米英仏がわかりやすく「シリア攻撃」、真のターゲットはプーチン

まぐまぐニュース! / 2018年4月17日 4時30分

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現地時間の4月14日に行われた、米英仏によるシリア攻撃。アサド政権の化学兵器の使用に対する対抗措置とされていますが、この英米仏サイドの「攻撃理由」を鵜呑みにしていいものなのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、シリアの内戦は米ロの代理戦争と位置づけ、プーチン大統領に対するアメリカの巧妙な戦略を紹介、その内容は「80年前の対日戦略」と変わらないとしています。

米英仏、シリア攻撃~真のターゲットはプーチン

皆さんご存知と思いますが、アメリカ、イギリス、フランスが、シリアを攻撃しました。

米ミサイル攻撃105発 シリア化学兵器施設3拠点に

朝日新聞DIGITAL 4/15(日)1:11配信

 

トランプ米政権は13日、シリアでアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、報復として米軍が英仏との共同作戦で化学兵器関連施設3拠点をミサイル攻撃し、破壊したと発表した。米国防総省は14日に会見を開き「全てのミサイルが目標に到達した」と強調。一方、アサド政権を支援するロシア軍に損害が出ないよう攻撃対象は慎重に選ばれたが、ロシアは強く反発しており、米ロの緊張が高まるのは避けられない。

アメリカがシリアをミサイル攻撃するのは、昨年の4月につづいて2回目。前回も、「アサドが化学兵器を使ったこと」が名目上の理由でした。前回と今回の違いは、イギリスとフランスが攻撃に参加したことですね。

この話、「今日はここまで、さようなら」ともいえる話です。しかし、「過去からの流れ」と「グローバルな動き」を見ると、何が起こっているかはっきりわかります。

「米ロ代理戦争」としての「シリア内戦」

振り返ってみます。シリア内戦は、2011年にはじまりました。「アラブの春」が流行っていた頃です。欧米、サウジアラビア、トルコなどは、「反アサド派」を支持しました。一方、ロシア、イランは、アサドを支援しました。この内戦は、最初から大国同士の「代理戦争」だったのです。

ロシアとイランがバックにいるので、アサドはなかなか倒れない。我慢の限界に達したオバマは2913年8月、「アサドを攻撃する!」と宣言します。ところが、同年9月、「やっぱりアサド攻撃やめた!」と戦争をドタキャンし、世界を仰天させました。これでオバマは、「史上最弱のアメリカ大統領」と批判された。

なぜ「ドタキャン」したのでしょうか? 理由は二つありました。一つは、プーチンが、「アサドは化学兵器を使っていない!」という情報を大拡散したこと。

プーチン大統領は記者会見で「シリア政府がそのような兵器を使ったという証拠はない」と述べた。また、シリア反体制派に武器を提供するという米の計画を批判し、「シリア政府が化学兵器を使ったとの未確認の非難に基づいて反体制派に武器を提供するという決定は、状況をさらに不安定化させるだけだ」と語った。

 

プーチン大統領はまた、反体制派が化学兵器を使ったことを指し示す証拠があるとし、「われわれは化学兵器を持った反体制派がトルコ領内で拘束されていることを知っている」と述べた。さらに、「反体制派が化学兵器を製造している施設がイラクで発見されたという同国からの情報もえている。これら全ての証拠は最大限真剣に調査される必要がある」と強調した。

(ウォール・ストリート・ジャーナル2013年6月19日)

世界ではいまだに、「アメリカは『イラクに化学兵器がある!』とウソをついて戦争を開始した」記憶が新しい。それで、「オバマは、ウソをついてるんちゃうの?」と慎重になった。

そして、第2の理由は、イギリスがオバマを裏切ったこと。

シリア軍事介入 英、下院否決/米、対応苦慮/仏、参加崩さず

【ベルリン=宮下日出男、ワシントン=小雲規生】

 

シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑で、英下院は軍事介入に道を開く政府議案を否決した。有志連合による介入を準備してきたオバマ米政権には痛手となる。

(産経新聞 2013年8月31日)

こうしてオバマは、「プーチンのせい」で戦争ドタキャンに追いこまれた。「オバマはうそつきだ!」と大胆に主張するプーチン。オバマは激怒したことでしょう。

「戦争ドタキャン事件」から2カ月後の2013年9月、ロシアの隣国ウクライナで、「反ヤヌコビッチ大統領デモ」が起こります。ヤヌコビッチは、「親ロシア」。そして2014年2月、革命が起こり、「親ロシア」ヤヌコビッチが失脚。激怒したプーチンは、同年3月、「クリミア併合」をして世界を仰天させました。

「シリア戦争ドタキャン直後」に起こったこの事件。普通に考えても、「偶然じゃないよね」と思えるでしょう。

そのとおり。「ウクライナの革命は俺がやったのだとオバマは認めています。「ロシアの声」2015年2月3日付から。

オバマ大統領 ウクライナでの国家クーデターへの米当局の関与ついに認める

 

昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきたからだ。

「う~む本当だろうか~~???」

それでも信じることができない人は、「YouTube」で「Obama admits he started Ukraine revolution」を検索してみてください。

シリアに話を戻します。シリアには、「アサド派」と「反アサド派」があった。ところが、「戦争ドタキャン」後、新たな勢力が台頭してきた。それが、いわゆる「イスラム国」(IS)。ISは、「反アサド派」から独立し、勢力を急速に拡大していきました。

ISは、残虐行為とテロを繰り返す。オバマも放置できなくなり、2014年8月、「IS空爆」を開始します。ところが、ISは、依然として「反アサド」でもある。それで、「ISは敵で味方」という変な状態になった。結果、アメリカの空爆はまったく気合が入らず、ISの勢力は拡大する一方でした。

2015年9月、プーチン・ロシアがIS空爆を開始。プーチンの目的は、「同盟者アサドを守ること」。オバマのような迷いがないので、ISの石油関連施設を容赦なく空爆した。それで、ISは、弱体化したのです。

「戦術的勝利」をおさめたプーチン

さて、シリア、ウクライナにおける米ロ代理戦争は、現状どうなっているのでしょうか?

思いだしてください。ロシアは、アサドを支援する。アメリカは、反アサドを支援する。アサドは、いまだにサバイバルしています。フセインやカダフィのように殺されてもおかしくないのに、まだ政権を維持している。それどころか、アサドは、ロシアとイランの支援を得て、IS、反アサド派を駆逐し、ほぼ全土を掌握するまでになっています。

そう、プーチンは、シリアで米ロ代理戦争勝っているのです。実際、彼は2017年12月11日、シリアで「勝利宣言」を行い、ロシア軍撤退を命じています。

ウクライナは? まず、ウクライナからクリミアを奪った。東部ドネツク、ルガンスク州は、事実上の独立状態を維持している。こちらの方も勝っています

アメリカのターゲットは、プーチン

しかし、プーチンは、一瞬たりともリラックスできません。なぜ?

クリミア併合後、ロシアは、「経済制裁原油価格暴落」ボロボロになってしまった。2018年3月1日、プーチンは、「裏世界史的大事件」を起こします。年次教書演説で、フロリダ州を攻撃する映像を見せアメリカを脅したのです。

「フロリダ州を核攻撃」のビデオ、プーチン大統領が演説に使用

CNN.co.jp 3/2(金)10:40配信

(CNN)ロシアのプーチン大統領は1日に行った演説の中で、無限射程の核弾頭が、米フロリダ州と思われる場所を狙う様子をアニメーションで描写したコンセプトビデオを披露した。フロリダ州には米国のトランプ大統領の別荘がある。

