なぜ学校はいじめ放置教員への懲戒処分の法制化に反対するのか

まぐまぐニュース! / 2019年4月16日 21時15分

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「いじめ防止対策推進法」の改正案から削除された「いじめを放置、隠蔽、助長するなどした教員を懲戒処分」という条項。改正案の中でこの条項を重要視していた無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、大人が子供を守る自覚を持つべきであるとの批判を展開。同メルマガではさらに、文部科学省で開かれた「いじめ防止対策協議会」の内容を詳細に記し、SNSを利用したいじめ相談の動きについても紹介しています。

SNS相談窓口広がる

残念なニュースが流れました。新聞等によれば、今国会での成立を目指している「いじめ防止対策推進法」の改正案から、「いじめを放置隠蔽助長するなどした教員を懲戒処分とする条項が削除されたことが、10日に判明したようです。

いじめから子供を守ろう ネットワークは発足した2007年から、いじめを隠蔽、黙認、放置、加担、助長等する教師への懲戒規定を法制化するように訴えておりますが、今回も教育界などからの「現場の萎縮を招くとの反発の声に屈してしまったようです。心ある議員の先生方には、最終的に改正案が決まるまでに、なんとか巻き返してほしいものです。

さて、3月25日(月)、文部科学省で「いじめ防止対策協議会」が開かれ、傍聴してまいりました。今回の議題は大きく二つ、第三者委員会の調査内容を文科省が把握することとSNSによるいじめ相談体制の進捗状況でした。

第三者委員会は、いじめによって、学校の児童生徒の生命、心身、財産に重大な被害が生じたり、長期の不登校になっている、重大事態と認められるいじめ事件が発生した際に設置され、事実関係を調査して、いじめの態様やいじめに至った経緯、さらには学校のいじめへの対応など明らかにし、調査報告書にまとめます。

総務省がかつて全国の66事案67の第三者委員会の報告書を分析したところ、学校がいじめの定義を狭く解釈していじめと認めない事案等の、いじめ防止対策推進法を守らないケースが多数あったことから、昨年3月、文科省は総務省から、勧告を受けました。

この日の会議では、「全国の全ての調査報告書を集めて分析するべきだ」という意見もありました。ただ、現況では文科省への提出義務はないので、各地の教育委員会に報告書の提出をお願いするしかないと、座長から説明がなされました。

法的義務はなくても、文科省からの要請であれば、教育委員会は報告書の提出を断ることはないでしょうし、文科省として積極的に関わっていこうとする姿勢がなかったために勧告を受けることにもなったのだろうと思います。

もう一つの議題であるSNSでのいじめ相談体制については、すでに全国30の地方自治体で取り組みが始まっているとの報告がありました。「いじめ防止対策協議会」では、来年度もさらに相談体制の内容充実などについて議論を続けていくとのことでした。

SNSでのいじめ相談については、いじめから子供を守ろうネットワークでも、各地のサポーターの方を中心に陳情を行っております。

島根県松江市でも、2月の松江市議会に、「LINEによるいじめ相談窓口のアカウントの開設を県に求める陳情」を提出し、教育民生委員会で陳情の趣旨説明の機会をいただきました。

当団体の松江代表の村松さんがこの陳情を出した背景には、いじめ件数は減っていないにもかかわらず電話相談件数は減少しているという実態があるからでした。今回の陳情について、村松さんは次のように語っています。

「実際、平成29年度の島根県のいじめ認知件数は、過去最高を記録しました。これは、いじめに対しての考え方が変わり、いじめを積極的に報告していこうとしている傾向の表れだとも取れます。ですが、不登校、暴力行為の発生件数も過去最高の数字であることを見ると決して楽観できる状況ではありません。学校が子供たちの安心して勉学に励むことができる環境とは言えないのではないかと思います。いじめは、できる限り発生しないように、例え発生してもすぐ解決していけるような体制を作ることが必要だと思います。そのためには、子供たちが安心して簡単にSOSを発信できるようにしなくてはなりません。今現在、いじめの電話相談窓口が開設されています。これは今までたくさんの子供たちを救ってきたことと思いますし、これからも必要であると思います。ただ、ここ数年の島根県の統計で平成25年度と平成29年度を比較すると相談件数は半分近くに減っています。一方で、長野県教育委員会が平成30年の9月にLINEの相談を試験的に2週間行ったところ1,579件のアクセスがあり、1年間の電話相談件数259件を軽く上回る結果となりました。このことからも、今の子供たちは、SNSへの依存度が高くLINEでなら相談しやすいということがうかがえます。文部科学省もSNSを活用した相談体制の構築事業に多額の予算を計上し、各自治体に補助金を出しています。

平成30年8月の段階で27都道府県、7政令指定市が既に取り組みを始めた、もしくは取り組み予定としています。近隣では、鳥取、広島、岡山が実施予定としています。

したがって、松江市議会から、島根県に対して、

  • いじめ相談用のLINEのアカウントの開設
  • このアカウントを島根県内の小学校、中学校、高校等へ告知するとともに県、市町村のホームページなどにも掲載し、広く県民に周知する

という点を働きかけをしてくださいますように、という趣旨説明をしました」

この村松さんからの陳情に対して、委員会は全員一致で継続審議」ということになりました。委員中のお一人が松江の代表のところに来られて、「この継続審議というのは、今ここで決定はできませんが、これはやらざるを得ない議案だと認識していますので必ずいい方向で審議していきます」と声をかけられたとのことでした。

冒頭のような「教師への懲戒処分を盛り込まない」という残念な状況も起きていますが、このいじめ問題に対しては、大人として子供を守る責任があるということを自覚することが第一歩だと思っています。当然、教育者が「現場が委縮する」などの理由で、「隠蔽教師への懲戒規定」を取り下げさせ、責任のがれを正当化するような姿勢は、もってのほかであると思います。

4月も半ばになり、子供たちも新しいクラスにとけこみ始めていると思います。何かありましたら、早めにご相談ください。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

松井 妙子

image by: Shutterstock.com

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