正義勢と悪勢の割合は？ もし「マルチバース」で歴代ゴジラが集結したら、を考察

■もし歴代ゴジラが全員同じ世界に現れたら

　最近のアメコミヒーロー映画では、「マルチバース＝並行世界」という設定で、他作品の違うバージョンのヒーローが一堂に集まることがあります。例えば、『スパイダーマン ノーウェイ・ホーム』では、歴代のスパイダーマンが同じスクリーンのなかに登場するという奇跡もありました。日本の作品でいえば、生誕70周年記念作『ゴジラ-1.0』も本日公開された「ゴジラ」シリーズには、海外制作やアニメも含めて40体以上のゴジラが存在します。

　もし「マルチバース」の企画が実現して、同じ世界にすべてのゴジラが現れたら、日本は一体どうなるのでしょうか。各ゴジラの情報を整理しながら展開を考察しましょう。

　そもそも怪獣であるゴジラは本能のままに行動しており、都市を破壊される人間としては大迷惑です。しかし作品によって描かれ方が変わり、同じゴジラでも善と悪に分けられます。

　まず東宝制作のゴジラから見ていくと、東宝発のゴジラシリーズは1954年公開の第1作『ゴジラ』を原点として、世代によってさまざまな作品に分岐しているのが特徴です。

　初代ゴジラは芹沢博士が開発した「オキシジェン・デストロイヤー」により、海中で死滅しました。映画のラストでは名優・志村喬さん演じる山根博士が「あのゴジラが最後の一匹だとは思えない」「あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれない」と言っていますが、予言通りにその後世界にゴジラが何体も出現します。

　1955年『ゴジラの逆襲』から登場した2代目ゴジラは当初、初代と同じく凶暴でキングコングやモスラと戦う敵役でしたが、1964年『三大怪獣 地球最大の決戦』では地球を襲うキングギドラを相手に、モスラやラドンと共闘しました。そこからは正義の味方になり、息子・ミニラの子育てをしながら宇宙人が送り込んできたガイガンや、メカゴジラなどの怪獣と戦います。

　その後、1984年の同名映画『ゴジラ』の「3代目ゴジラ」が登場した際は初代ゴジラの存在を尊重して、2代目ゴジラはいなかったことになり、初代ゴジラが現れた約30年後に現れた2体目のゴジラという設定となりました。

そして、破壊されてもすぐ修復するゴジラ（G細胞）からビオランテやスペースゴジラが誕生したり、1991年『ゴジラvsキングギドラ』ではタイムマシンでゴジラ誕生以前に戻ったりと、3代目ゴジラはSF要素が満載でした。

　またゴジラを真似して作られたロボット怪獣のメカゴジラの設定は宇宙人のメカではなく、人間がゴジラを倒すために作ったメカという設定になっています。昭和の2代目ゴジラと違い、宇宙人が送り込む怪獣と戦った経験が1度もありません。

　3代目も当初は凶暴なだけでしたが、1993年の20作目『ゴジラvsメカゴジラ』からベビーゴジラが誕生し、ゴジラの行動原理がリトルゴジラ、ゴジラジュニアの成長する同種族を守るというものに変わりました。

■意外にも昭和2代目ゴジラとハリウッド2代目ゴジラには共通点が？

『GODZILLA ゴジラ（2014）』。渡辺謙さんが芹沢猪四郎博士役で出演した。　(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

　そして、1999年の『ゴジラ2000 ミレニアム』から始まったミレニアムシリーズでは、第1作に登場したゴジラの存在を大前提としており、同シリーズ内で2部作だった2002年『ゴジラ×メカゴジラ』2003年『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』以外は、それぞれ設定が違います。

　またミレニアムシリーズの第3作である2001年『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』のゴジラは、太平洋戦争で亡くなった人びとの怨念が具現化した存在という異色の設定でした。

