米中貿易戦争で強気の姿勢崩さずも、すでに敗北の軌道に乗る中国

まぐまぐニュース! / 2018年10月22日 4時30分

写真

米中貿易戦争の今後の展開については様々な議論がなされていますが、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんはどう見ているのでしょうか。北野さんは今回、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、中国情勢に詳しいミンシン・ペイ教授の解説を引用しながら、習近平政権が崩壊に向かっているという「事実」を解説しています。

中国がアメリカに勝てない3つの理由

米中貿易戦争が、米中覇権争奪戦争に転化してきた。少し前までは、「は??トンデモ?」という反応でしたが、今では、「ですよね~~~~~」というリアクションに変わってきました。

で、アメリカと中国どっちが勝つの?これについて、10月15日号「日本の岐路」の最後にこう書きました。

「というか、中国が勝つというシナリオはないですか?そんなことを主張している、人たちもいますが…」。ありません。

今回は、「なぜ中国は勝てないのか?」をクレアモント・マッケナ大学のミンシン・ペイ教授が解説してくださいます。出所は、産経新聞10月16日付。

ソ連の興隆と崩壊

皆さんご存知のように、世界初の共産国家ソ連は、1917年の「ロシア革命」で誕生しました。ソ連は、第2次大戦中、アメリカ、イギリスと組んでナチスドイツをぶちのめした。それで、戦後は、一気に勢力を拡大します。東欧、中国、北朝鮮などを共産化した。そもそも共産国家の「国是」は、「資本主義を打倒して共産主義世界をつくる」こと。資本主義、民主主義の国々とソ連が対立するのは必至でした。

米ソ冷戦初期のころ、ソ連がやがて米国を追い越すことになると考えられていた。共産主義が欧州に浸透し、ソ連経済は今の中国のように年6%近い成長だった。ブレジネフ時代には550万人の通常兵力を持ち、核戦力で米国を追い抜き、ソ連から東欧向けの援助が3倍に増えた。

(同上)

そうなんです。かつて、「ソ連はアメリカを追い越すと思われていた。私が子供だった70年代は、そんな風に考えられていました。今では、想像もできませんね。

だが、おごるソ連システムに腐食が進む。一党独裁体制の秘密主義と権力闘争、経済統計の水増しなどどこかの国とよく似た体質である。やがてソ連崩壊への道に転げ落ちていった。

(同上)

メインテーマではないので、簡単に書いていますが。80年代になると、ソ連は急速に衰退していきました。レーガンさんは、ソ連を「悪の帝国」とよび、対決姿勢を鮮明にした。サウジアラビアの協力をとりつけ(ソ連の主要な外貨収入源である)原油価格を下げた。さらに軍拡競争をソ連にしかけ、同国経済を破壊した。ソ連は1979年、アフガンに侵攻。この無益な戦争も、ソ連の寿命を縮めました。

習近平の独裁は、ソ連崩壊を繰り返さないため

ソ連共産党が91年に崩壊したとき、もっとも衝撃を受けたのが中国共産党だった。彼らはただちにソ連崩壊の理由を調べ、原因の多くをゴルバチョフ大統領の責任とみた。

(同上)

実をいうと、大変多くのロシア人も(おそらくプーチンも)「ゴルバチョフのせいでソ連は崩壊した」と考えています。私が90年、モスクワに留学したとき、メチャクチャ驚いたことが2つありました。1つは、ソ連人が、例外なく「親日」だったこと。2つ目は、日本で愛されていたゴルバチョフの人気が全然なかったこと。

中国は、ソ連崩壊から、どんな教訓を得たのでしょうか?おそらく「ゴルビーはリベラルすぎた」というのが、最大のものでしょう。それが、習近平の政策に影響していると考えられます。

ゴルビーは、民主化を進め、ソ連は崩壊した。それで習は、独裁化を進めている。ゴルビーは、言論自由化を進め、ソ連は崩壊した。それで習は、言論統制をますます強化している。ゴルビーは、国家の経済への介入を弱め、ソ連は崩壊した。それで習は、経済への介入をますます強めている。要するに、習近平はゴルバチョフと正反対のことをしている。といっても、それでうまくいくわけではなさそうです。

