“人の声が聞こえる”ファミコンソフト4選 「技術力に感動…」「長尺に衝撃!」
マグミクス / 2021年9月6日 19時10分
■ピコピコ音だけじゃない? ファミコンから”人間の声”が聞こえた衝撃
1983年7月15日に誕生し、約40年続くテレビゲーム市場の偉大な礎となったファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)。そんなファミコンの音源と言えば、”ピコピコ音”と言うべき8bitミュージック(PSG音源)ですが、なかには先進的な「合成音声」を使ったソフトもいくつか見られました。
この記事では、1980年代に合成音声を用いたファミコン向けソフトを4つピックアップ。ゲーム内容や合成音声の使われ方を中心に振り返ります。
●『スパルタンX』(任天堂)
最初にご紹介するのは『スパルタンX』。もともとはアーケードゲームとして稼働を開始→1985年6月にファミコン用ソフトとして移植……という経緯があります。パッケージ画面に描かれた某アクション俳優風のキャラクターが蹴りを繰り出していることからも分かる通り、本作は全5面のステージを攻略するアクションゲーム。さらわれた「シルビア」を取り戻すべく、プレイヤーは格闘術の達人「トーマス」を操って「Mr.X」の根城へ乗り込むことになります。
本作で合成音声が使われたポイント。それは主人公・トーマスの掛け声(攻撃時)と、道中で立ちはだかるボスの笑い声です。特に笑い声はインパクトが強く、ややこもり気味の「ワァッハッハッハッハ」といった声が否応なく耳にこびりつきます。
この笑い声はラスボスのMr.Xだけでなく、「怪力男」や「妖術使い」などの各ステージボスにも実装済み。”野太い男声 or 引きつったような女声”など、ボスの特徴に合わせて笑い声の音程を細かく変えてあるのも注目ポイントです。
●『燃えろ!!プロ野球』(ジャレコ)
「パワフルプロ野球」シリーズのように、キャスター陣の音声をふんだんに取り入れたスポーツゲームは数多く発売されてきましたが、1987年6月リリースの『燃えろ!!プロ野球』は、ある意味でその先駆けと呼べる存在かもしれません。と言うのも本作は、従来の野球ゲームとは一味違った臨場感をプレイヤーにもたらしたからです。
確かに、「各選手のステータス調整が曖昧」・「バントで当てたはずなのになぜかホームランになる」・「リアルな野球を追求したにも関わらず不可解なバグが残っていた」……などなど、一部ゲームシステムに不満点も詰まっていましたが、”合成音声の採用”や”野球のテレビ中継を彷彿とさせるカメラワーク”は、当時のスポーツゲームにおいて珍しい存在だったと言えます。
実況音声こそ搭載されていないものの、スタートボタンを押した直後から「プレイボール!」と元気な合成音声がプレイヤーを快く迎え入れ、ピッチング&バッティング時に流れる「アウト!」・「ストライク!」といった掛け声が、試合を大きく盛り上げてくれました。
●『デッド・ゾーン』(サンソフト)
ファミリーコンピュータ ディスクシステム向けのアドベンチャーゲーム『デッド・ゾーン』では、ゲーム開始から1分も経たずに、主人公「カーク・マックレー」の肉声(を再現した合成音声)を聞くことができます。「なぜ 俺は ここにいるんだ?」という不安なメッセージと共に始まる本作は、適切なコマンドを選ぶことでストーリーが進行。プレイヤーは先述のカークとなり、恋人の「マリー・ブラント」を探し出して危機が迫りくるスペースコロニーからの脱出を目指します。
廃棄所で意識を取り戻す印象的なオープニング以外にも、本作は他の場面でも合成音声を効果的に取り入れています。そのひとつが、カークお手製の小型ロボット「キャリー」。プレイ中にコマンドでキャリーを指定すると、「キャリーでーす!」と合成音声で名乗り出します。キャリーはただ名乗りを上げるだけではなく、攻略に行き詰まったプレイヤーに対してヒントを教えてくれる優れもの。人それぞれだとは思いますが、冒頭でカークが発したセリフ以上に、キャリーの名乗りの方が印象深いプレイヤーも多いかもしれませんね。
●『水戸黄門』(サンソフト)
最後にご紹介するのは、『デッド・ゾーン』と同じ発売元、サンソフトより1987年8月に送り出された『天下のご意見番 水戸黄門』。タイトル名の通り、1969年から放送がスタートした時代劇「水戸黄門」シリーズをモチーフとしたアクションアドベンチャーゲームです。内容は原作と同様、「黄門様(徳川光圀)が日本全国を訪ねつつ、ゆく先々で遭遇する事件を解決に導く」というもの。「佐々木助三郎」(助さん)と「渥美格之進」(格さん)はもちろん、「うっかり八兵衛」、「風車の弥七」、「かげろうお銀」などの主要キャラクターも一通り登場します。
本作の特筆すべきポイントは、ずばり”長尺の合成音声”。その長さは、本稿でご紹介した上記3タイトルよりも遥かに上回っています。ソフトを起動すると、まずは「しずまれしずまれ~い! この紋所が目に入らぬか!」で始まり、「こちらにおわすお方をどなたと心得る……」と続き、最終的に「頭が高い! 控えおろう!」でドラマ版のワンシーンを忠実に再現しているのです。その秒数はなんと約20秒。有名な印籠のワンシーンを合成音声で再現し、滑らかな音質を保つことのできた技術力には驚きと言うほかありません。
(龍田優貴)
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