　ちなみに、唯一2004年『ゴジラ FINAL WARS』だけは、ラストシーンでミニラがゴジラと人間の橋渡し役となって、和解しています。

　12年後の2016年『シン・ゴジラ』はタイトルにシンがつくように、ゴジラでありながらもゴジラの基本設定から大きく離れていました。放射性廃棄物によって異常進化した古代生物で、G細胞から進化したスペースゴジラやビオランテに近く、すでに恐竜ではなくなっていますが、人類の敵であることは間違いありません。

　ミレニアムシリーズは1体ずつとして、ミニラやゴジラジュニアも成長してゴジラになると計算した場合、悪ゴジラ6体対正義ゴジラ6体になり、数だけ見れば五分五分といえそうです。

　そして、海外版やアニメ版に目を向けると、1995年『ゴジラvsデストロイア』と1999年『ゴジラ2000ミレニアム』の間に制作された、1998年『GODZILLA』に登場したハリウッド版の初代ゴジラは、当時の最新の恐竜研究の知見を取り入れていました。そのため、熱線放射もせずに動きが素早く、イグアナのようなフォルムでゴジラとは名ばかりのキャラクターです。魚を主食とした単性生殖生物のため、1体で無限に卵を作って繁殖することができます。

　そして、ハリウッド2代目ゴジラは2014年『GODZILLA ゴジラ』、2019年『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、2021年『ゴジラvsコング』と、シリーズ化されています。登場するゴジラは古代から「怪獣の王＝キングオブモンスター」だったという設定で、悪のキングギドラや悪の組織が作ったメカゴジラと戦います。意外にも昭和2代目の設定と一番近いのが、ハリウッド2代目ゴジラでした。

　2017年『GODZILLA 怪獣惑星』から始まるアニメ3部作と、2021年のアニメ『ゴジラ S.P』に登場したゴジラも、人類と相容れない絶対的破壊者として存在していました。

　再度ミニラやゴジラジュニアが成長してゴジラになったと仮定しても、悪9体（『-1.0』を加えると10体）、善7体で数的には悪ゴジラの方が有利に思えます。また放射熱線を持たない「初代ハリウッド版ゴジラ」ですが、繁殖力が高くあっという間に世界中に広がるので、案外ゴジラのなかでも最も手強い個体かもしれません。

　さらに、主食がマグロや人間などの動物のため、食糧を食べ尽くして人類が滅亡するリスクもあります。

　初代ゴジラは街を壊しただけで、他の怪獣との対戦経験がありません。一方でモスラやキングコングと戦ったうえに、宇宙怪獣とも何度も戦った昭和2代目ゴジラは、実戦で最強の可能性が高いです。またハリウッド2代目ゴジラは2作目以降の身長が100m以上と巨大で、多くの怪獣との戦いで勝ちを納めているために最強ゴジラ候補の一体でしょう。

　明確に善のゴジラはこの2体しかいませんが、善としてカウントしている昭和2代目ゴジラは1973年放送の特撮ドラマ『流星人間ゾーン』の客演として登場してともに戦っているので、ゾーンが昭和2代目ゴジラのもとにやってくる可能性があります。

　また平成の「vsゴジラ」や『FINALWARS』のゴジラは、明確に人間の味方になったことはありませんが、ゴジラジュニアやミニラが父のゴジラをうまく誘導すれば、味方につけることはできるでしょう。さらに悪ゴジラに対抗した人間側の怪獣やメカも、善に転じれば全て味方になります。

　人類と力を合わせれば、彼らで悪ゴジラを撃退できるはずです。しかし善ゴジラが集結する前に、悪ゴジラが大暴れしたら地球は3日ももたないかもしれません。特に、東京を壊滅寸前に追いこみ、人類が殺すこともできなかったシン・ゴジラは他のゴジラから見ても相当厄介そうです。

　歴代ゴジラが集結した世界を考察しましたが、あくまでも推測の域は出ません。それでも実際に『ゴジラvsキングギドラ』でもタイムマシンが登場しているため、今後の作品であらゆる世界線がひとつにつながって、歴代ゴジラが一同に集結するマルチバース展開を期待したくなるものです。

（LUIS FIELD）