深夜に届く『恐怖新聞』がTVドラマ化。70年代日本を席巻した「オカルトブーム」とは

マグミクス / 2020年8月29日 16時20分

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■人気作家・乙一氏と中田秀夫監督のタッグ作

 毎晩のように深夜0時に届き、1日読むと100日寿命が縮むという、恐ろしい新聞。それが「恐怖新聞」です。つのだじろう氏が1970年代に大ヒットさせたオカルトマンガ『恐怖新聞』が、2020年8月29日(土)から東海テレビ・フジテレビ系で連続ドラマとして放送されます。全7話の予定で、毎週土曜日23:40からのオンエアです。

 主演は、連ドラ初主演となる若手女優の白石聖さん。演出は、映画『リング』(1998年)が世界的な大ヒットシリーズとなった中田秀夫監督。中田監督の『仄暗い水の底から』(2002年)でも母親役を熱演した黒木瞳さん、佐藤大樹さん(EXILE / FANTASTICS from EXILE TRIBE)、駿河太郎さんらの共演です。

 シリーズ構成は、人気ミステリー作家の乙一氏が担当。乙一氏は監督作『シライサン』(2020年)では、都市伝説や呪いといったホラー要素に対して心理学的なアプローチをみせました。そんな乙一氏とJホラーブームを牽引した中田監督が、『予言』(2004年)などこれまでに何度も映像化されてきた『恐怖新聞』をどのように現代的に蘇らせるのか、注目されます。

■「え~っ!」と叫びたくなった原作のラスト

「トキワ荘」のメンバーとしても知られる漫画家・つのだじろう氏は、TVアニメ『ピュンピュン丸』の原作となったギャグマンガ『忍者あわて丸』や実録漫画『空手バカ一代』などのヒット作を放っていました。しかし、人気を決定づけたのはやはり『恐怖新聞』です。1973年~1975年に秋田書店「週刊少年チャンピオン」で連載され、子供たちの間で大評判となりました。

 原作の主人公は、中学生の鬼形礼。深夜0時になると、礼の部屋にどこからともなく「恐怖新聞」が届くのです。「恐怖新聞」には礼の周辺でこれから起きる事件や事故が掲載されており、寿命が縮むと分かっていても、礼はどうしようもなく「恐怖新聞」を読んでしまうのでした。顔半分に斜線が描かれた礼の怯えた表情を見るだけでも、充分に恐ろしく感じられる作品でした。

 悪霊の除霊、UFOとのコンタクト、礼が生き延びるための交換条件を持ちかける死神との闘い……。さまざまな怪奇現象が、礼に襲いかかります。最終回も「え~っ!」と叫びたくなるような不気味な結末でした。

■ユリ・ゲラーが来日し、ブームは沸点に

『うしろの百太郎』Kindle版第1巻(講談社)

 つのだじろう氏は『恐怖新聞』とほぼ同時期に、『うしろの百太郎』を講談社「週刊少年マガジン」で連載スタートさせます。主人公の後一太郎は、霊能犬のゼロや主護霊の「うしろの百太郎」に助けられながら、やはり数々の心霊体験に遭遇します。『恐怖新聞』と『うしろの百太郎』はどちらも大人気を博し、つのだじろう氏はオカルト漫画の巨匠となっていきます。

 それにしても、1970年代前半のオカルトブームは、凄まじいほどの盛り上がりでした。小学校の学級文庫には、なぜかオカルト評論家の中岡俊哉氏らが執筆した『世界の怪奇スリラー全集』(秋田書店)や、楳図かずお氏の恐怖マンガが並んでいました。1973年4月からは「木曜スペシャル」(日本テレビ系)が始まり、矢追純一ディレクターによる「UFOシリーズ」がたびたびオンエアされました。翌1974年には超能力者ユリ・ゲラー氏が来日。子供たちはこぞってユリ・ゲラー氏をまねて、スプーン曲げに挑戦したのでした。

 さらにオカルト映画『エクスシスト』(1973年)が、日本でも1974年に公開されます。悪魔に取り憑かれた少女の首が180度回るシーンには、誰もが悲鳴をあげずにはいられませんでした。東宝の特撮映画『ノストラダムスの大予言』(1974年)が公開されたのも、この年です。マンガ、本、TV、映画……。あらゆるメディアが、オカルトものであふれかえっているという状況でした。

■超常現象の七割は疑うべし

 文明開化が進んだ明治時代以降、日本では何度も心霊ブームが起きていますが、1970年代前半の一大オカルトブームは、それまでの高度経済成長の反動があったのではないかと言われています。

「オカルト」という言葉には、ラテン語で「隠されたもの」という意味があります。敗戦から復興した日本は高度経済成長を遂げ、物があふれる豊かな社会になりましたが、受験戦争や公害など、社会の歪みも目立つようになりました。手に触れることのできない、精神的な世界に関心を持つ人たちも少なくなかったようです。

 そんなオカルトブームを背景に、多額なお金を騙し取る「霊感商法」もはびこり、問題視されるようになります。オウム真理教の幹部たちは、高学歴だったにもかかわらず、教祖・麻原彰晃の唱える荒唐無稽なハルマゲドンをすっかり信じ込んでしまいました。科学的に実証できない「オカルト」に触れる際は、メディアリテラシー的な視点を忘れないようにしたいものです。

 先述したオカルト評論家の中岡俊哉氏は、「心霊写真」ブームや「こっくりさん」ブームも起こしていますが、その一方では「七疑三信」をモットーにしていました。あらゆる超常現象に対し、七割は疑い、三割だけ信じるというスタンスだったそうです。ブームの先導役でもあった中岡氏の言葉だけに、実際にはもっともっと厳しい目を持つ必要があるでしょう。

 現代社会を舞台にした連続ドラマ『恐怖新聞』の主人公・小野寺詩弦(白石聖)は、夜ごとに届く「恐怖新聞」を、果たしてどのように受け止めるのでしょうか。

(長野辰次)

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