TV版再現にこだわったPS2版『ウルトラマン』に、シリーズファンも舌を巻いた…?
マグミクス / 2021年5月20日 7時40分
■格闘ゲームで「ウルトラマン」の物語・世界観を再現
2021年は空想特撮シリーズ「ウルトラマン」(以下、ウルトラシリーズ)の誕生から、ちょうど55年目にあたります。円谷プロが半世紀以上も前に生み出した特撮ヒーローの人気は、令和においてもとどまることを知りません。2021年7月10日(土)には新シリーズ『ウルトラマントリガー』の放送が予定され、公開時期調整中の『シン・ウルトラマン』とともに、その注目度はますます高まっています。
そして本日5月20日は、「ウルトラ」シリーズの歴史に名を残す重要なゲーム作品が生まれた日でもあります。それが、PlayStation2用ソフト『ウルトラマン』です。すでに1991年には同名のスーパーファミコン用ソフト(後に別機種へ移植)がリリースされていましたが、そちらがサイドビュー形式の2D格闘ゲームだったのに対し、PS2版は完全な3D格闘ゲームとして作られたのです。
17年前の2004年5月20日にバンダイ(現バンダイナムコゲームス)より発売された『ウルトラマン』は、プレイヤーが科学特捜隊の「ハヤタ・シン」となり、怪獣や宇宙人の魔の手から地球を守るべく、M78星雲・ウルトラの国からやってきた”ウルトラマン”へと変身して戦う……というゲームです。
内容は格闘ゲームですが、メインとなる「ストーリーモード」ではTV版に登場した怪獣・宇宙人と相まみえることに。その面子も「バルタン星人」や「ゴモラ」といった鉄板キャラをはじめ、「ペスター」や「バニラ」(アボラスと同時出現)など、ほかのゲーム作品でもあまり見られないマイナーどころまで、実に多様な顔ぶれが揃っています。こうした強敵たちと主に肉弾戦で渡り合い、必殺技ゲージを溜めて「スペシウム光線」や「八つ裂き光輪」でトドメを刺す……というのが本作の基本的な流れです。
肝心の戦闘シーンを見ると、ウルトラマンや怪獣・宇宙人たちの動作スピードが重めに設定されているからなのか、爽快感は控えめな一方で重厚感は前面に押し出されており、TV版のミニチュアセットを意識した3D空間をところ狭しと動く彼らの姿には、目を見張るものがあります。
「ベムラー」(ウルトラ作戦第一号)にはじまり、「ゼットン」(さらばウルトラマン)で幕を下ろす。そうしたTV版と同名のエピソード(計11話)を追体験し、「ウルトラマンが地球を訪れて最終的にどうなったのか」をコントローラー越しに味わうことができるのです。
しかし、本作の特筆すべき魅力はストーリーの追体験にとどまりません。より掘り下げるなら、TV版の追体験を濃密にさせるだけの”徹底した原作再現”にあります。
■開発陣の熱量がもたらしたTV版の再現シーン
PlayStation向けに発売された、『ウルトラマン Fighting Evolution』
本作が発売される前のゲーム「ウルトラ」シリーズには、ほぼ同等のゲームシステムを採用した『ウルトラマン Fighting Evolution』がありました。しかしPS2版の『ウルトラマン』は3D格闘ゲームと銘打っているものの、”対戦の駆け引き”よりはテレビ版の小ネタ、および戦闘時の演出再現に軸足が置かれていたように思われます。
そのこだわり具合は舌を巻くほどで、「各エピソード開始時に用いる写真」「ウルトラマンの変身シーン」「キャスト陣の台詞」など、一部を除いて1966年当時の素材をふんだんに使用。さらには熱心なファンでないと見分けがつかないであろう、「放送時期ごとのスーツ形状の違い」まで抜かりなく再現されていました。
なかでも注目すべきは、やはり怪獣・宇宙人たちとの戦闘シーン。戦いの最中に特定の手順を踏むことで、TV版の印象深い光景を垣間見ることができたのです。
そうした演出の種類は多岐にわたり、ウルトラマンの打撃による部位破壊(角・尻尾など)にとどまらず、「両足で後頭部を挟み込み、背中に生えた羽をむしり取る」(対ジェロニモン)、「ジャンプで背後に回り込み、尻尾を踏みつける」(対グビラ)、「スペルゲン反射鏡でスペシウム光線を跳ね返されるも、すぐさま八つ裂き光輪で真っ二つ」(対バルタン星人2代目)……などなど、画角やウルトラマンの挙動にいたるまで、TV版のテイストを見事に踏襲しており、「ゲーム内で同じシーンを描いてみせる!」という開発陣の熱量がヒシヒシと伝わってきます。
加えて、”TV版と異なる未来が歩める”のも本作の魅力です。その筆頭とも言うべきゼットン戦では、本来負けてしまうはずの最終決戦に勝つことが可能。敗北の原因となったスペシウム光線を使わずにゼットンを倒すと、傷ついた身体をいたわりながら宇宙へ帰っていくウルトラマンの姿が映し出されます。
ユラユラと前後に揺れて倒れることもなければ、ゾフィーから新しい命を譲り受けることもない。そして攻略パターンをつかめば、打撃技と八つ裂き光輪のみでゼットンを圧倒できる。この最終話「さらばウルトラマン」だけでも、本作がもたらす独特なカタルシスの片鱗を少なからず味わえるでしょう。
好きなキャラクターを使って楽しむ対戦ツールとしてはやや物足りない面もありますが、シリーズファンを唸らせる再現度とユニークなゲームモードの数々で高評価を得た『ウルトラマン』。同じフォーマットを用いた「ウルトラ」シリーズ作品はここしばらく見かけませんが、「何かの機会(アニバーサリーイヤー等)で復活してくれないだろうか」と、いちファンとして切望しています。
(龍田優貴)
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