【書評】なぜ元監察医は「自殺の9割は他殺」と声高に叫ぶのか?

まぐまぐニュース! / 2018年5月22日 3時2分

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いじめや過労などを原因とする自殺者の数が増加の一途をたどる日本。この「自殺」を、「9割は他殺である」とした元東京都監察医務院長による衝撃的な著書を、無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しています。過激なタイトルの書籍ですが、一体どのような内容なのでしょうか?

412oy4WkicL『自殺の9割は他殺である』

上野正彦・著 カンゼン

上野正彦『自殺の9割は他殺である』を読んだ。著者は元東京都監察医務院長・医学博士。真っ白な本、タイトルなどは真っ黒、白と黒がクッキリしたまことに潔い装幀である。これまで「自殺は他殺だ」という表現を控えてきたが、いじめによる自殺老人の自殺が増えてきたことで、ついに言わざるを得ない時が来てしまった。この本で弱者救済に貢献したいという。

今日の日本では、自殺の原因が厳しく追及されていない自殺に事件性はなく本人の意志で死を選んでいるため、動機が問題視されない。だが、いじめ自殺は自己責任で死んだのではない。いじめの加害者によって追いつめられ、殺されたのだ。自殺だからといって、学校も教育委員会も警察も、誰ひとりとしていじめた者と自殺との因果関係を調べず、曖昧なまま放置してきたからだ。

警察は民事不介入だから、事件性がなければ動かない。では、誰が自殺の原因を明らかするのか、著者は法医学者がその役割の一端をになうべきだと主張する。この人は自分で首を吊って自殺しているが、原因あるいは動機を見ればほとんど他殺である……法医学者がこのように積極的に発言していくことで、死者の人権は守られ自殺に対する社会の意識も変わるのではないかという。

法医学者が死者の側に立ち、その声なき声を聞いて「なぜ自殺するしかなかったのか」という本当の理由を世の中に伝えなければならない法医学者は亡き人の代弁者である。解剖を通して死体と向き合う監察医は、法医学の専門家である。死体を見るプロである。検死すれば真相が分かってしまうのだ。

死体から死亡推定時間を割り出し、死体から殺害現場を導きだし、死体から犯人像を推理する。自殺か他殺かを見分ける方法まで詳述している。首吊り自殺の見極め方、飛び降り死体の見極め方、飛び込みによる死亡の見極め方、水死体の見極め方、焼死体は事故か他殺かの見極め方……一般人にとって必要かどうかわからない見極めノウハウまで披露してくれる。これは実用記事なのかな?

著者は30年にわたって監察医を務めた。検死を通して法医学の面白さに気づき、監察医という仕事に大きなやりがいを見出したからだ。死体の状態から、自殺か事故かあるいは他殺なのかを見極めるのが仕事である。死体所見から「実は私は殺されたんです」という、被害者の叫び声を聞き取ることができた。

監察医は、もの言わぬ死者の声を正確に聞き取る「死者の通訳」のような存在である。しかし、監察医は不足している。監察医制度にも地域格差がある。また、社会の変化に対応できない法制上の問題がある。変死体の概念の甘さが犯罪を見逃す原因である。筆者は新しい検視官制度の導入を提案している。

「監察医は死者の名医でなければならない」「状況に惑わされずに、死体所見から得られた事実をきちんと主張する。状況は後からいくらでも偽装できるが、死体は死亡時の生活反応を残すので、死後の偽装はできない。また、生きている人間は嘘をつくが、死体は絶対に嘘をつかない」「どんな方法であれ、楽にキレイに自殺できるという方法はない」と筆者は断言する。とくに自殺については重要な指摘だと思う。

編集長 柴田忠男

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