大罪は構造改革サボり。安倍政権を感情論、印象論抜きで評価する

まぐまぐニュース! / 2019年2月12日 4時30分

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現在歴代5位、2月末には吉田茂を抜く在職日数となる安倍総理。この長期政権をどう評価するべきか考察するのは、米国在住の作家で、メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の著者、冷泉彰彦さんです。冷泉さんは、「とにかく嫌い」や「キケンなイメージ」などの感情論や印象論では「停滞」するだけだと警鐘を鳴らし、8つの評価項目を掲げて、自身の考えを述べています。

長期政権となった安倍内閣、どう評価したらいいのか?

長期政権の弊害というような言い方で、批判材料にされることが多くなった安倍政権ですが、実際にどのぐらい長くなっているのかを検証してみましょう。

まず比較的短命だった第1次政権ですが、2006年から07年にかけてちょうど1年の在任期間でした。その後は、福田、麻生と自民党の内閣が続いたものの選挙で大敗して民主党の鳩山、菅政権の間は、自民党は下野していたわけです。 そして、自民党が政権復帰して第2次安倍政権が発足したのが2012年12月ですから、現在まで満6年と2ヶ月。つまり1次と2次を合わせると7年2ヶ月になります。在職日数ということですと、歴代5位になっていて、今月末には吉田茂を抜くんだそうです。ということは、文字通り長期政権になっていると言えます。

では、この安倍政権をどう評価したらいいのでしょう? その前に、安倍総理のことが嫌いという人は結構いるように思います。とにかく理屈抜きで嫌いとか、その結果として「アベ政治を許さない」とか言っているグループです。 この人たちの場合は、例えば「戦犯である祖父の岸信介の名誉回復をしたがっていて危険」だとか「憲法改正を夢見ていて危険」「若い時勉強していないので、頼りなくて危険」「日本会議に支持されていて危険」「慰安婦問題で国内向けにはタカ派、アメリカ向けにはハト派的な二枚舌を使い分けていて危険」というような「キケン」イメージを勝手に抱いていて、その結果として「嫌い」という感情論に凝り固まっているわけです。

確かに、第1次安倍政権についてはそのようなイメージを持たれても仕方のない面はありました。ですが、一方的にそんな印象論で停滞していてもダメだと思います。というのは、それこそ美濃部達吉とか昭和天皇の信奉していた「機関説」に立って「安倍内閣機関説」を考えてみるのであれば、それは非常に複雑な姿をしており、単純に右派政権とはみなせないからです。

安倍政権、特に第2次については、次のような認識をするのがいいのではないかと思います。

まず1つ目は、極めて国際協調型の政権であり、多角的な外交という点でまずまずの成果を挙げていると言って良いと思います。TPP11にしても、日欧FTAにしても立派です。

2つ目は、アメリカの無理難題や迷走を、世界の同盟国の中で一番上手に「さばいて」いる政権だということです。オバマとの相互献花外交、トランプとの「付かず離れず」外交、どちらも現時点では十分に評価が可能です。F35と地上イージスはもっと値切るべきでしたが。

3つ目は、保守イメージを逆手に取って、日本国内の保守世論を「黙らせる」効果を発揮した政権ということです。元号の前倒し発表、日韓合意(結果はダメになりつつあるにしても)、外国人労働者導入など、左派政権がやれば右派が黙っていないような問題を、黙らせながら実行しているのは、評価に値します。

4つ目は、極めてハト派の経済政策を進めた結果、景気の大破綻を回避できた政権ということです。アベノミクスについて、特に第一の矢については、少なくとも失政ではないと思います。同時に消費税率アップに関する基本的な慎重姿勢も評価せざるを得ません。

5つ目は、これは悪い点ですが、徹底的に構造改革をサボっている政権、むしろ構造改革を先送りにしている政権と言えます。これは大罪ですし、総理ご本人に改革イメージがないということも含めて、最大の問題点だと思います。

6つ目は、何でも取り込んでしまって政策論争を無効にしてしまう。いわば、イオンの巨大モールのような政権ということです。実行可能なゾーンで勝負しているということでしょうが、結果的に対立軸が消滅して、政権選択の機会を有権者から奪っているとも言えるからです。

7つ目は、後継のイメージがしにくいという大問題を抱えた政権だということです。佐藤政権末期は、それでも三角大福という大物政治家が必死になって戦っていましたが、現在は「国を背負う決意」を見せている後継候補がいないわけです。これは大変な問題で、安倍チルドレンはいても、安倍学校にはならなかった訳で、これは歴史的には厳しい点がつきそうです。

8つ目は、歴史に残す「レガシー(遺産)」探しに困っている政権ということです。憲法改正や日ロ平和条約など、大きな成果を「花道に」という意識が強すぎて、下手をすると政権の出口が不恰好になってしまう危険も感じます。

ということで、全体的には4勝4敗で五分というのが現在の安倍政権への評価だと思います。詳しい論評は、また次号以降で続けて参りたいと存じます。

image by:Alexandros Michailidis, shutterstock.com

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