声優・関智一、熱血漢でブレイクの歴史 視聴者から「声を加工しすぎ!」とクレーム?
マグミクス / 2021年9月8日 6時10分
■ドモンで熱血ヒーロー演者の道を進んでいくが…
9月8日は声優・関智一(せき・ともかず)さんのお誕生日です。関さんといえば、多方面で活躍して、多くの人が知ってる人気ベテラン声優。その才能は声優だけにとどまらず、顔出しの出演、舞台演劇や、趣味のフィギュア製作、特撮に関する知識の高さなど、知られているだけでも多くの分野で活躍しています。もちろん、本業の声優で演じたキャラの数々は、それぞれに多くのファンがいる人気キャラばかりで数えきれません。そこで筆者が思い出深いものをチョイスしてご紹介いたします。
関さんといえば、まず「ガンダム」シリーズ。デビュー直後、初のレギュラーを射止めた作品が『機動戦士Vガンダム』(1993年)のトマーシュ・マサリクです。そして翌年の『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)では主人公であるドモン・カッシュを演じました。このドモンは出世作となったキャラで、作品の人気が上昇していくのとイコールの形で関さんの知名度も上がっていきます。
筆者が一番注目した部分が独特のイントネーションで、普通なら伸ばさない箇所で音を伸ばしたり、溜めて叫んだりするようなところも普通の人と違う。でも、ドモンというキャラにピッタリという絶妙な演技力です。作品の人気がドモンというキャラによるところが大きいと思いますが、そのドモンの魅力を引き出した関さんの力が作品を支えたと言っても過言ではないでしょう。
ひとつのヒットが出ると、それに近いキャラが多くなるのは声優の常です。熱血漢であるドモンを演じた関さんもまた、『キャプテン翼J』(1994年)の若島津健、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)の鈴原トウジ、『天空のエスカフローネ』(1996年)のバァン・ファーネル、『機動戦艦ナデシコ』(1996年)のダイゴウジ・ガイといった熱血漢役を多く演じていました。
しかし、筆者はこの時に別な作品で関さんの才能の一端を目の当りにします。それが『とっても!ラッキーマン』(1994年)の天才マンでした。熱血漢と反対のクールなキャラですが、壊れる部分もあり、そこに新人とは思えない実力を感じたのです。
デビュー直後から人気が高まり、アイドルのように女性ファンが急増した関さん。初めて特撮番組でレギュラーとなった『超力戦隊オーレンジャー』(1995年)で演じた皇子ブルドントでは、面白いエピソードがあります。
このブルドントは子供だったので関さんも子供声のかなり高い声で演じていたのですが、ファンから番組に「声を加工しすぎ」という抗議がありました。もちろん声は加工していなかったのですが、当時、二枚目熱血漢が多かった関さんの子供声はファンには認識できなかったのでしょう。後にブルドントは成長してカイザーブルドントになり、関さんも地声に近い声で演じるようになります。
■スネ夫やウィスパーでコメディキャラも演じる多才さを見せる
『妖怪ウォッチ』ウィスパー役 画像は『妖怪ウォッチ 特選ストーリー集 白執事ノ巻』DVD(KADOKAWA メディアファクトリー)
近年の関さんの代表作のひとつと言えば、『ドラえもん(第2期)』(2005年~)の骨川スネ夫が挙げられますが、実は前述のブルドントはスネ夫のイメージだったそうです。しかし、この番組には先代のスネ夫役の肝付兼太さんがレギュラーとして一緒にいたそうで、本人がいると驚いたと関さんは後に語っていました。
ちなみに関さんが当初、番組からオファーを受けたのはドラえもん役だったといいます。本人もさすがに無理だろうとオーディションを受けたそうです。しかし、もしもこの時ドラえもん役が決まっていれば、幻の初代以来の男性演者のドラえもんになっていたんですね。また、男性には難しいであろうドラえもん役のオファーが来るという時点で、関さんの実力はこの当時には業界でも認められていたということでしょう。
関さんの演技力のスゴイところと言えば、近年の東映特撮映画での活躍も忘れてはいけません。特撮の知識を生かして、多くのリメイクキャラを同じ作品で複数演じています。特筆するのはショッカー大首領の声で、限りなく本来演じていた納谷悟朗さんに限りなく近く、知らない人は気付かないということもありました。
実は関さんが納谷さんのモノマネが得意ということはファンには有名な話で、筆者もラジオで銭形警部のモノマネを聞いたことがありますが、そっくりすぎて分からなかったです。普段はあくまでも自分の声ベースで演技をする関さんですが、モノマネという分野でも恐るべき才能を秘めている声優なのでしょう。
近年ですと、スネ夫と並んで『妖怪ウォッチ』(2014年~)のウィスパーが一般にも広く知られているキャラですね。その演技もコメディだけに多種多様で、見ていても飽きさせないところがさすがです。
文字数が少なく、途中のご活躍をあまりご紹介できませんでしたが、関さんの演じてきた印象的なキャラはまだまだ大勢いました。
アニメ番組だけでなくユニットでの活動も注目されていた『ヴァイスクロイツ』(1998~2003年)のケン(飛鷹健)、珍しく寡黙なキャラだった『フルメタル・パニック!』(2002年~)の相良宗介、シリーズでは希少な男性の妖精だった『ふたりはプリキュア』(2004年)のメップル、その後にシリーズとして何度か演じることになった『Fate/stay night』(2006年)のギルガメッシュ、最近ですと一番注目しているのは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(2020年)のハドラーでしょうか。
二枚目熱血漢役が多いと、そのイメージの払拭が大変だと聞いたことがあります。しかし、関さんは見事にイメージの固定化から脱却して、バラエティ豊かに数多くのキャラを演じてくれました。そして、これからも、もっと多くのキャラに命を吹き込んでくれることと思います。今後のさらなるご活躍を期待しつつ、改めてお誕生日をお祝いしたく思います。
(加々美利治)
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