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名作マンガ『ジャイアント台風』、ホラ話満載でも昭和プロレスのロマンが詰まっていた

マグミクス / 2020年9月24日 19時40分

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■希代のレスラーの活躍、きめ細かく描く

 1953年に『日本のプロレスの父』である力道山の手によって設立され、第二次大戦後の我が国で一大ブームを巻き起こした「日本プロレス」。まだまだ敗戦ムードが漂うなか、「空手チョップ』をふるい、外国人レスラーを痛快になぎ倒した力道山の活躍が当時の日本人に勇気と希望を与えたことは想像に難しくありません。

 その「日本プロレス」が力道山没後に第二次ブームを起こすキッカケとなった作品が、1968~1971年にかけて講談社「ぼくら」、「週刊ぼくらマガジン」、そして「少年マガジン」で連載された名作『タイガーマスク』(作:梶原一騎 画:辻なおき)と、今回で紹介する『ジャイアント台風』(作・画ともにタイガーマスクと同様、当時の作者名義は高森朝雄)ではないでしょうか?
 
 1963年12月15日に暴漢に刺された力道山が逝去し、日本プロレスは「豊登」エース時代に移行。その豊登が公金の横領などの理由で同団体を追放された後、アントニオ猪木とともに「東京プロレス」を設立し、それが崩壊した後に猪木が日本プロレスに復帰することでジャイアント馬場と伝説のタッグチーム、「B・I砲」を結成して一時代を築くのですが、当時の日本プロレス内の「格」はあくまでもジャイアント馬場が圧倒的に上。そのことは現在でも『ジャイアント台風』を読めば、まざまざと伝わるものとなっています。

 後のマンガ作品『プロレススーパースター列伝』(作:梶原一騎 画:原田久仁信)の「なつかしのB・I砲編」(1981年に週刊少年サンデーで連載)では、あくまでもアントニオ猪木がストーリーの中心となっていましたが、『タイガーマスク』と同時期に少年キング(少年画報社)で連載された『ジャイアント台風』は、いうまでもなく馬場が主役。

 しかも全12巻にわたってキメ細かく希代のレスラーであるジャイアント馬場の活躍が描かれており、アラフィフ世代の筆者にとっても自分が生まれる以前のプロレス界の流れや、当時のプロレスラーたちの怪物ぶりを深く教えてくれる内容となっています。

■創作により、「プロレスの幻想」は何十倍にも

『ジャイアント台風』と同じ高森朝雄(梶原一騎)原作の、『プロレススーパースター列伝』デジタルリマスター版7巻(グループ・ゼロ)。「なつかしのB・I砲!G馬場とA猪木編」を収録

 とはいえ、そこは梶原一騎作品。日本プロレスに入門した馬場が手足をバーベルで縛られた挙句、ハチの巣とともに便所に放り込まれ、全身を刺されるメチャクチャな特訓や、ブルーノ・サンマルチノがチック・ガリバルディというレスラーをリング下に叩き落として殺してしまう事件、テキサスでのフリッツ・フォン・エリック戦に備えて、アイアンクロー対策の特訓として自ら地中に埋まったジャイアント馬場がジープに顔を轢かせるなど、相変わらずのホラ話が満載となっています。

 ですが、むしろそれがプロレスラーの凄さを当時の少年たちに伝えるものとなっています。「墓場の使者、キラー・コワルスキー」や、「鉄の爪、フィリッツ・フォン・エリック」、「1000の傷を持つ男、ディック・ザ・ブルーザー」など日本でお馴染みのレスラーたちの怪物ぶり、極悪非道ぶりはもちろん、ジャイアント馬場が「32文ロケット砲」を会得する特訓に付き合うドロップキックの名手、ペドロ・モラレスや「動くアルプス、プリモ・カルネラ」がプロボクサー時代にジャック・シャーキーをリング上で殴り殺してしまったエピソードなど、物語の随所には驚愕のエピソードが散りばめられています。

 特に「カルネラ」の件は完全に創作。相手のシャーキーは殺されたどころか、1994年に91歳で死去し、カルネラより長寿を全うしたことを知った時は、「梶センセ、相変わらずだなぁ」と思ったりもしたのですが、こうした情報が「プロレスの幻想」を何十倍にも増幅させ、心躍らせる要因になっていたことは否定出来ないのではないでしょうか?

 インターネットの発達により、今の時代は本当のことをいとも簡単に確かめることが可能ですが、それがイコールで「面白いこと」とは言い切れないのもまた事実。往年のプロレス界の「ロマン」と、筆者のようなガチガチの猪木派でも納得せざるを得ないジャイアント馬場の全盛期の強さを改めて伝える『ジャイアント台風』……すべてのプロレス・ファンにぜひ、ご一読いただきたい名作です。

(渡辺まこと)

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