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「仮面ライダー4号」誕生から半世紀 「ライダーマン」の死が必要だった悲しいワケ

マグミクス / 2024年2月2日 7時10分

「仮面ライダー4号」誕生から半世紀 「ライダーマン」の死が必要だった悲しいワケ

■「ライダーマン」誕生に待ったをかけたのはTV局…? その理由

 本日2月2日は、『仮面ライダーV3』第51話「ライダー4号は君だ!!」が1974年に放送された日です。このエピソードによって、元デストロンの科学者である「ライダーマン」こと「結城丈二」は、自らの命と引き換えに栄光の「仮面ライダー4号」の名前を与えられることになりました。

 ライダーマンは、「昭和ライダー」で唯一、自身が主役の作品を持たない「仮面ライダー」であり、「平成ライダー」以降に多く登場する「準主役ライダーポジション」を初めて務めたヒーローといえます。つまり、番組の主役を代行した「仮面ライダー2号」とは違い、最初からサブヒーローとして設定されたわけです。

 その誕生までの企画には二転三転ありました。当初は前作『仮面ライダー』の登場人物のひとり「滝和也」が、「仮面ライダー1号」「同2号」の手で改造されるという設定から始まっています。そういう意味では番組の新しい主役ではなく、最初から「仮面ライダーV3」の相棒役として設定されていました。

 しかし、これに待ったをかけたのが放送局です。その理由は「仮面ライダーの兄弟化は望ましくない」というものでした。当時、放送中だった『ウルトラマンタロウ』との差別化をはかりたかったのでしょう。放送局を説得するというやり取りが長引いたことにより、ライダーマンの登場は第4クールまで伸びました。

 ライダーマンの登場が正式に決まった後、メインライターである伊上勝さんによってシノプシス(結末までを記したあらすじ)が書かれます。それによると、ライダーマンとなる結城丈二はモナコGPで優勝したほどのレーサーだったものの、「デストロン」によって改造され、5人チームの「デストロンライダー」にされてしまいました。

 しかし、改造手術が終了する前に逃走します。その逃走中にほかの4人の仲間は結城を逃がそうと犠牲になりました。そのため、結城はデストロンに激しい恨みを持ち、その復讐を遂げるために戦う決意をします。

 また、結城はV3に変身する「風見志郎」にも恨みを抱いていました。V3さえいなければ、自分がこんな目に遭うことはなかったからです。しかし、風見の人間性に触れることで復讐心も消えていき、共に正義のためデストロンと戦うことを決意しました。

 復讐鬼という面では変わりませんが、その標的はあくまでもデストロンであり、「ヨロイ元帥」個人ではないという部分が、シナリオの完成稿と大きく違います。この当時の予定では、後半の部族編幹部は1か月程度で入れ替わり予定でしたから、登場が遅れたことで新たに設定しなおされたのかもしれません。

 ちなみに、この時点でライダーマンの武器である「アタッチメント」の設定は考えられていました。シノプシスには、結城自身が新たなアタッチメントを作るという部分が描かれています。この点を考察すると、前半のデストロン怪人が武器合成型という部分を踏まえているからかもしれません。

 こういった初期設定からライダーマンは誕生したわけですが、彼はなぜ自分の命を犠牲にして散らなければならなかったのでしょうか。それには生みの親のひとりである東映の平山亨プロデューサーの思いがありました。

■ヒーローになるために必要な条件とは?

市販車を改造した「ライダーマンマシーン」。最大250km/h、40mのジャンプ可。BANDAI SPIRITS「S.H.Figuarts ライダーマン&ライダーマンマシンセット」 (C)石森プロ・東映

 結城を演じた山口豪久(当時は山口暁)さんは、『V3』企画時に平山さんの自宅へ押し掛けて主役に抜擢するようアピールしたことがあります。このことは平山さんのなかで強く印象に残っており、それもあってライダーマン誕生の時に打診した、という経緯がありました。

 平山さんはライダーマンというキャラクターに強い思い入れがあったようで、『V3』第48話「見た! デストロン首領の顔!!」では「海堂肇」名義で脚本を書いています。

 この第48話には、ライダーマンが思わずデストロン首領をかばうシーンがあり、そのことを責める風見に対して、結城は正直に自分の気持ちを吐露していました。かつて自身が絶望的な状況にあったとき、首領に救われたことで恩義を感じていたのです。またデストロンが「科学の力で人間のユートピアをつくる組織」だと信じていたこともあり、そのようなわけで、これまで数々の研究を成功させて組織に貢献してきたのでした。平山さんは自身の手で、この複雑な結城の心情を書きたかったのかもしれません。

 そして第51話にて、東京を壊滅させられる「プルトンロケット」が発射されてしまうと、これに乗り込みほかに被害の及ばない上空で自爆することで、ライダーマンは人々を救うという行為に及んだわけです。しかし、どうして最終回を前にしてライダーマンは散らなければならなかったのでしょうか。さまざまな考察が考えられますが、平山さんはこの疑問に対して、次のように明確に答えています。

「一度でもその身を悪に染めた者は、命をもってその罪を償わければならない」

 つまり経緯はともかく、デストロンに協力して犯した罪は相応のみそぎが必要だったということでしょう。この自己犠牲の精神がライダーマンを単なるV3の相棒というポジションから、「仮面ライダー4号」というヒーローに変えました。

 昨今よくある、敵から味方へと立ち位置を変えるキャラクターを否定するわけではありませんが、自分の犯した罪と向き合うという点を考えると、安易に立場を入れ替えるのも考えものです。罪の清算、そういった通過儀礼がヒーローへと転身するには重要なのでしょう。

 ちなみに平山さんの構想では、ライダーマンが再改造されて次回作の仮面ライダーに生まれ変わることも考えられていたそうです。もっとも、あくまでもアイディアのひとつであり、それを裏付ける資料は今のところ見つかっておりません。

 平山さんとしては少ない出演回数になった山口さんに申し訳がなかったそうで、前述の構想のほかにも、次回作『仮面ライダーX』への出演も検討していました。もっとも山口さんは同時期に『電人ザボーガー』で「大門豊」を演じていたので、出演は叶わなかったかもしれません。

 しかし逆を言えば、出演エピソード9話という短期間ゆえに、ライダーマンというキャラクターはより印象的なものになったともいえます。主人公として生まれなかったゆえに、よりヒーローとして深みを増したライダーマン。子供の頃は気にも留めなかったのですが、大人になってから味わい深いヒーローだと思わせるキャラクターではないでしょうか。

(加々美利治)

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