40代コロコロ中年、「ホットショット」を買う。感動に満ちたRCカーライフの始め方
マグミクス / 2020年11月3日 9時10分
■1980年代、子供たちの「遊び」も沸騰していた
今改めて思い返せば、1980年代の日本社会は沸騰していました。1983年には東京ディズニーランドが開園し、任天堂が「ファミリーコンピュータ」を発売しています。世の中がバブルに浮かれ、前へ前へ、上へ上へと突っ走っていた時代でした。
子供たちの遊びにも、この時期大きな変化が訪れます。筆者が小学校の中~低学年の頃は駄菓子屋で買ったメンコや、そこらで拾った空き缶で缶蹴りをして遊んでいたのが、高学年のころにはファミコンが一気に普及しています。子供たちが高額なおもちゃを買ってもらえるようになったのは、間違いなくバブルの恩恵のひとだったのでしょう。
このころ、子供たちのなかにブームを巻き起こす原動力となっていたのが小学館「コロコロコミック」です。毎号の巻頭にはファミコンやラジコンの特集が掲載され、『ファミコンロッキー』(著:あさいもとゆき)などの連載マンガを、子供たちは夢中になって読んでいました。
そのような状況下で、RCカーのブームをけん引したのがマンガ『ラジコンボーイ』(著:大林かおる)です。天才的なラジコンの腕前を持つ少年、車剛(くるま ごう)がラジコンでさまざまななライバルたちと戦いを繰り広げる作品で、筆者も子供のころは夢中になって読んでいた記憶があります。
特に、作中に登場するラジコンカーへの憧れは強烈で、コロコロコミックではしばしば「グラスホッパー」「ホーネット」「マイティフロッグ」「パジェロ」などさまざまな種類のRCカー特集が掲載されていたこともあり、親にねだってはみたものの、高価だったこともあって、なかなか上手くは行きませんでした。
しかしある日のこと、実家の目の前にある公園で、筆者の友人たちがラジコンを走らせていることを知った父親が、買ってくれると言い出したのです。うらやまし気に友だちのことを話す筆者のことを不憫に思ったのか。それとも父親としてのプライドを刺激されたのかはわかりませんが、とにかく筆者は幸運な人間でした。
それからしばらくして家族で出かけた秋葉原で、タミヤの4輪駆動RCカー「ホットショット」の大きな箱を抱え上げたときの嬉しさは、今でも鮮烈な記憶として残っています。
■30数年ぶりの再会、箱を開けた瞬間蘇った「感動」
マンガ『ラジコンボーイ』第1巻(小学館)。「コロコロコミック」に連載され、RCカーブームを盛り上げた
それまで300円のガンプラくらいしか組み上げたことがない小学生にとって、「ホットショット」の組み立てはとても難しいものでした。しかし失敗すれば、プロポ(RCカーの走行を制御する送受信機などの一式)やバッテリーも合わせ、3万円以上のお金が無駄になるのです。あきらめるなどありえません。どうにかこうにか半月ほどかけて組み上げた「ホットショット」は、接続が上手くいっておらず、バックができないという問題はありましたが、なんとか走らせることができたのでホッとしたことをよく覚えています。
そうして他にラジコンを持っている友だちと一緒になって公園で走らせていたのですが、問題だったのはバッテリーの持ちが短すぎたことでした。全力で走らせると10分程度しか遊ぶことができず、せっかくみんなで集まっても、ごく短時間で切り上げることになり、その後ファミコンで遊んだこともしばしばでした。予備のバッテリーは高価で数を揃えることはできず、それならファミコンの中古カセットでも買った方が子供にとってははるかにお得です。
しばらく経つと「ホットショット」は置物になり、さらに数年後には家の中から姿を消していました。おそらく捨てられてしまったのだと思います。
それから長い時間が経った2020年のある日のこと。仕事で偶然RCカーを操縦することになった筆者は、ふと「ホットショット」と、手に入れたときのワクワク感を思い出したのです。今ならもっとうまく作れるんじゃないだろうか? 上手く走らせることができるんじゃないだろうか。
そして何より、自力で買えるんじゃないだろうか。
突然湧き上がってきた小学生の時のような衝動に突き動かされ、帰宅後すぐにAmazonで検索をしてみたところ、「ホットショット」は2007年に復刻されていたことが分かりました。
しかしすでにプレミア価格となっており、8万円、11万円、14万円と、気軽には手が出せない値段となっていたのです。それでもあきらめきれず、毎日Amazonをチェックしていたある日、運のいいことに定価で発売されている「ホットショット」を見つけ、30秒ほど悩んで購入を決めました。それでもプロポなどの付属品込みで約4万円は、大人になってもだいぶ迷うお値段だったのです。昔、買ってくれた親にはあらためて感謝したいと思います。
数日後に到着したホットショットの箱は、復刻版とはいえ、ほぼ記憶のなかそのままで、見た瞬間に子供のころの感動が衝撃のように蘇ってきました。これをいまの自分に組めるのかはわかりませんが、なんとしても時間を捻出し、組み上げ、そして走らせてみたいと思います。
※引き続き、「大人のRCカーライフ」をテーマに、「ホットショットの組み立て」「ホットショットを走らせる」「専用コースで走らせる」「改造してみる」といった内容で記事を掲載していきます。ご期待下さい。
(ライター 早川清一朗)
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