文科省から不当な圧力。前川氏を許すことのできない黒幕は誰なのか

まぐまぐニュース! / 2018年3月23日 5時0分

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財務省の決裁書の書き換え問題に揺れる中発覚した、文科省による前川前次官への「言論弾圧」とも取れる不可解な動き。同省はなぜ教育現場への介入という「御法度」を破る愚行に出たのでしょうか。メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんは、「官僚だけの判断で行ったとは思えない」としその理由を記すとともに、前川氏の社会活動に激しい敵意を抱いていると思われる政治家の実名を挙げています。

文科省に前川喜平氏の言論を弾圧させた自民党文教族の正体

前文科省事務次官、前川喜平氏はいまや講演者として全国各地から引っ張りだこである。

想像するに、事務次官にまで登りつめると、死ぬまで権力側に身を置きたくなるものだろう。天下り先を渡り歩き、そのたびに高額な退職金をもらう。何もしなければ個室付き、秘書付き、運転手つきのゴージャスな老後生活が待っているのだ。

ところが、前川氏は大いに違う。いい意味での変わり者だ。天下り不祥事の責任を一身に背負って退職したうえ、加計学園の獣医学部新設をめぐる、いわゆる「総理のご意向文書が本物だと証言して官邸に衝撃を与えた。

かと思えば、夜間中学に手弁当で通い、国籍、年齢の違う生徒たちに国語や計算ドリルや英語を教える退職後の暮らしがメディアで話題になった。どんな人なのか、どんな考えなのか。人格、生き方に人々が興味を抱いて不思議はない。

今年2月、名古屋市立の中学校が前川氏を招き、「これからの日本を創るみなさんへのエール」と題する講演会を開いた。前川氏は「学ぶ力や考える力を中学生や高校生の間に身に着けてほしい」などと語った。

穏健、真っ当というほかないこの講演会について、文科省が名古屋市教委に奇妙なメールを送ってきた

前川氏は、文部科学事務次官という教育行政の事務の最高責任者としての立場にいましたが、国家公務員の天下り問題により辞職し、停職相当とされた経緯があります。…在任中にいわゆる出会い系バーの店を利用し…こうした背景がある同氏について、道徳教育が行われる学校の場に、どのような判断で依頼されたのか具体的かつ詳細にご教示ください。

言葉遣いこそ取り繕っているが、中身は恫喝そのものである。「前川なんぞ、なんで呼ぶんだ」と言われているような圧迫感を市教委の担当者は受けたのではないだろうか。講演録や録音データの提供まで求めていた。

不可解なことである。財務省の決裁文書改ざんが問題になっている折も折、文科省が、かつてのトップを、正当な理由もなく公立中学の教育現場から排除しようとする動きを見せたのだ。このところ官界に異常なことが多すぎる。

いったい、各省庁に何が起きているのか。財務省の文書改ざん、文科省の教育現場への介入。どちらも、官僚だけの判断で行ったとは到底思えない。政治の関与がとりざたされるのは当然であろう。

今月16日の野党合同ヒアリングで、文科省は「中日新聞の記事がきっかけとなり外部から照会があった」と認めている。その記事は単に、前川氏の講演会があったことを報じただけだ。誰から照会があったのかと聞かれ、文科省は「差し控える」と答えるのみだった。

だが、毎日新聞が「自民党文科部会に所属する衆院議員」と報じたことで、名古屋を地盤とする同部会の池田佳隆衆院議員の名が浮かびあがった。さらには部会長である赤池誠章参院議員も関わっていたことがわかった。

彼らは前川氏の講演会があった後の2月中旬から下旬にかけて複数回、文科省初等中等教育局に電話したようだ。

「在任中にいわゆる出会い系バーの店を利用し…こうした背景がある同氏について」と文科省が名古屋市教委にあてたメールの文面は、おそらく彼らの言い分をそのまま書いたものだろう。報道によると、文科省は事前に池田議員にメールの内容を見せていたらしい。

今月1日に市教委に授業の報告を求めるメールを送信する直前、池田氏に質問項目を見せ、2カ所についてコメントされたのを「参考にして修正した」という。…赤池氏によると、先月17日に池田氏から前川氏の授業の記事への意見を求められ、藤原官房長にショートメッセージで、授業に問題がないか確認した。

(3月20日毎日新聞)

情けないことに、メールの内容を池田氏に見せ、いわば“検閲を受けたうえで送信したのである。文科省の担当者にすれば、言われた通りにして面倒を回避した赤面もののメールであったにちがいない。

それにしても、正当な理由もなく政府が地方の教育委員会に今回のような問い合わせをすることが、教育基本法の禁じる教育への不当な支配にあたることぐらい、文科省の官僚なら百も承知のはずである。

