定番アニソンの秘話4選 「サザエさんの歌は2番だったの?」
マグミクス / 2021年4月18日 13時40分
■今やド定番のアニメソングだけど…誕生の裏には“偶然”が重なっていた!
すっかり定番となっているものでも、調べてみれば意外な事実が浮かんでくるもの。それはアニメソングだって同じ。本稿では定番アニメソングの誕生に隠された意外なエピソードをご紹介。これまでとは違った趣を感じていただければ幸いです。
●『サザエさん』のエンディングは2番と3番を合わせたもの
「大きな空を 眺めたら 白い雲が 飛んでいた」でおなじみのアニメ『サザエさん』のエンディング曲「サザエさん一家」(宇野ゆう子)。作詞は林春生さん、作曲は筒美京平さんが担当しています。実はアニメで使用されているのは1番ではありません。2番と3番の歌詞を重ね合わせたものなのです。いったいなぜ1番が採用されなかったのか。1番の出だしを見てみましょう。
「二階の窓を 開けたらね 朝の光が 差しこんだ」
この歌詞の何が問題だったのか。すでにお気付きの方も多いかと思われますが、アニメ版のサザエさんの家は平屋造り。2階は存在していません。この設定の不一致から1番の使用は見送られた、とみるのが妥当と言えそうです。
ちなみにオープニングの一人旅行が開始されたのは1974年から。当初は地方ごとにまとめて旅行・紹介していましたが2001年からはひとつの県ごとに旅しています。
●『あしたのジョー』の「♪だけど ルルル…」は尾藤イサオのアドリブ!
アニメ『あしたのジョー』のオープニング曲もまたその誕生の裏には意外なエピソードが潜んでいます。作曲は八木正生さん、作詞はあの寺山修司さんが担当しています。この曲でもとりわけ印象的なのが「だけど」と前置きして「ルルル…」と解釈の余白を残すなんとも哀愁に満ちた演出。「さすがは寺山修司」と思いきや、実はこれ、尾藤イサオさんが歌詞を忘れ、とっさのアドリブでごまかした結果生まれたもの。作曲担当の八木正生さんに「これでいこう!」と太鼓判をおされ、そのまま採用になったとか。
では果たして寺山修司さんはどんな歌詞を用意していたのでしょうか。『あしたのジョー』関連書籍の解説や企画協力もしていらっしゃるアニメーターの野口征恒さんが管理しているファンサイト『SOUL OF JOE』では本来の歌詞が公開されています。それによると1番では「だけど、夕陽を見てると」と続いていたようです。※同サイトでは2番以降の本来の歌詞も公開されています。
●『風の谷のナウシカ』の「ランランラン♪」は久石譲の娘が歌っている
映画『風の谷のナウシカ』(以下、ナウシカ)の劇中歌にして強烈なインパクトを与えた「♪ランランララ ランランラン」というなんとも哀切に満ちたあの歌。正式名称は「ナウシカ・レクイエム」。作曲は久石譲さんです。当時、久石さんはボーイソプラノを考えていましたが、デモテープ用に当時4歳の娘・麻衣さんの歌を吹き込んだところ、宮崎駿監督が気に入りそのまま採用に至ったという経緯があります。
また『ナウシカ』といえば「♪風の谷のナウシカ 髪を軽くなびかせ」のフレーズで知られる安田成美さんのデビュー曲「風の谷のナウシカ」も有名です。作曲は細野晴臣さん、作詞は松本隆さん、邦楽界のレジェンドオブレジェンドが手がけているこちらの楽曲はオリコンでもトップ10入りを果たすなど話題を集めましたが、実のところ「本編」には使用されていません。理由は宮崎監督が気に入らなかったからなどと言われていますが、少なくとも映画のプロモーションとしては大きな役割を果たしてくれたようです。
●『とっとこハム太郎』の主題歌は作者・河井リツ子が“作曲”も担当している
『ちびまる子ちゃん』アンパンマン』などアニメ主題歌の作詞を原作者が担当することはありますがアニメ『とっとこハム太郎』の主題歌「ハム太郎とっとこうた」は作曲も原作者の河井リツ子さんが担当しています。もともとは河井リツ子さんが執筆時に鼻歌で歌っていたものだったとか。誕生秘話までなんともかわいらしい主題歌です。
* * *
アドリブ、デモテープ採用、大人の事情、鼻歌……ここまで見てきた通り私たちの耳にすっかりなじんだアニメソングでもその誕生の背景には多くの偶然が潜んでいました。定番とは運命のいたずらの上に成り立っているのかもしれません。
(片野)
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