再放送『未来少年コナン』の名場面「ギガント復活」、宮崎駿監督のミリタリー愛が満載

マグミクス / 2020年10月18日 19時40分

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■再放送中の『コナン』、残すは3話のみ

「こころがこんなに ふるえるのはなぜ?」

 いかにもNHKらしいエンディング曲が耳に残る、宮崎駿監督の監督デビュー作『未来少年コナン』。1978年にNHK総合で初放映されたTVアニメシリーズ『未来少年コナン』は、2020年5月から久しぶりにNHK総合で再放送され、ファンを楽しませています。毎週日曜深夜の放送も、残すところ3話となりました。

 10月18日(日)放送の第24話「ギガント」では、ついに巨大爆撃機ギガントが復活します。太陽エネルギーの独占を企むレプカ(CV:家弓家正)の野望を打ち砕くため、コナン(CV:小原乃梨子)たちはギガントとの戦いに挑みます。

 全26話におよぶ『未来少年コナン』における最後の、そして最大の見せ場であり、宮崎駿監督の天才アニメーターぶりが発露された、ギガント上での攻防を振り返ります。

■宮崎駿監督のなかにいる、「矛盾」したふたりの住人

 すでに死んだと思われていたインダストリアの行政局長・レプカですが、どっこい悪運強く生きていました。レプカは忠誠を誓う部下たちを率いて、インダストリアの中枢である三角塔を武装占拠。蘇ったばかりの太陽エネルギーを、ギガントに注入します。地下格納庫から、巨大な蛾を思わせるおぞましい姿のギガントが現れます。人類が滅亡の危機に瀕した最終戦争以来となる、20年ぶりの復活でした。

 大空へと浮上したギガントを、モンスリー(CV:吉田理保子)が操縦するファルコが追います。ギガントの上空をファルコが飛ぶことで、ギガントの想像を絶する巨大さが実感できます。全長85m、全幅176m、大気圏離脱可能。砲門数100基を誇る、空飛ぶ要塞です。

 ギガントという名称は、第二次世界大戦中にドイツ軍の軍用輸送機として活躍したMe323の愛称「ギガント」(ドイツ語で巨人)から付けられたようです。宮崎駿監督のミリタリー愛が炸裂した、ラスボスならぬラスメカだと言えるでしょう。

 戦争に反対する一方で、美しい機能美を備えた戦闘機にはどうしようもなく惹かれてしまう―宮崎駿監督は大きな矛盾を抱えた映像作家です。恐ろしい破壊力を持つギガントに怒りを覚える自然児コナン、ギガントを甦らせて大喜びする独裁者レプカ。真逆な関係にあるふたりですが、どちらも宮崎駿監督の心のなかの住人です。相反する矛盾を抱えることで、その葛藤を創作エネルギーへと変え、宮崎駿監督は他に類を見ない稀代のアニメーション作家になったのではないでしょうか。

■巨神兵と同じ運命をたどるギガント

『未来少年コナン』第24話「ギガント」を収録した、DVD7巻(バンダイビジュアル)

 空飛ぶ不沈艦・ギガントに、コナンたちはどう立ち向かうのか? ファルコに乗っていたコナンは、なんとギガントへと乗り移り、大きな翼の上を走ってギガント本体へと迫ります。もちろん、パラシュートなんて持ち合わせていません。強風にさらされるギガントの翼の上をコナンが走り抜けるドキドキハラハラ感は、アニメ史上かつてないものでした。

 ジムシー(CV:青木和代)とダイス船長(CV:永井一郎)も、コナンの後に続きます。ギガントから何度も振り落とされそうになるコナンたちですが、かろうじて踏みとどまります。コナン、ジムシー、ダイス船長の無鉄砲さは、頭のいいレプカにはまったく予測できないものでした。

 科学の粋を集めることで完成した前時代の遺物であるギガントは、新しい時代を生きるコナンたちの前に敗れ去ることになります。劇場アニメ『風の谷のナウシカ』(1984年)に登場する巨神兵と同様に、とてもはかない運命でした。科学の力によって、人間は自然界さえも従える存在になれると考えられていた時代は、ギガントとともに完全に終焉を迎えます。

■ダイス船長は男の株を爆上げ

 しぶとい男・レプカも、最後は自分ひとりだけ生き延びようとし、芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』状態に陥ってしまいます。宮崎駿監督の劇場監督デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)のカリオストロ伯爵と同じように、とてもかっこ悪く、それゆえに印象に残るラストです。

 それまではコナンたちの足を引っ張ることが多かったダイス船長は、ギガントでの戦いで男の株を爆上げします。「モンスリー、そのパジャマ似合うぜ」はダイス船長らしい、湿っぽさを嫌った愛ある言葉でした。

 新型コロナウイルスの影響でハプニング的に再放送されることになった『未来少年コナン』でしたが、大人になって改めて見直すことで、宮崎駿作品の面白さをより楽しむことができたように思います。初放送時は「もっとかっこいい曲にすればいいのに」と感じていた主題歌「今地球がめざめる」とエンディング曲「幸せの予感」も、残りの回はじっくりと聴いてみたいと思います。

(長野辰次)

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