本当は恐ろしい「子無し夫婦」の相続。親兄弟に取られる可能性も

まぐまぐニュース! / 2019年2月18日 4時45分

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「遺産相続を巡るいざこざなど自分とは無関係の話」と思っている方、そうとばかりも言っていられないようです。特に子供がいない夫婦は注意が必要、とするのは、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』でその理由を明らかにするとともに、「子無し夫婦」における遺言書の必要性と「夫婦間の生前分与」の有用性を記しています。

実は恐ろしい“子無し夫婦”の相続

最近は、結婚をしても子供をつくらない夫婦も増えています。また、子供が欲しくても出来ないという夫婦もたくさんおられます。相続においてこの子供のいない夫婦特に注意を要します。というのも、子供が一人でもいれば、相続は、夫婦と子供だけの間で収まりますが、子供がいなければ、相続は両親や兄弟にまで法定相続人の範囲が広がってしまうのです。法定相続人というのは法律で「遺産をもらう権利」が保証されている人たちです。つまり、子供がいない夫婦の場合、夫婦のどちらかが死んだときに夫婦の財産親や兄弟が遺産として請求できるようになるのです。

「自分は資産を持っていないから大丈夫」などと思っていたりすれば、大変なことになります。遺産相続というのは、別に資産家だけに発生するものではありません。ほんの小さな家、ほんのわずかな預貯金も、法律的には「遺産」とみなされます。だから、小さな家につつましく暮らしていた夫婦の一方が突然死んだ場合、その夫婦の家やわずかな預貯金が相手の親や兄弟に取られてしまうこともあるのです。恐ろしいでしょう?

普通は、親や兄弟に相続が発生することはありません。親や兄弟といっても、別の世帯なわけですし、昨今では金銭的な世話などもほとんどないものです。しかし、夫婦に子供がいない場合は、夫婦のどちらかが死んだとき、親や兄弟にまで相続の権利が発生するのです。夫婦の財産は、夫婦で築き上げたものであり、夫婦と子供以外の者がそれをもらう権利はないはずです。しかし、現在の民法では、夫婦に子供がいない場合は夫婦の両親にも相続権が発生し、両親が死亡している場合は、夫婦の兄弟に相続権が発生するのです。

この民法の規定は、明治時代につくられたものです。まだ兄弟間で、経済的な結びつきが強かった時代の法律なのです。戦前は、兄が弟妹などの経済的な面倒を見るのは当たり前でしたし、兄弟間で経済的な結びつきがあるのは普通のことでした。だから、兄弟間で相続権があってもおかしくはないでしょう。

が、現代は、兄弟間で経済的な結びつきがあることは非常に稀ですし、結婚してからはまったく別世帯になっていることがほとんどです。にもかかわらず、「兄弟間の相続権」というのが、そのままになっているのです。子供がいない夫婦ならば、相続権は配偶者のみにしておけばいいものです。しかし、民法は明治時代からあまり大きく変えられておらず、時代にそぐえていない部分が多々あるのです。そして、相続税法でも、民法に基づいて法定相続人が設定されています。だから、兄弟側から見れば相続権はまっとうな権利」のように見えてしまうのです。

仲のいい兄弟であれば、相続権を主張したりしないことも多いでしょう。が、あまり仲がよくなかったり疎遠だった兄弟ほど相続権を主張することが多いのです。兄弟側から見れば、この相続権というのは、「棚からボタモチ」のものです。兄弟間で何の金銭的な援助などをしていなくても、相続の権利が発生するのです。つまり、何にもしていないのに、金銭的な恩恵を得る可能性がでてくるわけです。

人というのは、弱いもので、そういう利権については思わず飛びついてしまうのです。だから、ほんの小さな一軒家でつつましやかに生活していた夫婦が、子供がいないばかりに、夫が死んだときに夫の兄弟に相続権が発生し、夫の兄弟から家の権利4分の1分のお金をよこせと言われるようなケースはけっこうあるのです。

子供のいない夫婦の「法定相続人」の範囲とは?

