もパンツが濡れること(昼間遺尿症)がある場合は、夜尿だけの子どもに比べて、器質的異常が多いことが知られています。

実際には、これらの要因が複雑に関わりあってしまうので治療を難しくしてしまうことがあります。では、それぞれの要因ごとに治療方法を考えて行きたいと思います。

【夜間の尿量が多い場合】

これには、ミニリンメルトと言われる抗利尿ホルモンの内服が有効と言われています。また、バソプレッシンという点鼻の抗利尿ホルモンも以前は使われていましたが、調節性が難しく副作用もでてしまうため現在ではミニリンメルトという薬の方が有用であると言われています。

【夜間の膀胱容量が小さい場合】

バップフォーと言われる大人の過活動膀胱における頻尿にも使用されるお薬により膀胱容量を増やしていくことが有用と考えられていますが、実際には単剤では効果がほとんど得られず、他剤との併用を必要とすると言われています。

【睡眠障害型や心理的ストレス型の場合】

夜尿症を抱えている子供たちの多くに何らかの心理的なストレスがかかっているという報告もあるほどで、いじめなどの問題から保育園のクラスが変わったことなども関与していることがあり夜尿症を引き起こすようなストレスは多彩です。もちろん、このような原因の場合には、十分なカウンセリングを重ねてストレスを軽減してあげることが重要ですが、カウンセリングのみで夜尿症をクリアー出来る場合のほうが少ないため、トフラニールやアナフラニールという薬を併用することで改善されることが多いと言われています。トフラニール、アナフラニールという薬は抗鬱薬ですが、作用機序がわかっていないのですが、なぜか夜尿症に効果が出てくれることが分かっているためかなり昔から使用されており、とても実績のある薬です。

上記のような薬剤治療のみでなく、ヨーロッパを中心にアラーム療法というパンツにおしっこが少量入ってきたらアラーム音で知らせてくれ、起きてトイレに行くということを繰り返すことで、夜尿症を改善し、膀胱容量を改善するという方法があります。治療期間は平均3ヶ月程度と言われていますが、治療成績も良く日本でも専門医が最新治療として紹介し導入事例も増えています。昔は、夜尿症を夜間に起こしてはいけないと指導していたものですが、この治療方法がでてから考え方が大きく変わり、むしろ起こしてトレーニングすることで夜尿症の改善がはやいこともわかっています。我々もアラーム療法はよいとは考えていますが、最大の欠点があり、アラーム音で本人が起きるわけではなく家族が起こしてあげる必要があるので、ご家族の方は寝不足になりますし、ストレスも増大してしまいます。

そのため、ヨーロッパでは第1選択といって一番はじめに行う治療方法ですが、我々はご家族の負担も考慮し、まずは薬物治療を行い超音波検査などを併用してタイプ別診断をしてもどうしても治癒しない場合には、アラーム療法をお勧めしています。機械は無料でお貸ししておりますが、センサーは直接パンツの中に触れるために2000円でお買い求め頂いております。

 

image by:Shutterstock

 

『何でも相談こどもクリニック~新たなスタイル~』より一部抜粋

著者/宮田大揮(相模大野こどもクリニック院長)

現役小児科医/救急医が今まさに流行している病気やそれにまつわる話を余すことなくライブに発信。修羅場を乗り越えてきた筆者が読者の質問にどんどん答えていく、新たなクリニックのスタイル。

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