格差がヒドい! アニメなどで人気者F-14のかたわらでF-15の不遇はマジでなんなん?
マグミクス / 2024年8月14日 9時5分
■みんな大好きF-14はフィクション世界をどう飛んできた?
2024年7月23日、映画『トップガン マーヴェリック』で「ジェイク・“ハングマン”・セレシン」海軍大尉を演じた俳優のグレン・パウエルさんがインタビューに答える形で、同作品の続編企画が速いペースで進んでいる可能性を示唆しました。
この件について、同作の制作を手がけたパラマウント・ピクチャーズは口を閉ざしており、現時点で本当に続編が制作されるのか、されるとすればいつ頃なのかは一切不明です。とはいえ、そのように続編の噂がたびたび話題になるのは、「トップガン」シリーズの根強い人気の証と言えるでしょう。
同シリーズが根強い人気を得ている最大の理由は、主演のトム・クルーズさんにあるのでしょうが、それと共に彼が演ずる「マーヴェリック」の最初の乗機として劇中に登場するF-14「トムキャット」の魅力によるところも大きいのではないかと思います。
F-14はアメリカ海軍が1960年代に開発した、航空母艦に搭載するための戦闘機で、大きな特徴のひとつはその可変後退翼にあるといえるでしょう。これは、飛行中に主翼の後退角を変えることで、常に飛行速度に応じた最適な主翼形状が得られるというものです。
そのメカっぽさからか、フィクション作品の制作者やその観客/視聴者からの人気は高く、アメリカだけでなく日本でも数々のフィクション作品に登場し、しかも作中で厚遇されています。
アニメ「マクロス」シリーズに登場するヴァリアブルファイター(可変戦闘機)の祖というべきVF-1「バルキリー」が、F-14を参考にデザインされたのは有名な話で、さらに2002年に制作されたOVA作品『マクロス・ゼロ』には、F-14そのものも登場しています。
『マクロス・ゼロ』に登場するF-14は、地球に落下してきた大型宇宙船(のちの「マクロス」)の解析によって得た技術(オーバーテクノロジー)が移植されたF-14++「スーパートムキャット」と呼ばれる半架空機で、第一章では主人公「工藤シン」の乗機として大きな存在感を示しました。
F-14は1983年から84年にTV放送されたアニメ『聖戦士ダンバイン』にも登場しています。この作品世界においてF-14の搭載兵装を含む地球上のあらゆる兵器は、「バイストン・ウェル」と呼ばれる異世界の空中戦艦やロボットにほとんど通用しないという設定なのですが、そうしたなかでもF-14は、敵陣営の空中戦艦「ゲア・ガリング」に体当たり攻撃(パイロットは突入直前に脱出)をしかけ、同艦を大破に追い込む殊勲を挙げています。
マンガの世界、たとえば『エリア88』では、主人公「風間真」の親友であり、また戦友でもある「ミッキー・サイモン」の乗機として登場しました。
物語最終盤、ミッキーの駆るF-14は、恋人関係にあった「セラ」こと「セイレーン・バルナック」をかばって被弾します。地上には帰還できたものの、ミッキーはすでにこと切れていました。セラはミッキーと運命を共にすることを選び、そしてふたりを乗せたままF-14は爆発炎上してしまいます。
その衝撃的な展開でF-14を記憶している、年配のファンも少なくないのではないかと思います。
■一方その頃F-15は…?
航空自衛隊のF-15J戦闘機 (画像:航空自衛隊)
このようにF-14は、フィクション作品で大いに厚遇されてきました。そのF-14よりやや遅れてアメリカ空軍に採用され、航空自衛隊やイラン空軍の主力戦闘機の座を争った戦闘機F-15「イーグル」は、しかし、フィクション作品における扱いがどうにもパッとしません。
日本の特撮作品である映画『ULTRAMAN』(2004年)では、主人公「真木舜一」の乗機として航空自衛隊仕様のF-15Jが登場し、作中後半では真木が変身した「ウルトラマン・ザ・ネクスト」をF-15Jが援護するという熱いシーンが観られます。ところが、そのほかの作品では「かませ犬」的な描写が多いのです。
特撮作品と同様、アニメ作品でもF-15の扱いはパッとしません。最近でいえば、TVアニメ『グレンダイザーU』にサウジアラビア空軍所属のF-15(作中では機種名非公表)が登場しているものの、敵勢力である「ベガ星連合軍」を前にして、大した戦果も挙げられませんでした。もっともベガ星連合軍に対しては、あの「マジンガーZ」でも苦戦を強いられていたので、F-15がかませ犬になっても不思議ではありません。
1993年公開の劇場アニメ作品、『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』では、ハイグレ星人への攻撃に向かった航空自衛隊のF-15Jが全滅していました。同じく『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(1999年)では、テロ組織「YUZAME」の巨大ロボット迎撃にF-15Jが出動するもまったく歯が立たず、YUZAME総帥のドクター・アカマミレからハエと評される始末で、かませ犬以下の描かれ方をされています。
現実世界に目を向けると、両機の戦果はF-15の圧勝です。将来性の面でも、F-14が2006年をもってアメリカ海軍から退役し、今はイラン空軍で少数機が運用されるにとどまっているのに対し、F-15は能力向上型のF-15EX「イーグルII」が開発され、航空自衛隊のF-15Jも長射程ミサイルの運用能力などが追加されるなど、今後も長きに渡って運用されていくことになるはずです。
このように実績の面でも将来性の面でも、F-14がF-15の後塵を拝しているのですが、にもかかわらずフィクション作品でF-14が厚遇されるのは、ケレン味あふれる可変後退翼をはじめとする、同機の魅力によるものなのかもしれません。
(竹内修)
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