あえて教育の自主性を奪うような動きをした背景には、第二次安倍政権発足以来、二人の議員も組み込まれている“安倍防衛部隊の威光が霞が関を席巻してしまっている実態がある。

森友、加計学園疑惑で盛んに使われた官僚の「忖度」も、人事権を握り我が物顔でふるまう官邸と、首相をとりまく夜郎自大な参謀たちに対する過度な恐怖心を抜きにしては語れまい

ちなみに赤池誠章氏は日本会議国会議員懇談会の事務局次長であり、池田氏は同会のメンバーだ。そして、事務局長は、“安倍防衛本部”の参謀総長のような風格を漂わせる自民党幹事長代行、萩生田光一氏である。

萩生田氏は福田内閣と麻生内閣で文科大臣政務官をつとめていたことや、押しの強い性格もあって、いまだ同省に睨みをきかせている。その力がバックにあるからこそ自民党文教族が今回のようにやりたい放題できるのである。前川氏の社会的活動を妨害する目的で文科省を使ったとすれば悪質きわまりない。

萩生田氏や赤池、池田両氏は、安倍首相と同様、戦前風の道徳教育への回帰をめざしているお仲間”たちだ。本来なら、いくら彼らから圧力がかかっても文科省が無視すればいいだけのこと。今やその程度の気概さえ失われているようだ。

加計学園獣医学部新設をめぐり萩生田氏が暗躍したこともよく知られている。

2016年10月21日、官房副長官だった萩生田氏は文科省の常盤豊高等教育局長に、獣医学部認可を急ぐよう圧力をかけた。

「農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている。何が問題なのか。官邸は絶対やると言っている」「総理は、平成30年4月開学とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる」

獣医学部新設に慎重だった前川事務次官がいわゆる“石破四条件”を盾に抵抗するのをみて、萩生田氏が総理の意向を示し押し切ろうとしたものだ。

萩生田氏はいうまでもなく、今井尚哉総理秘書官と並ぶ、安倍首相の側近中の側近だ。加計学園系列の千葉科学大名誉客員教授でもある。

その萩生田氏にとって、前川氏は許すことのできない存在であろう。「総理のご意向」文書について前川氏が証言したことから、加計学園疑惑に一気に火がつき、萩生田氏自身の関与も追及されることになったからだ。

なにより、事務次官という政府の要職にあった者が、安倍首相の政治に異を唱えるなど、萩生田氏のメンタリティからして、我慢ならないことに違いない。安倍首相への彼の忠誠心は比類なきものに見える。

おそらく萩生田氏のシナリオでは、読売新聞にでっち上げられた出会い系バー通いの記事で前川氏が失脚するはずだったであろう。

ところが、それどころか前川氏は論旨明快な国会での説明などを経て、逆に多くの国民から勇気を讃えられる存在になった。おまけに、各地での講演のたびに、加計学園問題はもちろんのこと、憲法や安保などについて安倍政権の姿勢を批判している。

思惑が外れた萩生田氏とその仲間たちは前川氏の社会活動に激しい敵意を抱いているのではないか。今回の教育介入事件は、その怨念の噴出と捉えることもできよう。

萩生田氏が自民党内で存在感を示しはじめたのは総裁特別補佐だった2014年ごろからだ。同年の党本部新年仕事始めは、萩生田氏の進行により「君が代斉唱ではじまった。結党以来、初めてのことだった。当時の石破幹事長の意思さえ無視する傍若無人な態度は記者たちの間で話題になった。

その政治手法は、とにかく安倍批判勢力を抑え込むことだ。総選挙直前の2014年11月20日、筆頭副幹事長だった萩生田氏は報道局長と連名で在京テレビ各社あてに、脅しとしか思えない文書を送りつけている。

衆議院選挙は短期間であり、報道の内容が選挙の帰趨に大きく影響しかねないことは皆様もご理解いただけるところと存じます。また、過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、それを事実として認めて誇り、大きな社会問題となった事例も現実にあったところです。

非自民の細川連立政権が誕生した衆院選におけるテレビ朝日の報道を引き合いに出して、少しでも自民党に不利な報道をしたら承知しない、という姿勢を露骨に示した申し入れ文書だった。今回、赤池、池田両氏が文科省に圧力をかけて名古屋市教委に出させたメールに共通するやり方だ。

極右思想に染まった自民党文教族に、これほどまで日本の教育行政がゆがめられている。「国のために命を賭けよ」と説く総理大臣の野望をかなえるため、そのチルドレンたちが凝り固まった道徳観をこの国の教育に注入しようとしている。

野党が赤池、池田両氏の参考人招致を求めているのは当然のことだが、元凶は森友、加計問題と同じく、安倍首相自身であろう。

image by: WikimediaCommons(文部科学省)

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