子供のいない夫婦で、どちらかが先に死亡した場合、法定相続人は以下のようになります。

1.被相続人(資産を残して死亡した人)の両親が生きている

この場合は、配偶者と両親が法定相続人になります。法定相続割合は、配偶者が3分の2で残りの3分の1を両親が分け合うことになります。

2.相続人(資産を残して死亡した人)の両親は死亡しているが兄弟がいる

この場合、配偶者と故人の兄弟が法定相続人になれます。法定相続割合は、配偶者が4分の3で残りの4分の1を故人の兄弟で分け合うことになります。ただし親子関係以外の兄弟姉妹などが法定相続人になった場合、相続税は2割加算されることになっています。

3.被相続人の両親は死亡し兄弟も死亡しているが兄弟の子供(甥や姪)がいる

兄弟が死亡している場合でも、その兄弟に子供がいればその分を代襲相続することになります。つまり、被相続人から見れば、甥や姪が法定相続人になるのです。

たとえば、被相続人に弟が二人いて、そのうち一人は死亡していて、その死亡した弟には子供(甥)が二人いる場合には、まず配偶者の法定取り分が4分の3で生存している弟の法定取り分が8分の1になります。そして、残りの8分の1を死亡した兄弟の子供二人(甥)でそれぞれ16分の1ずつ分け合うということになります。

この甥や姪に、法定相続権が生じた場合が、非常に厄介なのです。現代では、甥や姪とは、疎遠になっているケースも多く、連絡を取るだけでも一苦労ということが多いのです。そして、疎遠になっている甥や姪は、遺産に対しても無責任ですので、「もらえるものはもらおうという態度に出ることも多いのです。この状態に該当する夫婦は、くれぐれも注意を要します。

子供のいない夫婦こそ遺言書が必要

このようなケースを防ぐためには、まず遺言書をきちんと書いておくことです。子供がいない夫婦は、「自分が死ねば相手が全部相続をするのが当たり前」と考えており、わざわざ遺言書をつくったりしないことが多いものです。しかし、前述したように、子供のいない夫婦は、自分が死ねば配偶者だけじゃなく、自分の親や兄弟にも相続権が発生する場合がありますので、配偶者に全部与えるつもりであればその旨をきちんと遺言書に残しておくべきです。

ただし遺言書をつくったからといって、それで解決というわけではありません。遺言書をつくっておいても、一定の法定相続人(配偶者、親)の権利は留保されます。遺言書で真に効果があるのは、遺産の半分までです。もう半分は、法定相続人が主張すれば、法定割合で分与されてしまいます。

だから、「全部、配偶者に与える」と遺言をしていても、被相続人の親が生きていて親が相続権を主張すれば、親の相続分3分の1の半分(つまり6分の1)は親が請求できるのです。ただし、法定相続人が兄弟だった場合、兄弟には遺留分がありません。だから、もし遺言書をつくっておけば、兄弟の相続権発生は防ぐことができるのです。兄弟が法定相続人になっている場合、もし遺言書がなければ、4分の1の相続権が発生するので、遺言書があるのとないのとでは大違いなのです。

なるべく生前分与を

このように、親がいる場合は、遺産を全部配偶者に渡すという遺言書を書いていても、親が遺産の一部を請求できるわけですが、これを防ぐためには、なるべく生前に財産分与をしておくことです。資産を夫婦二人に分散することで、どちらかが先に死んだときの「遺産額を減らしておくのです。

日本には贈与税という税金がありますので、そう簡単に資産を分与することはできません。しかし、贈与税には、様々な控除制度がありますし、特例措置もあります。これをうまく使って、なるべく生前に資産を分与しておくべきなのです。ここでは代表的な財産分与の方法を上げておきますね。

夫婦の間で、代表的な財産分与方法に、「おしどり贈与」というものがあります。「おしどり贈与」というのは、20年以上連れ添った夫婦が、自分の名義の家、家の購入資金を相手に贈与すれば、2000万円以内であれば、贈与税は課せられないというものです。この「おしどり贈与」で家などの資産を分散しておけば、「遺産」の額はかなり減ることになります。

また贈与税の控除額を使うという方法もあります。贈与税というのは、誰かが誰かに金品を渡した場合にかかってくる税金のことです。この贈与税は、家族間、親戚間のお金のやり取りであっても、かかってきます。が、控除額があるのです。控除額というのは、「ここまでの金額の贈与ならば、贈与税はかからない」という額です。この控除額が、年間110万円となっています。だから、年間110万円をコツコツ贈与すれば、生前に資産を譲渡できるわけです。20年間続ければ、2200万円の資産を分与することができます。

養子という手も

また養子をもらうという手もあります。養子であっても、法律上は子供と同様に相続の権利があります。そして、子供のいない夫婦が養子をもらった場合、子供がいる夫婦と同様の扱いになるのです。だから、夫婦にどちらかが死んで相続が起こった場合、配偶者と養子だけが法定相続人になれるのです。親や兄弟は、法定相続人にはなれないのです。

いずれにしろ、「子供のいない夫婦」というのは、相続の際に、非常に厄介な問題が生じる可能性はあるということは間違いありません。自分がそうではなくても、もし親族や知り合いにそういう夫婦がいれば、教えてあげておいてください。

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