中国三つの弱点

ミンシン・ペイ教授は中国の3つの弱点をあげています。

中国はまず、ソ連が失敗した経済の弱点を洗い出し、経済力の強化を目標とした。中国共産党は過去の経済成長策によって、一人当たりの名目国内総生産(GDP)を91年の333ドルから2017年には7,329ドルに急上昇させ「経済の奇跡」を成し遂げた。他方で中国は、国有企業に手をつけず、債務水準が重圧となり、急速な高齢化が進んで先行きの不安が大きくなる。これにトランプ政権との貿易戦争が重なって、成長の鈍化は避けられない。しかも、米国との軍拡競争に耐えるだけの持続可能な成長モデルに欠く、とペイ教授はいう。

  • 国有企業に手をつけない
  • 債務水準が重圧
  • 急速な高齢化
  • 貿易戦争

成長の鈍化は避けられないと。「急速な高齢化」について、「一人っ子政策」がつづいていたので、理解できますね。日本以上のスピードで高齢化が進んでいきます。

債務について。国有企業の債務残高は2017年末、GDP比159%。さらに家計債務も膨大。中国の家系債務の対可処分所得比率は107.2%。これは、リーマンショック直前のアメリカ家計債務の水準に近いレベルだそうです。

第2に、ソ連は高コストの紛争に巻き込まれ、軍事費の重圧に苦しんだ。中国もまた、先軍主義の常として軍事費の伸びが成長率を上回る。25年に米国の国防費を抜き、30年代にはGDPで米国を抜くとの予測まである。だが、軍備は増強されても、経済の体力が続かない。新冷戦に突入すると、ソ連と同じ壊滅的な経済破綻に陥る可能性が否定できないのだ。

(同上)

2017年の軍事費をみると、アメリカ、6,097億ドル。中国、2,282億ドル(ストックホルム国際平和研究所の推計)。中国の軍事費は、日本の防衛費454億ドルの5倍です。一方、アメリカの軍事費は2017年、GDP比で3.15%。中国は、1.91%で、メチャクチャ多いというわけではありません。

問題は、

軍備は増強されても、経済の体力が続かない。

という部分なのでしょう。

第3に、ソ連は外国政権に資金と資源を過度に投入して経済運営に失敗している。中国も弱小国を取り込むために、多額の資金をばらまいている。ソ連が東欧諸国の債務を抱え込んだように、習近平政権は巨大経済圏構想「一帯一路」拡大のために不良債権をため込む。確かに、スリランカのハンバントタ港のように、戦略的な要衝を借金のカタとして分捕るが、同時に焦げ付き債務も背負うことになる。これが増えれば、不良債権に苦しんだソ連と同じ道に踏み込みかねない。

(同上)

ソ連は、それこそ世界中を支援していたのですね。東欧、中東、アフリカ、東アジア、東南アジア、中南米。それに、資本主義国の共産党まで。「世界を共産化する!」なんて決意すると、金がいくらあっても足りません。中国も、「中国の夢」とかいいはじめたので、金がかかります

というわけで、ペイ教授の説をまとめると、

  1. 「国有企業に手をつけない」「債務水準が重圧」「急速な高齢化」「貿易戦争」で成長の鈍化は避けられない。
  2. 軍拡が経済を圧迫する。
  3. 一帯一路構想で、不良債権が膨らむ。

結局、「経済的に破たんする」という話なのですね。ペイ教授の結論は?

かくて、ペイ教授は「米中冷戦がはじまったばかりだが、中国はすでに敗北の軌道に乗っている」と断定している。

(同上)

同感です。近々訪中される安倍総理。くれぐれも、中国に接近しすぎないようご注意ください。軍事同盟国アメリカから「シンゾーは裏切り者」と思われないように。

image by: Flickr

MAG2 NEWS

まぐまぐニュース!

トピックスRSS

ランキング