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シャーリーズ・セロン主演『オールド・ガード』、不死に向き合う人間臭さが胸を打つ

マグミクス / 2020年8月25日 19時40分

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■“不老不死”とは何かを考えさせる、アメコミ原作映画

 アメコミ原作のアクション映画『オールド・ガード』が2020年7月10日からNetflixで全世界配信されています。原作はコミックライターのグレッグ・ルッカによるグラフィックノベル『The Old Guard』です(彼は過去に『スーパーマン』『ワンダーウーマン』『ウルヴァリン』なども手掛けています)。

 同作は世界83か国で最も見られているNetflix映画として話題になり、日本でも配信開始以来「今日の総合 TOP10」に上がるなど、注目が集まっています。

 この映画の目立つポイントは何といっても、映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『アトミック・ブロンド』などでアクション演技に磨きをかけている女優シャーリーズ・セロン。今作では不死の能力を持つ現代に生きる古代戦士“オールド・ガード”という設定で、斧や現代の銃などの武器で華麗に立ち回る姿は圧巻です。

 今作ではセロンを含めた“オールド・ガード”キャストたちは柔道や合気道、シラット、カリ、中国武術、洪家拳、太極拳、テコンドー、居合道、剣道など世界各国の武術を取り入れたトレーニングを行ったといいます。

 敵をバッタバッタとなぎ倒すスピード感あふれるアクションは近年でヒットしている、キアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」シリーズを彷彿とさせ、ワクワク感を与えてくれます。

 スーパーヒーロー映画というジャンルではありますが、出てくる特殊能力は傷が再生する「不死力」のみ。“死なない”という能力はシンプルで強いものと思われますが、作品では「不死になった人物たち」の葛藤などを濃く描いています。

 数百年、千年単位で続く孤独や、普通の人間とは一緒にいられず同じ不死の仲間と行動をともにするしかないという生き方が、作品にリアリティをもたらしています。撃たれても死んでも、痛みを感じながら闘い続けることができるというスタイルでのアクションは泥臭さも感じ、暗めの世界感と爽快なアクションが上手くマッチしています。

■原作者も脚本を担当、男性同士のキスシーンにも注目

原作コミック『THE OLD GUARD #1』 (C) Image Comics

 各々の不死メンバーの歴史は深く掘り下げられませんが、人間ドラマとして優れているのは確か。同作では原作者のグレッグ・ルッカが脚本を担当しており、コミックそのものを忠実に実写化させています。コミックには映画で扱われていない続編の物語があり、映画の終わり方から考えても続きがあるのは明らかでしょう。

 また、同作では男女の恋愛が描かれていませんが、実は、配信後にネットなどで話題になったのはそんな「恋愛」に関するシーンでした。セロン演じるアンディの仲間として登場する、かつて十字軍で敵同士だったにも関わらず運命の恋人となった男性2人、ジョーとニッキーがキスをするシーンです。

 昨今の映画ではこういったセクシャルマイノリティに関連したシーンは話題になることが多いですが、今作ではグレッグ氏がジョーとニッキーのキスシーンを脚本から削らないよう監督に約束させ、実現させたという逸話があるほど、この作品の中で表現すべきテーマのひとつだったといえるでしょう。キスシーンを演じた同性カップル、ジョーとニッキーは注目度を高めています。

 さらに、「不死」と向き合う姿がよく描かれているのが、不死身となってまだ200年あまりの、ブッカーというキャラクターです。チーム内では新参者ですが、愛する人との別れや、孤独や葛藤について、作中で新しくチームに加わる女性キャラ・ナイルに話して聞かせるというシーンがあります。

 他の不死者とは違い、まだ不老不死を受け入れられずにいる描写に人間臭さを感じさせます。「不死」という能力以上に前に出てくる、あまりにも人間らしい、切なく苦しいドラマは、近年のアメコミ映画のどれとも似通っていないテーマとして新鮮に受け止めることができます。

 原作者が脚本を手掛けていることもあり、作品の根底にあるテーマを大切にしつつ、アクション映画としてのクオリティも高めているという点が、大きな注目を集める要因となっているのでしょう。

(大野なおと)

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