プーチン大統領は演説の中で、極超音速で飛行でき、対空システムも突破できる「無敵」ミサイルを誇示。「ロシアやロシア同盟国に対する核兵器の使用は、どんな攻撃であれ、ロシアに対する核攻撃とみなし、対抗措置として、どのような結果を招こうとも即座に行動に出る」と強調した。プーチン大統領が披露したビデオでは、何発もの核弾頭が、フロリダ州と思われる場所に向けて降下している。

(同上)

この演説で、欧米の指導者たちは、「反プーチンで一体化してしまいました。3月4日、ロシアのスパイでありながらイギリス諜報に情報を流していた「ダブルスクリパリさん殺害未遂事件が起こります。メイ首相は、即座に「これはロシアがやった!」と宣言しました。3月18日、プーチン、大統領選で圧勝。3月26日、欧米を中心に25か国が「ロシア外交官追放」の決定を下します。ロシアは、即座に報復しました。4月6日、アメリカ財務省は、対ロシアで新たな制裁を発動

<米国>対露制裁対象に38個人・団体 対決鮮明に

毎日新聞 4/6’金)23:45配信

【ワシントン高本耕太、モスクワ大前仁】米財務省は6日、2016年米大統領選介入を含むサイバー攻撃などロシアの対外「有害活動」に関与したとしてロシアの計38個人・団体に対する制裁措置を発表した。

 

オリガルヒ(新興財閥)関係者や政府高官らプーチン大統領の周辺人物の多くを対象としており、ロシアとの対決姿勢を鮮明にした。

この制裁ですが、すでにアメリカ国内で「資産凍結」がはじまっているようです。そして、「プーチンの友人たちがターゲットになっている。

4月14日、アメリカ、イギリス、フランスは、ロシアの同盟国シリアをミサイル攻撃。アメリカは、さらにロシア制裁を強化する方針です。

米、露企業に制裁方針…シリアの化学兵器関連

読売新聞 4/16(月)1:33配信

 

【ワシントン=大木聖馬】ヘイリー米国連大使は15日、米CBSテレビのインタビューに対し、シリアのアサド政権の化学兵器開発・使用をロシアが支援していたとして、米政府が16日にも独自の制裁を発動する方針を明らかにした。ロシアが反発し、米露関係がさらに冷え込むのは必至だ。

アメリカの巧妙な戦略

プーチンに対するアメリカの戦略は、非常に巧妙です。

〇 情報戦=プーチン悪魔化せよ!

例をあげれば、

  • プーチンは、国家ぐるみのドーピングを指示した?
  • プーチンは、化学兵器を使って、裏切り者を消した?
  • プーチンは、アサドに化学兵器を使わせた?

〇 外交戦=プーチンを孤立させろ!

スクリパリ暗殺未遂を受け、25か国がロシア外交官を追放

今回は、アメリカ単独ではなく、英仏がシリア攻撃に参加

〇 経済戦=制裁をますます強化し、ロシア経済を破壊しろ!

  • クリミア併合
  • ロシアによるアメリカ大統領選介入疑惑
  • スクリパリ暗殺未遂
  • アサド支援

などなど、とにかく口実を見つけどんどん制裁を強化していく。プーチンが、アグレッシブになれば、またそれが「制裁強化」の口実になる。アメリカは、「軍事力」を使わずにプーチンを追いつめている

皆さん、「なんでアメリカは、アサド排除を目指さす、一日で攻撃を止めたのだろう?」と考えませんでしたか?

別にアサドが政権にいてもいいのです。彼が次回、シリアにわずかに残った反アサド派を攻撃する。すると、米英仏は、「アサドは、また化学兵器を使った!」といって、ミサイル攻撃するでしょう。そして、またロシアが反発する。欧米は、「ロシアは、アサドが化学兵器を使うのを容認している!」と宣言し、ますます制裁を強化するでしょう。

今のアメリカの対ロ戦略は、80年前の対日戦略と変わりません

image by: Flickr

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